テスラEVの価格競争:モデルY標準仕様とモデル3は欧州で勝てるか
テスラが発表した低価格版「モデルYスタンダード」と「モデル3」は、同社が最も巻き返しを必要としているとも言われるヨーロッパ市場で、激しい価格競争に直面しています。欧州ではすでに3万ドル以下の電気自動車(EV)が出そろい、テスラの「値下げ攻勢」が通用するのかが注目されています。
新たな低価格モデル、しかし欧州市場はすでに飽和気味
テスラは火曜日、同社の主力SUVである「モデルY」とセダン「モデル3」に、価格を抑えた新バージョンを追加しました。米国での価格はモデルYスタンダードが3万9,990ドル、モデル3が3万6,990ドルとされています。
これらのモデルは、すでに低価格帯のEVがひしめくヨーロッパ市場に投入されます。欧州の自動車メーカーや、中国本土を拠点とするメーカーのブランドなどが、3万ドル未満のEVを10車種以上展開しており、今後も新モデルが予定されています。
これとは対照的に、米国市場で3万ドル未満の価格帯に入るEVは、日産「リーフ」1車種のみとされています。価格帯だけを見れば、欧州のほうがはるかに多様な選択肢を持つ市場になっています。
市場調査会社AutoForecast Solutionsのサム・フィオラーニ副社長は、「この市場での競争は熾烈だ」と指摘し、テスラの新しい低価格モデルよりも安いEVが欧州に数多く存在することが、販売の足かせになり得るとみています。
シェア半減の欧州で、テスラはなぜ苦戦しているのか
テスラは、価格が競合より高めに設定されることもある一方で、「品質や機能の優位性で正当化できる」と主張してきました。しかしヨーロッパでは、同社の市場シェアは2023年以降ほぼ半減し、現在は約1.5%程度にとどまっているとされます。2023年には「モデルY」が欧州全体で最も売れた乗用車でしたが、その勢いは失われつつあります。
アナリストらは、この失速の一因として、テスラの製品ラインアップの高齢化に加え、イーロン・マスク氏が極右系の政治家を支持してきたことに対する一部消費者の反発を挙げています。クルマ選びに「ブランドイメージ」や経営者の発言を重ねて見るユーザーが増える中で、テスラにとっては見過ごせない要素になりつつあります。
欧州で競合する低価格EVたち
ヨーロッパ市場では、テスラの新モデルよりも安いEVがすでに数多く存在します。代表的なモデルを見てみると、その価格差は明確です。
- BYDの「ドルフィン サーフ」:2万3,000ユーロ(約2万6,830ドル)から
- ダチア「スプリング」:1万6,800ユーロから
- シトロエンのSUV「e-C3」:2万3,300ユーロから
さらに先月、フォルクスワーゲンは2万5,000ユーロ未満の小型ハッチバックEV「ID.Polo」を来年投入する計画を明らかにしており、低価格帯への新規参入は今後も続く見通しです。選択肢の多さ自体が、テスラにとっては逆風になっています。
米国と中国本土でも高まるプレッシャー
ヨーロッパだけでなく、テスラは他地域でも難しい局面にあります。米国では、長年続いてきたEV購入者向けの7,500ドルの税額控除が9月30日に失効したことを受け、今後数四半期はEV市場全体が縮小すると予想されています。
テスラのより手頃なモデルが市場シェアをある程度取り戻せたとしても、イーロン・マスク氏は、米国の需要が想定どおり鈍化した場合、同社が「しばらく厳しい四半期」に直面する可能性があると見ています。
世界最大のEV市場とされる中国本土でも、テスラは価格面で厳しい競争にさらされています。現地でのテスラの新モデルは、BYDの「元プラス(Yuan Plus)」や、上汽通用五菱(SAIC-GM-Wuling)が展開する小型EV(ミニEV)と比べて、なお割高な水準にあります。こうした国内メーカーの低価格モデルが市場をリードしている状況です。
EV価格戦争の行方と、日本から見た論点
ヨーロッパでは、テスラの値下げだけでは埋めきれない価格差があり、同時にブランド力やソフトウェアといった非価格要因でどこまで勝負できるかが問われています。
一方で、欧州メーカーや中国本土のメーカーが3万ドル未満のEVを次々と投入するなか、「適正な価格」とは何か、「どのレベルの性能までが普及価格帯なのか」といった基準も変わりつつあります。EV市場全体の利益構造も、より厳しくなる可能性があります。
日本にいる私たちにとっても、これは他人事ではありません。グローバル市場でのEV価格競争が激しくなれば、日本の自動車メーカーやサプライヤーも、価格と価値のバランスをどう設計するかを改めて迫られるからです。
テスラの新しいモデルYスタンダードとモデル3は、こうした世界的なEV価格競争の中でどこまで存在感を示せるのか。しばらくは、ヨーロッパでの販売動向が、テスラの次の一手を占う重要な指標になりそうです。
本記事はロイターが伝えた情報に基づいています。
Reference(s):
Tesla's price war: Model Y Standard, Model 3 face uphill battle
cgtn.com








