OpenAIのAIブラウザAtlas登場 Google検索とChromeに挑む
ChatGPTを手がけるOpenAIが、チャット型AIを組み込んだ新しいAIブラウザ「ChatGPT Atlas(以下、Atlas)」を発表しました。2025年12月現在、Google検索とChromeが握ってきた「ウェブの入り口」をめぐる争いが、いよいよ本格的に動き出しています。
ChatGPT搭載のAIブラウザ「Atlas」とは
Atlasは、OpenAIの人気チャットボット「ChatGPT」を中心に設計されたAIブラウザです。従来の検索エンジンのようにキーワードを入力してリンク一覧を見るのではなく、会話形式で情報をまとめて提示する「AI検索」の利用を前提にしています。
OpenAIは、週あたり8億人のアクティブユーザーを抱えるChatGPTの利用基盤をテコに、ユーザーのオンライン行動のより広い範囲に入り込もうとしています。ブラウザを自ら提供することで、ユーザーの閲覧行動データを把握しつつ、検索体験そのものをAI中心に組み替えようとしている形です。
AIブラウザ市場はすでに混戦で、Perplexityの「Comet」、Brave Browser、Operaの「Neon」などが先行しています。各社とも、ページ要約やフォーム入力の自動化、コード生成といった機能でユーザー獲得を狙っており、AtlasはそこにOpenAIが本格参入した格好です。
Atlasでできること:サイドバーと「エージェントモード」
Atlasの特徴は、どのページでも呼び出せるChatGPTのサイドバー機能です。ユーザーは閲覧中のサイトに対して、例えば次のような操作ができます。
- 長文記事の要点を要約してもらう
- 複数の商品情報を比較してメリット・デメリットを整理してもらう
- 掲載されているデータや表を分析してもらう
さらに有料ユーザー向けには「エージェントモード」が提供され、ChatGPTがブラウザ上でユーザーの代わりに操作を行うことができます。単に情報を探すだけでなく、「調べて、比較して、申し込みや購入まで」一連のタスクを自動で進めることを想定しています。
デモでは、開発者がレシピを探し、その材料をオンラインでまとめて購入する流れを実演しました。ChatGPTがレシピを見つけた後、食材をオンラインスーパーのInstacartのサイトでカートに追加し、数分かけて一連の作業を自動で完了させました。ブラウザ上のクリックや入力といった操作そのものをAIが担うイメージです。
Atlasは現在、AppleのmacOS向けに世界で提供が開始されています。Windows、iOS、Android向けのバージョンも今後公開される予定です。
OpenAIとGoogle、検索の主導権争い
OpenAIは、サム・アルトマン氏の下、2022年末のChatGPT公開でテック業界に大きなインパクトを与えました。その後はGoogleやスタートアップのAnthropicなどとの競争が激しくなり、新たな成長の柱を模索してきました。Atlasは、その一環として「検索とブラウザ」というインターネットの入り口に本格参入する動きといえます。
一方のGoogleも、ChatGPTの登場以降、検索体験の変化に対応しようとしています。検索結果の内容に応じて、従来のリンク一覧に加え、AIが自動生成した要約を示す「AI overview(AIモード)」を表示するなど、チャット型に近い体験を組み込み始めました。
先月には、独自の生成AIモデル「Gemini」を米国のChromeに統合し、今後はiOS版Chromeアプリにも広げる計画を示しています。ブラウザの中にAIアシスタントを溶け込ませるという意味では、OpenAIのAtlasと方向性は近く、両社の競争はさらに密接になりそうです。
Chromeの強さと司法判断、それでも高まる競争
Googleにとって追い風となる動きもありました。9月には、連邦判事のアミット・メータ氏が、GoogleにChromeブラウザを売却する義務はないと判断しました。判決は、Googleが自社検索エンジンを優先的に表示してもらうためにパートナーに支払いを続けることを認めています。
判事はその理由として、大手IT企業やスタートアップによる生成AIへの巨額投資が、従来型の検索ビジネスを脅かしつつある状況を挙げました。検索市場が大きく変わりつつある以上、Googleの支払いは過度な独占とは言えない、という見立てです。
それでも、Chromeの現在の支配力は依然として大きいとされています。ウェブトラフィック分析サイトのStatCounterによると、9月時点で世界のブラウザ市場におけるChromeのシェアは71.9%に達していました。こうしたなかで、OpenAIが独自ブラウザを投入したことで、広告市場や検索の入り口をめぐる競争は一段と激しくなると見られています。
広告ビジネスへのインパクト:チャットが「入口」になるとき
投資会社D.A. Davidsonのアナリスト、ギル・ルリア氏は、「ブラウザにチャットを統合することは、OpenAIが広告ビジネスを始める前段階だ」と指摘します。OpenAIはこれまで広告を販売しておらず、もしAtlasやChatGPTに広告を組み込めば、Googleが握ってきた検索広告の一部を奪う可能性があると見ています。
ルリア氏によれば、Googleは検索広告支出の約9割を占めるとされており、検索の入り口がブラウザ内のチャットやAIエージェントに移ると、その分広告費も流れ先を変える余地が生まれます。ユーザーが「検索ボックス」ではなく「AIとの会話」から買い物や情報収集を始めるようになれば、広告の形や配置も変わらざるを得ません。
私たちの検索体験はどう変わるのか
Atlasの登場は、単なる「新しいブラウザ」のリリースにとどまらず、私たちの日常的なウェブ利用のあり方に問いを投げかけています。
- キーワード検索から相談型へ:知りたいことを「質問」として投げかけると、リンクではなく「答え」や要約が返ってくる体験が当たり前になりつつあります。
- ブラウザが作業代行者に:旅行の計画や買い物、情報収集などを、AIがまとめてこなす世界が現実味を帯びています。
- データ活用とプライバシー:ブラウザレベルで行動データを集めるプレーヤーが増えるほど、便利さとプライバシーのバランスをどう取るかという課題も大きくなります。
Google Chromeが圧倒的なシェアを持つなかで、OpenAIのAtlasはどこまで食い込めるのか。AIブラウザ同士の競争は、検索や広告のビジネスだけでなく、私たちがニュースを読み、商品を選び、情報を信じるプロセスそのものに静かな変化をもたらしていきそうです。
Reference(s):
OpenAI unveils AI search browser Atlas in challenge to Google
cgtn.com








