オランダ発Fairphoneが米国参入 修理できるヘッドホンでライト・トゥ・リペア需要開拓
オランダ発の倫理的な電子機器メーカー、Fairphone(フェアフォン)が、修理しやすい設計のヘッドホンを引き下げに米国市場へ本格的に参入しました。米国で広がるライト・トゥ・リペア(修理する権利)を追い風に、将来のスマートフォン発売に向けた足場固めを進めています。
消費者や議会の間で、製品を長く使い、自分で修理できる権利を求める声が高まるなか、Fairphoneの動きは、スマートフォンをはじめとする電子機器のビジネスモデルが変わりつつあることを示す象徴的な事例といえます。
米国市場にまずは修理できるヘッドホンで参入
Fairphoneのレイモンド・ファン・エック最高経営責任者(CEO)は、ロイター通信のインタビューで、同社が米国市場に修理可能なヘッドホンを投入し、今後のスマートフォン発売に向けた準備を進めていると明らかにしました。
ファン・エック氏は、市場環境について「当社の戦略は不確実性を前提に構築している。関税の状況は日々変わり得るが、米国での需要は明確だ」と述べ、米国内で進むライト・トゥ・リペア関連の立法が新たなビジネスチャンスになっていると強調しました。
現在、Fairphone製品の米国での価格には34%の関税がかかっており、価格競争力という点では逆風もあります。それでも同社は、製品の修理しやすさや長期的なコストの低さに価値を見いだす消費者は確実に増えていると見ています。
売上は前年同期比61%増 部品販売も伸びる
Fairphoneは2025年第3四半期(Q3)の売上高が前年同期比で61%増加したと報告しています。分野別に見ると、端末の売上が61%増、オーディオ製品が40%増、そして交換用のスペアパーツ(部品)が41%増と、いずれも2桁の成長を記録しました。
- 売上高全体:前年比61%増
- 端末:前年比61%増
- オーディオ製品:前年比40%増
- スペアパーツ:前年比41%増
とくにスペアパーツの伸びは、製品を「買い替える」のではなく「修理して長く使う」利用者が増えている可能性を示唆しています。数字だけを見るとニッチなメーカーに思えるかもしれませんが、ビジネスモデルそのものが既存の大手とは異なっている点が注目されます。
広がるライト・トゥ・リペアと長期利用の発想
米国ではここ数年、ライト・トゥ・リペア(right-to-repair)と呼ばれる「修理する権利」をめぐる動きが加速しています。多くの州で関連法が成立し、スマートフォンから農業用トラクターに至るまで、修理が難しい、あるいはほぼ不可能な製品をめぐって、消費者とメーカーの対立も表面化してきました。
ライト・トゥ・リペアの議論の背景にあるのは、次のような問題意識です。
- 純正の部品やマニュアルが一般に公開されず、正規店以外で修理できない
- ソフトウェアの制限などにより、そもそも分解や部品交換が想定されていない
- 短いサポート期間の後に買い替えを促すことで、電子ごみが増え続けている
ファン・エック氏は、米国の消費者が本体価格だけでなく、修理費用やサポート期間も含めた「総所有コスト」で製品を評価し始めていると指摘します。短期的には関税で価格が上がっても、長く使える設計であればトータルで割安になる、という発想です。
サステナビリティとサプライチェーンの透明性
生産拠点については、多くの電子機器ブランドと同様に、中国本土(中国)で製造を行っています。ただしFairphoneは、採掘現場から半導体チップに至るまでサプライチェーン全体のサステナビリティ(持続可能性)を重視しており、原材料の調達経路を追跡できるようにするなど、透明性の向上に取り組んでいるといいます。
ファン・エック氏によると、こうした高いレベルのトレーサビリティ(追跡可能性)への取り組みは、世界的な部品不足が発生した際にもリスクを把握しやすくし、供給網を維持するうえでプラスに働いているといいます。
Fairphone 6が掲げる「8年サポート」
同社の旗艦スマートフォンであるFairphone 6は、8年間のサポート提供、5年間の製品保証、そして2033年までスペアパーツを供給することをうたっています。買い替えサイクルが短くなりがちなスマートフォン市場において、ここまで長期のサポートを前提とした設計は依然として少数派です。
長期サポートは、
- 新機種発売のたびに買い替える必要を減らす
- 修理しながら同じ端末を使い続けられる安心感を高める
- 電子ごみ削減につながる可能性がある
といった効果が期待されます。Fairphoneのようなモデルがどこまで広がるのかは未知数ですが、「長く使えること」に価値を置く流れを象徴する存在といえます。
オーディオ製品を「橋頭堡」に 米国での次の一手
今回、Fairphoneが米国で最初に投入するのはスマートフォン本体ではなく、修理しやすい設計のオーディオ製品です。これらは大手電子商取引プラットフォームのAmazonとの提携を通じて販売され、米国市場での「橋頭堡(きょうとうほ)」として位置づけられています。
ファン・エック氏によれば、米国では携帯電話の約9割以上が通信事業者(キャリア)経由で販売されており、スマートフォンを投入するタイミングやパートナー選びは慎重に進めているといいます。
具体的な販売台数の目標は公表していませんが、同社は2025年に米国で販売するオーディオ製品の台数を、2024年に欧州で売り上げた台数と同程度以上にすることを目指しているとしています。
日本のデジタルネイティブが考えたいこと
今回のFairphoneの動きは遠い欧州と米国のニュースのようにも見えますが、日本の消費者にとっても他人事ではありません。日々スマートフォンやワイヤレスイヤホンなどを使いこなす私たちは、次のような問いを投げかけられているとも言えます。
- いま使っている端末は、壊れたときにどれくらい簡単に、いくらで修理できるのか
- メーカーの保証期間やOSアップデートの期間はどの程度か
- 多少価格が高くても、長く使える設計の製品を選ぶ価値はあるのか
ライト・トゥ・リペアをめぐる動きは、単なる「修理の話」にとどまらず、ものづくりと消費のスタイルをどう変えていくのかという問いでもあります。Fairphoneのような試みが、日本を含む他の市場にもどのような影響を与えるのか、今後も注目されそうです。
Reference(s):
Europe's Fairphone enters U.S. market tapping right-to-repair demand
cgtn.com








