78歳NZ元医師が中国でCAR-T治療を選んだ理由
78歳のニュージーランド出身の元家庭医が、治療の選択肢が尽きた高リスク多発性骨髄腫と向き合う中で、中国・上海まで約9,000キロを移動してCAR-T療法を受けました。個人の決断であると同時に、2025年現在、中国の医療機関が国際患者向けの高度ながん治療で存在感を高めている現状を映し出しています。
78歳の元家庭医を動かした「最後の一手」
彼は家庭医として長年働いたのち引退した78歳の男性で、高リスクの多発性骨髄腫という血液のがんと診断されました。多発性骨髄腫は、骨や免疫にも影響が出る難治性の病気で、化学療法や新薬など従来の治療を重ねても、時間とともに効きにくくなることがあります。
この男性も例外ではなく、数年にわたる標準治療を続けた末に、打てる手はほぼ出し切った状態に直面しました。そこで、新たな寛解(病状が落ち着いた状態)への道として提示されたのが、中国・上海でのCAR-T療法でした。
CAR-T療法とは何か
CAR-T療法は、患者自身の免疫細胞であるT細胞を取り出し、がん細胞を認識しやすくするように加工してから体内に戻す治療です。いわば「自分の免疫をカスタマイズして、がんと戦わせる」アプローチだとイメージすると分かりやすいでしょう。
従来の抗がん剤や放射線治療とは仕組みが大きく異なり、一部の血液がんで劇的な効果が報告されてきました。一方で、強い副作用が出る可能性や、高度な管理体制が必要になることなど、慎重な対応も求められます。
なぜ中国・上海でCAR-T療法を受けたのか
高リスクの多発性骨髄腫に対して用意されていた標準治療をほぼ試し終えたあと、寛解への次の一手としてたどり着いたのが、中国・上海でのCAR-T療法でした。こうして彼は、希望を託して9,000キロの移動を決断しました。
このケースは、個人の選択にとどまりません。中国の医療機関が、海外からの患者に対してもCAR-T療法を含む高度ながん治療を提供する動きが広がっていることを示しています。国境を越えて治療を求める医療ツーリズムの行き先として、中国が選択肢の一つになりつつある、という見方もできます。
国際患者を受け入れる中国の医療機関の存在感
国際ニュースや医療ニュースを追っていると、がん治療や再生医療の分野で、中国の病院や研究機関の名前を目にする機会が増えています。CAR-T療法のような先端治療は、設備や専門スタッフ、長期的なフォロー体制などが整った限られた施設でしか行えませんが、そうした場に中国の医療機関が加わりつつあります。
特に、従来の治療法では効果が限られる患者にとっては、海外の医療機関で新たな治療の機会が開かれることで、選択肢が広がる可能性があります。その一例として、ニュージーランドの78歳の元家庭医のケースは、中国の医療機関が国際患者向けの高度ながん医療で担う役割の大きさを映し出しています。
海外でがん治療を検討するときのポイント
この事例は、中国だけでなく世界各地で広がる「国境を越えたがん治療」の一端でもあります。日本から海外での治療を考える場合、次のような点を意識しておくとよいでしょう。
- 治療法の効果と副作用、エビデンス(どの程度データがあるか)を、主治医とも共有しながら確認する
- 元の国・地域の医療チームと、治療先の医療機関との情報連携の方法を事前に決めておく
- 言語や文化の違い、長距離移動の負担、滞在費など、医療以外の条件も含めて検討する
どの治療を選ぶかに明確な正解はありませんが、自分や家族が納得できる形で情報を集め、複数の専門家の意見を聞くプロセスが重要になります。
「遠くの最先端」とどう向き合うか
ニュージーランドの78歳の元家庭医が、中国・上海まで旅をしてCAR-T療法に臨んだという出来事は、がん治療がいまや国境に縛られない時代に入っていることを象徴しています。
2025年のいま、日本にいても世界各地の医療情報にアクセスできる一方、その内容をどう理解し、どこまで自分のケースに当てはめるかは簡単ではありません。今回のケースをきっかけに、「もし自分や身近な人が同じ立場になったら、どんな情報と誰の意見を参考にするだろうか」と、一度立ち止まって考えてみる価値がありそうです。
具体的な治療の選択肢については、必ず主治医など信頼できる医療専門職と相談しながら検討することが大切です。
Reference(s):
Why a 78-year-old patient traveled to China for CAR-T therapy
cgtn.com








