この冬のインフルエンザをどう乗り切るか 日本と中国本土の動向
冬はもともとインフルエンザなど呼吸器感染症のピークシーズンですが、2025年のこの冬は、日本や中国本土などで例年より早い流行の兆しが見えています。世界保健機関(WHO)は北半球全体では感染者数がまだ比較的低いとしつつ、日本や英国など一部の国では「通常より早く、厳しい」シーズン入りが報告されています。本記事では、日本と中国本土の最新データを整理しながら、この冬のインフルエンザシーズンをどう安全に乗り切るかを考えます。
日本:昨年より約1か月早く本格流行に
日本の厚生労働省によると、2025年11月17日から23日までの1週間に報告されたインフルエンザ患者数は19万6,900人でした。全国のインフルエンザ定点医療機関からのデータを集計したもので、日本は昨シーズンより約1か月早く、本格的な流行期に入ったとされています。
- 期間:2025年11月17〜23日の1週間
- 報告数:約19万6,900人
- 昨シーズンより約1か月早く流行期入り
現在、活動が増えている国々ではインフルエンザA型の一種である「A(H3N2)」が最も多く報告されており、日本もその代表的な例とされています。
中国本土:H3N2が主流、学校で集団感染が増加
中国疾病予防管理センター(China CDC)の週間インフルエンザ報告によると、中国本土でも現在の主流株はインフルエンザA(H3N2)型です。検出されている病原体はいずれも既知のものに限られ、未知の病原体や新たな感染症は確認されていないとされています。
一方で、中国本土では保育施設や学校でインフルエンザの集団感染が大きく増加しています。インフルエンザ検査の陽性率は、5〜14歳の年齢層で他の層よりも明らかに高く、専門家は今後数カ月にわたってインフルエンザ活動がさらに高まると予測しています。
型が入れ替わるインフルエンザ 「強くなっている」とは限らない
人に主に感染するインフルエンザウイルスは、大きくA型とB型に分類されます。昨シーズンは、A型の2つの亜型であるH1N1とH3N2がほぼ同程度に検出され、その後やや遅れてB型インフルエンザが増えるという推移が報告されました。
中国疾病予防管理センター傘下のウイルス性疾病予防制御国家重点研究所の王大燕研究員は、同じシーズンの中でも、流行の主流となるウイルスがA(H1N1)、A(H3N2)、さらにはB型の間で入れ替わることがあると説明しています。
また、同センターの彭志斌研究員は、インフルエンザウイルスは「抗原ドリフト」と呼ばれる変異を起こしやすいと指摘します。これはウイルス表面の性質が少しずつ変わっていく現象で、「こうした小さな変化こそが毎年の季節性インフルエンザ流行の原因ですが、活動性はあくまで季節性の範囲にとどまり、ウイルスがどんどん強力になっていることを意味するわけではありません」と説明しています。
既知のウイルスが季節ごとに姿を少しずつ変えながら流行している、というのが現在の状況だと言えます。
この冬のインフルエンザを乗り切るためのポイント
現時点(2025年12月上旬)で、日本と中国本土のデータはいずれも「通常の季節性インフルエンザ」の範囲にあるとされていますが、流行開始が早まり、学校や保育施設での集団感染が目立っていることは確かです。私たち一人ひとりができる対策を、あらためて整理しておきます。
1. 自分と身近な人のリスクを知る
中国本土では5〜14歳の子どもたちで陽性率が高く、日本でも早期から多くの患者が報告されています。次のような人が身近にいる場合は、特に慎重な対応が求められます。
- 小中学生や園児など、集団生活の時間が長い子ども
- 高齢者
- 心臓や肺などに慢性的な持病がある人
- 妊娠中の人
家庭や職場で、誰が重症化しやすい立場にあるのかを共有しておくことが、行動を考えるうえでの出発点になります。
2. 基本的な感染対策を丁寧に続ける
インフルエンザに限らず、多くの呼吸器感染症で共通して有効とされるのが、次のような基本的な対策です。
- 外出先から戻ったら、石けんを使ったこまめな手洗いをする
- 手が洗えないときは、アルコールなどによる手指消毒を活用する
- 人が集まる屋内では、定期的に換気を行う
- 咳やくしゃみが出るときは、マスクやハンカチで口と鼻を覆う
- 体調がすぐれないときは無理をせず、出勤・登校を控えることを検討する
どれも目新しい対策ではありませんが、「分かっているけれど続けるのが難しい」ものでもあります。流行の早まりをきっかけに、日々の習慣を少し見直してみることが、結果として大きな予防につながります。
3. 子どものいる家庭・学校でできる工夫
中国本土で報告されているように、保育施設や学校はインフルエンザの集団感染が起こりやすい場です。日本でも同じリスク構造があることを意識しておくとよいでしょう。
- 朝の時点で発熱や強い倦怠感がある場合は、登園・登校を控える判断をしやすくする
- 教室や保育室での定期的な換気や、こまめな手洗いの声かけを徹底する
- 具合が悪そうな子どもを「様子見」で長時間とどめず、早めに保護者へ連絡する
- 保護者同士で情報を共有しつつ、特定の誰かを責める雰囲気をつくらない
集団生活の場での対策は、個人の努力だけではどうにもならない部分があります。その分、「責任の押し付け合い」ではなく、「どうすれば全体としてリスクを減らせるか」という視点で話し合えるかが重要になります。
4. 信頼できる情報源をフォローする
インフルエンザの流行状況は、地域や時期によって大きく変わります。日本では厚生労働省や自治体、中国本土では中国疾病予防管理センターなどの公的機関が、定期的にデータや注意喚起を発信しています。
- 住んでいる地域の最新の流行状況や医療体制の情報を確認する
- SNSで見かけた情報は、出典が公的機関かどうかを意識してチェックする
- 不安を煽るだけの情報に振り回されず、事実ベースのデータを見る習慣を持つ
早期流行のニュースをきっかけに、「どの情報を信頼するか」をあらためて選び直すことも、この冬を乗り切る大切な準備になります。
「ただの季節性」と侮らないために
現在のところ、日本や中国本土で検出されているのは、いずれも既知のインフルエンザウイルスであり、活動も季節性の範囲内と説明されています。しかし、流行のタイミングが前倒しになり、学校や保育施設での集団感染が増えていることは、私たちの生活や医療現場に少なからぬ影響を与えます。
過度に恐れる必要はありませんが、「ただの季節性だから」と軽く見ることも避けたいところです。どこまで対策を日常に組み込むのか、家族や職場、コミュニティで話し合うこと自体が、この冬のリスクを下げる一歩になります。
インフルエンザと共に生きる時代に、私たちはどのようなバランスで「安心」と「自由な生活」を両立させていくのか——2025年のこの冬は、その問いをあらためて突きつけています。
Reference(s):
cgtn.com








