豪州で16歳未満のSNS禁止が施行 世界初の試みと広がる波紋
オーストラリアで、16歳未満の子どもが原則としてソーシャルメディア(SNS)のアカウントを持てなくなる世界初の法律が施行されました。子どものオンライン安全を守る狙いとともに、その実効性や副作用をめぐる議論が国内外で広がりつつあります。
何が変わる? 16歳未満はアカウント自体が禁止に
今回施行されたのは「Online Safety Amendment(Social Media Minimum Age)法」で、オーストラリア連邦議会が昨年11月に可決したものです。新しいルールの下では、主要なソーシャルメディア企業に対し、16歳未満の子どもが自社サービスでアカウントを持てないよう「合理的な措置」を取ることが義務づけられました。
対象となっているのは、次の10のプラットフォームです。
- Snapchat
- Threads
- TikTok
- Twitch
- X(旧Twitter)
- YouTube
- Kick
これらの企業が規則に従わなかった場合、最大4,950万オーストラリアドル(約3,280万米ドル)という高額の罰金が科される可能性があります。一方で、年齢制限のあるSNSにアクセスした16歳未満の子ども本人や、その保護者・養育者に対する罰則は設けられていません。
当局は今後、必要に応じて対象となるプラットフォームのリストを更新するとしており、制度は運用しながら調整されていくとみられます。
「アルゴリズム世代」を支えるという狙い
法律の施行前日、アンソニー・アルバニージ首相は全国の学生に向けたビデオメッセージを公開し、今回の決定の背景を説明しました。首相は、子どもたちがアルゴリズムや終わりのないタイムラインに囲まれて育ち、そのプレッシャーにさらされていると指摘し、政府として支えたいと強調しました。
そのうえで首相は、これからの学校休暇をめいっぱい活用してほしいと呼びかけ、「新しいスポーツを始めたり、楽器を習ったり、しばらく本棚に置きっぱなしになっている本を手に取ってみてほしい」と語りました。さらに「そして何よりも、友人や家族と顔を合わせて過ごしてほしい」と、画面越しではない時間の大切さを強調しています。
今回の措置は、SNSを完全に「悪」とみなして排除するというより、オンラインに偏りがちな時間の使い方を是正し、子どもたちにオフラインでの経験を取り戻してもらうための政策として位置づけられています。
賛成は7割超、それでも「抜け道」への不安
オーストラリア国内では、この「10代のSNS禁止」に対して比較的強い支持が示されています。調査会社Pureprofileが12月上旬に公表した世論調査によると、回答者の73%が今回の規制を支持すると答えました。
一方で、「本当に効果があるのか」という点には慎重な見方が目立ちます。同じ調査では、規制が機能すると「自信を持って言える」とした人は26%にとどまり、68%が「子どもたちはなんとか抜け道を見つけるだろう」と考えていることが分かりました。
- 規制を支持:73%
- 実効性に自信がある:26%
- 子どもは抜け道を見つけると思う:68%
支持の高さには世代差もあります。調査によれば、教師では84%、保護者では75%が規制に賛成している一方、16~24歳では賛成は62%にとどまりました。10代・20代前半の若い世代は、SNSが日常生活や人間関係に深く組み込まれているだけに、必要性は感じつつも、実際の運用には複雑な思いを抱いている様子がうかがえます。
プラットフォーム側は消極的 実装とプライバシーへの懸念
今回の規制に対し、主要なソーシャルメディア企業は「法律には従う」としながらも、おおむね否定的な姿勢を示しています。理由として挙げられているのが、実務上の難しさと、若者をより危険なオンライン環境に追い込んでしまうリスクです。
年齢制限を徹底しようとすれば、身分証の提出など、より厳格な本人確認が必要になります。しかしそれは、利用者の個人情報をより多く集めることにもつながり、プライバシーへの影響が避けられません。AIを使って年齢を推定する方法もありますが、誤判定によるトラブルや差別の懸念が指摘されています。
グローバルなオンライン掲示板Redditは、法律には従うとしながらも、その「範囲、効果、プライバシーへの影響」には同意できないと表明しました。企業側には、規制が厳しくなるほど、若者がより匿名性の高いサービスや管理の行き届かない「インターネットの暗い隅」に流れてしまうのではないか、という危機感もあります。
各国が豪州モデルを注視 世界に広がる可能性も
オーストラリアの10代向けSNS禁止は、すでに国際的な関心を呼んでいます。デンマーク、マレーシア、ブラジル、インドネシア、ニュージーランドなどの国々が、同様の措置を検討していると伝えられています。
一部の国にとって、今回の動きは巨大IT企業に対し「子どもの安全を最優先せよ」と強いメッセージを送る先例となり得ます。他方で、「インターネットの自由」や、「どこまでを政府が決め、どこからを家庭や個人の判断に委ねるのか」という線引きをめぐる議論も避けられません。
ルールかリテラシーか 問い直される10代のオンライン時間
スマートフォンとSNSは、今の10代にとって情報収集の手段であると同時に、友人関係や自己表現の場にもなっています。今回のような年齢による一律の禁止は、有害なコンテンツから子どもを守る効果が期待される一方で、ポジティブなつながりや学びの機会まで閉ざしてしまうのではないかという懸念もつきまといます。
オーストラリアは、16歳という線を引くことで、思い切って「子どものデジタル環境」をリセットしようとしています。この大胆な実験が、どの程度トラブルや依存を減らし、また若者たちのオンライン行動をどう変えるのかは、今後時間をかけて検証されていくことになります。
多くの国や地域にとって、問われているのは単純な「禁止か容認か」ではなく、次のような組み合わせをどう設計するかという問題です。
- プラットフォーム側による、安全を優先したサービス設計
- 政府や規制当局による、最低限のルールづくり
- 家庭や学校での対話、そしてデジタルリテラシー教育
オーストラリア発の新しいルールが動き出した今、世界はその成果と課題を注視しています。今回の試みが、次の世代のためのソーシャルメディアのあり方をどう変えていくのか。しばらく目が離せないテーマになりそうです。
Reference(s):
Australia's world-first social media ban for under-16s takes effect
cgtn.com








