AIが仕事の姿を変えるかもしれない——そんな議論が広がるいま、教育が優先すべきものは何か。チューリング賞受賞者で米国科学アカデミー(NAS)会員のジョン・ホップクロフト氏は、2025年に上海で開かれた「中国国際基礎教育会議」の場でのCGTNのインタビューで、「教育の核は、学生が自分の好きなことを見つける手助けをすることだ」と語りました。
「教育のコアは“何が好きか”を発見すること」
ホップクロフト氏が強調したのは、テストの点数や短期的な就職スキルよりも、学ぶ人が「自分は何に惹かれるのか」を理解することの大切さです。好きなことを見つけるプロセスが、学びの継続力や深掘りする力につながり、結果として変化の大きい時代の“土台”になる、という見立てです。
「企業の社員」という概念は“100年ほどの新しさ”
インタビューでは、働き方そのものに対する歴史的な距離感も示されました。ホップクロフト氏は、「企業の社員」という概念は、せいぜい100年ほどの“比較的新しいもの”だという趣旨の指摘をしています。
この視点は、いま当たり前に見えるキャリア像(学校→就職→定年まで同じ枠組み)が、長い時間軸で見れば固定的ではないことを思い出させます。AIによる変化を語るとき、私たちは技術だけでなく、「仕事観」や「学び観」も更新を迫られているのかもしれません。
AIで仕事は変わる? それより「好奇心」をどう育てるか
ホップクロフト氏は、AIが雇用に与える影響をめぐって延々と議論するより、次世代が変化に適応できるようにすることが重要だと示しました。鍵になるのは、
- 自分の情熱(パッション)に軸足を置くこと
- 好奇心を保ち続けること
- グローバルな変化をしなやかに乗りこなすこと
という姿勢です。AI時代の教育を「新しい技術の授業を増やす話」に矮小化せず、学び手の内側にある動機や探究心をどう支えるか——議論の焦点をそこへ戻すメッセージにも読めます。
会場は上海の基礎教育会議——“いま”語られた意味
この発言が出たのは、2025年の上海での基礎教育に関する国際会議の場でした。AI活用が学校現場にも急速に入り始めるなかで、「何を教えるか」だけでなく、「なぜ学ぶのか」を問い直す声が、教育の国際的な議論の中心に戻ってきていることを示す場面ともいえます。
AIが便利になればなるほど、人の学びは“最短距離”に寄りがちです。しかし、最短距離だけでは見つからないものもあります。ホップクロフト氏の言葉は、変化の時代における教育の役割を、静かに再定義しようとしていました。
Reference(s):
Turing Award laureate: Fueling AI-era education with passion
cgtn.com








