スイスの村をのみ込んだ氷河崩壊 国連「国際氷河保全年」が映す危機 video poster
国連が2025年を国際氷河保全年に指定するなか、スイスのビルヒャー氷河が崩壊し、村ブラッテンが数百万トンの氷と岩に埋もれました。世界の氷河がかつてない速さで失われつつある現実が、ひとつの山村の悲劇というかたちで浮かび上がっています。
国連が2025年を国際氷河保全年に指定
国際ニュースとしても注目されているのが、国連が2025年を国際氷河保全年に指定していることです。氷河は地球規模の水循環や気候の安定にとって重要な存在ですが、世界各地で急速に溶け、崩れ、姿を消しつつあると指摘されています。
国際氷河保全年は、その変化を静かに振り返り、保全と適応について議論を深めるための一年と位置づけられています。今回のスイスの氷河崩壊は、その象徴のような出来事として受け止められています。
スイスの村ブラッテンを覆ったビルヒャー氷河の崩壊
科学番組の取材班が向かったのは、スイスの山あいにある村ブラッテンです。ここでは最近、ビルヒャー氷河が大規模に崩壊し、その氷と岩の混ざった巨量の土砂が一気に斜面を流れ落ちました。
数百万トンの氷と岩が村を埋める異常事態
報告によると、ビルヒャー氷河の崩壊では、数百万トン規模の氷と岩が一度に動き出し、村ブラッテンを覆い尽くしました。このような規模の地すべりは、アルプスでもまれだとされています。
氷河の崩壊は、一般的にはゆっくりとした後退として進むことが多く、ここまで劇的に山肌が崩れ落ちる例は限られています。だからこそ、今回の出来事は、氷河と山岳環境に何が起きているのかを問い直すきっかけになっています。
ETH ZurichとWSLの専門家チームが原因を調査
現地では現在、ETH Zurichのダニエル・ファリノッティ教授と、スイスの雪崩・雪研究で知られるWSL Institute for Snow and Avalanche Research SLFの専門家チームが、崩壊のメカニズムを詳しく調べています。
彼らの目的は、ビルヒャー氷河で何が起きたのかを科学的に解き明かし、同じような崩壊が他の場所で起きたときに、よりよく備えられるようにすることです。地形の変化や氷の状態、過去の雪や雨の状況など、さまざまな要素を組み合わせて検証しているとされています。
こうした調査は、ひとつの山村の安全にとどまらず、氷河地帯全体のリスク評価や防災計画を考えるうえで重要な基盤になります。
温暖化するアルプスで高まる大規模崩壊のリスク
専門家たちがとくに懸念しているのは、アルプスの気温上昇と、この種の崩壊リスクの関係です。ビルヒャー氷河のような大規模な崩壊が再び起こる可能性は、アルプスが温暖化するにつれて高まりつつあると指摘されています。
氷河が溶けると、岩盤を支えていた氷が薄くなり、斜面の安定が失われやすくなります。また、氷の内部や足元に水がたまり、すべりやすくなることもあります。こうした変化が積み重なることで、ある瞬間に臨界点を超え、大規模な崩壊につながるおそれがあります。
アルプスの山岳観光や登山、山村での暮らしは、長く氷河と共存してきました。しかし、その前提となっていた自然環境そのものが、今、大きく組み替えられつつあります。
消えゆく氷河が映し出す地球規模の変化
スイスアルプスの消えゆく氷河は、単なる景観の変化にとどまりません。ビルヒャー氷河の崩壊のような出来事は、地球全体で進行する変化のスケールを、目に見えるかたちで示しています。
氷河は、過去の気候をとじこめたタイムカプセルであり、乾季の水源でもあります。その氷が急速に失われるということは、私たちが依拠してきた自然のリズムや、水とエネルギーの循環が大きく揺れているということでもあります。
国際氷河保全年である2025年の終わりが近づく今、ビルヒャー氷河と村ブラッテンの物語は、気候変動への対応を先送りにする余地があまり残されていないことを静かに伝えています。どの地域が、どのタイミングで、どのような影響を受けるのかは一様ではありませんが、変化がすでに現実となっていることは共通しています。
氷河の崩壊という極端な出来事の背景をたどることは、単に災害の原因を突き止める作業ではなく、これからの社会や経済のあり方を考えるための手がかりでもあります。スイスの山村で起きたこの出来事をきっかけに、日々の暮らしと地球規模の変化とのつながりを、あらためて静かに見つめ直すタイミングが来ているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








