大量絶滅時代に「遺伝子を守る」――英国ビッグキャット保護と世界初の生きたバイオバンク video poster
生物多様性の危機が語られるなか、「いま失われつつある命を、未来にどう残すか」が現場の最前線で問われています。英国のビッグキャット保護施設と、絶滅危惧種の遺伝子を凍結保存する“生きたバイオバンク”の連携が、その一つの答えとして注目されています。
国連が警告する「100万種以上」の危機
Razorの特集「Protecting life in a time of mass extinction」は、現在を“大量絶滅の時代”として捉え、保全の現場が直面する切迫感を伝えます。国連は、植物・動物の100万種以上が絶滅の恐れにさらされていると警告しているとされ、 habitat(生息地)の縮小や気候の圧力が、種の消失を加速させている状況が背景にあります。
ケント州「Big Cat Sanctuary」:希少な大型ネコ科を守る現場
取材で訪れたのは、イングランド南東部ケント州のBig Cat Sanctuary。Cam Whitnall氏とチームが、世界でも特に希少性が高い大型ネコ科動物のケアにあたっています。大型ネコ科は世界的に象徴的な存在である一方、野生下では深刻な絶滅危機にある個体群も多いとされます。
新しい「保全の保険」:Nature's Safeの生きたバイオバンク
この保護施設は最近、Nature's Safeと連携を開始しました。Nature's Safeは、絶滅危惧種の遺伝子(組織や生殖細胞など)を保存し、将来の繁殖や研究に役立てることを目指す取り組みを進めています。
同団体は、世界各地の動物園、野生動物パーク、レスキューセンターと協力し、遺伝的多様性が失われる前に確保するための支援を無償で提供しているとされています。
どう保存するのか:終末期の採取→低温で長期保存
特徴的なのは、動物が生涯の終わりを迎える段階で、専門チームが組織や生殖細胞を採取し、イングランド中部シュロップシャーの施設で極低温(クライオ保存)する点です。創設者Tullis Matson氏は、取材者のGabrielle Lawrence氏を案内し、ここを「世界初の生きたバイオバンク」と位置づけています。
施設には、すでに300種を超える生物の遺伝子素材が保管されているとされ、消えゆく可能性のある「生命のアーカイブ」を拡充している形です。
遺伝子保存は「万能」ではない。それでも増える選択肢
遺伝子を保存しても、野生の生息地が戻らなければ種が安定して生き続けるとは限りません。一方で、遺伝子保存は次のような局面で選択肢を増やすと考えられています。
- 繁殖計画の支援:遺伝的多様性を意識した繁殖の設計に役立つ可能性
- 研究の基盤:病気への脆弱性や繁殖特性の理解を進める材料になり得る
- “取り返しがつかない”を遅らせる:危機が深まるほど、時間を買う意味が大きくなる
2025年末のいま、保全は「守る(現場)」と「残す(記録・保存)」を組み合わせながら進んでいます。象徴的な大型ネコ科のケアと、遺伝子を未来へ手渡す試みが交差する今回の連携は、絶滅危機の時代における保全の姿を静かに映し出しています。
Reference(s):
cgtn.com








