北京展示会で見えた中国本土の商業宇宙:再使用ロケットと衛星量産が同時加速
北京で先週末に開かれた商業航空宇宙の大型展示会で、中国本土の商業宇宙産業が「再使用ロケット」「衛星の量産」「宇宙応用(研究・医療・観光)」を同時に押し上げている現状が浮かび上がりました。コスト低下と打ち上げ頻度の増加が、衛星コンステレーション(多数の衛星で通信網などを構成する仕組み)を現実的な事業へ近づけています。
この2カ月で加速した「再使用」:ZQ-3の挑戦と海上回収の準備
展示会で特に注目を集めたのが、再使用型打ち上げ(ロケットの一部を回収して再び使う)の進展です。過去2カ月ほどで、技術面・運用面の動きが続きました。
主な動き(時系列)
- 昨年12月3日:LandSpaceが「Zhuque-3(ZQ-3)」を初の軌道投入飛行。軌道到達と同時に、第1段回収にも挑戦しました。
- 今月(2026年1月):中国本土で、商業ロケットの洋上回収試験を支える海上回収テストプラットフォームの建設が始まったとされます。
ZQ-3のチーフデザイナーである朱暁東氏は展示会で、2026年中の初のブースター回収成功と、回収部品の部分的な再飛行を目指す方針を示しました。運用としての「再使用」に近づくための、段階を踏んだロードマップが語られた形です。
「最初から再使用前提」のほうが合理的? iSpaceが語った開発コストの考え方
ロケット開発では「まず使い捨てで軌道投入を実現し、その後に再使用機能を足す」か、「最初から再使用前提で設計する」かが、時間と費用の配分に直結します。
iSpaceの楊迪氏は、先に軌道投入を達成してから再使用を追加する方が割高になりやすいという見方を説明しました。同社は、再使用型「Hyperbola-3」の初飛行を今年(2026年)に目指すとしています。
衛星コンステレーションを支える条件:打ち上げ頻度と製造能力
再使用が注目される理由の一つは、コストだけでなく高い打ち上げ頻度を現実的にする点にあります。衛星コンステレーションは「衛星の数」だけでなく、「継続的に補充・更新できる供給力」が問われます。
LandSpaceは製造体制を強化し、年最大30機のロケット生産、さらに年間少なくとも20回の打ち上げを見込むと説明しました。量産と定常運用の発想が、研究開発中心だった宇宙産業の空気を変えつつあります。
衛星側も“量産モード”へ:GalaxySpaceが示した2026年の重点
衛星メーカーGalaxySpaceの担当者は、低コスト量産や柔軟な太陽電池翼といった技術への関心が高いと述べました。衛星の供給能力が上がるほど、打ち上げ側には「安く・早く・繰り返す」力が求められます。
同社は2026年も、衛星インターネットの能力・ソリューションを前に進めるため、海外での応用実証や試験協力の拡大に取り組む考えを示しています。
宇宙の「使い道」が広がる:今月のサブオービタル飛行と宇宙医療
商業宇宙の応用は、現時点では科学研究が中心とされますが、具体的な実験が積み上がり始めています。
今月、CAS Spaceの宇宙機「Lihong-1」が初飛行し、高度約120キロに到達。バラの種子を搭載したほか、宇宙空間での金属3Dプリンティング実験も行ったといいます。さらに同社は、このコンセプトを踏まえ、病院と共同で宇宙医学のラボも立ち上げたと説明しました。短期間でデータを回収できることが、創薬などの反復(イテレーション)を早める可能性がある、という見立てです。
同社幹部は、高度100〜200キロの「近宇宙」を、微小重力を活かした製造やバイオメディカル研究に適した環境として位置づけています。
宇宙旅行は“予約が動き始めた”段階:20人が参加表明
宇宙旅行はまだ初期段階ですが、需要の芽を示す話題もありました。商業宇宙機を開発するInterstellOrは金曜、宇宙旅行向けの計画に約20人が参加表明したと発表。俳優、エンジニア、詩人、実業家などが含まれるといいます。
計画では、最大7人を乗せてカーマン・ライン(高度約100キロ)まで到達し、3〜6分程度の無重力体験を提供するとされます。安全性、訓練、運用の標準化など、今後の論点も多い一方、「体験」が具体的な商品像として語られ始めた点は象徴的です。
いま起きているのは「単発の成功」から「回る仕組み」への移行
北京の展示会で見えたのは、技術の披露だけではありません。再使用ロケットの回収・再飛行を見据えた工程設計、年20回規模の打ち上げを前提にした生産計画、衛星の量産と海外実証、さらに近宇宙の研究や宇宙旅行まで——複数のピースが同時に動くことで、商業宇宙が“単発のプロジェクト”から“継続運用の産業”へ移ろうとしています。
Reference(s):
China's commercial space progress highlighted at a Beijing exhibition
cgtn.com








