中国本土の宇宙企業、衛星軌道上で汎用AI「Qwen3」稼働へ—宇宙コンピューティングの節目
中国本土の商業宇宙企業が、衛星の軌道上で汎用AIモデルを動かすことに成功したと発表しました。地上に依存せず「宇宙で考えて宇宙で処理する」流れが現実味を帯び、宇宙コンピューティング競争が一段進む局面です。
何が起きたのか:軌道上の衛星でAIを“そのまま”動かす
GuoXing Aerospace Technology(国星航天科技)は今週月曜日(2026年1月26日)に開いたセミナーで、アリババの大規模言語モデル(LLM)「Qwen3」を、同社の「宇宙ベースのコンピューティングセンター(衛星群)」にアップリンクしたと明らかにしました。
成都を拠点とするスタートアップの幹部、王亜波(Wang Yabo)氏は、地上の管制から運用中の衛星コンステレーション(多数の衛星で構成するネットワーク)へ、汎用の大規模AIモデルを展開した例として「世界初」だと述べています。
実証の中身:質問→軌道上で推論→地上へ返送が“2分”
発表によると試験では、地上から衛星へ質問を送信し、衛星上で処理(推論)したうえで、結果を地上局に戻す一連の流れを約2分で完了したといいます。ポイントは、推論タスクを「端から端まで」軌道上で回した点です。
- 地上から質問を送る
- 衛星搭載コンピューティングで推論を実行
- 結果を地上局へ返送
なぜ今「宇宙で計算」なのか:AI時代の計算需要が背景
AIの普及で計算資源(コンピューティングパワー)への需要が急増するなか、処理能力を宇宙に持ち上げる「宇宙ベースの計算」が新しい競争領域として浮上しています。地上のデータセンターに集約する発想だけではなく、通信遅延や帯域、運用設計などを踏まえ、用途によっては“宇宙で前処理・推論する”方が合理的になり得る、という見立てが強まっています。
関連する動きとして、昨年11月にはSpaceXのロケットが、NvidiaのGPUを搭載した「Starcloud-1」衛星を軌道投入したとも報じられています。各社が「宇宙に計算資源を置く」方向で試行を重ねている構図です。
国星航天の計画:2035年までに2,800機、2030年に1,000機
王氏は同社の構想として、2035年までに計2,800機の“計算特化”衛星ネットワークを目指すと説明しました。内訳は推論用2,400機、学習用400機。高度は500〜1,000kmで、太陽同期軌道、薄明薄暮(ドーン・ダスク)軌道、低傾斜軌道などに分けて配備する計画だとしています。
衛星間はレーザー通信(レーザー衛星間リンク)で高速データ転送を行い、全体として推論計算10万ペタフロップス、学習計算100万ペタフロップスを世界規模で提供する狙いも示されました。さらに、2次・3次の衛星クラスターは「今年(2026年)中」の展開を見込むとし、2030年までに1,000機体制の完成を目標に掲げています。
ここからの注目点:速さだけでなく“運用の現実”が問われる
今回の発表は、軌道上で汎用AIを動かす技術実証としてインパクトがあります。一方で、衛星コンステレーションとして広域にスケールさせるには、通信設計(レーザーリンクの安定運用)、電力・熱設計、ソフト更新の仕組み、地上局との連携、そして宇宙環境での長期運用といった複数の条件が絡みます。
「宇宙で推論する」ことが、どのユースケースで最も効果を発揮するのか。地上と宇宙の役割分担がどう最適化されていくのか。2026年は、構想が“運用の積み重ね”として見えてくる年になりそうです。
Reference(s):
China's tech firm deploys AI model in orbit for space-based computing
cgtn.com







