NASAの有人月周回「Artemis II」、燃料漏れで2月打ち上げ断念 最短3月へ
NASA(米航空宇宙局)は、4人の宇宙飛行士が月を周回して帰還する有人ミッション「Artemis II」の打ち上げ時期を、2026年2月の予定から3月へ移す方針を明らかにしました。最終リハーサルで大型ロケットSLSの燃料充填手順に問題が見つかったためで、月探査計画の“次の一歩”は慎重な仕切り直しとなります。
何が起きた?—49時間の最終リハで燃料系に課題
NASAは、フロリダ州のケネディ宇宙センターで行った49時間の打ち上げカウントダウン・リハーサル(最終段階の事前確認)を終えた結果、2月の打ち上げ枠から外れ、最短で3月を目指すとしています。2月中の計画では、最短の打ち上げ機会は2月8日でした。
NASAのジャレッド・アイザックマン長官は、今回のリハーサルの終了を受けて、2月の打ち上げウィンドウを離れ、3月を最短目標にすると説明しました。また、SLSの打ち上げ間隔が3年以上空くことを踏まえると、課題に直面するのは想定内であり、そのためにリハーサルを行うのだ、という趣旨も述べています。
「ウェットドレスリハーサル」とは? なぜ重要なのか
今回実施されたのは「ウェットドレスリハーサル」と呼ばれる最終シミュレーションです。ロケットに液体推進剤を実際に満載し、カウントダウンを通しで確認します。ただし、この段階では打ち上げは行いません。
- 燃料を本番同様に扱うため、漏れや手順上の詰まりが見つかりやすい
- 打ち上げ当日のトラブルを減らし、安全性と確実性を高める狙いがある
見つかった問題:液体水素が「小さな継ぎ目」から漏れ
NASAによると、リハーサル中、推進剤の一つである液体水素が、SLSへ燃料を送るための大きなホースの「小さな継ぎ目(フィッティング)」部分から漏れていることが確認されました。燃料充填は打ち上げ作業の中でも特に繊細な工程で、極低温の推進剤を扱うため、わずかな不具合が全体の工程に影響しやすい領域です。
Artemis IIの搭乗クルーは4人—月へ向かう“周回ミッション”
Artemis IIは、月面着陸ではなく、月を周回して地球へ戻る有人飛行です。予定されているクルーは次の4人とされています。
- リード・ワイズマン(米)
- ビクター・グローバー(米)
- クリスティーナ・コック(米)
- ジェレミー・ハンセン(カナダ)
このミッションは、アポロ計画以来となる有人月ミッションとして位置づけられ、有人宇宙飛行としての到達距離でも大きな節目になるとされています。
次の焦点は「3月の最短打ち上げ」—Artemis III(2028年予定)にも影響は?
Artemis IIは、NASAが計画する有人月面着陸「Artemis III」へつながる前段です。Artemis IIIは2028年に予定されており、打ち上げには同じくSLSロケットと、上部に搭載されるオリオン宇宙船が使われます。月面着陸船としては、初めてSpaceXのStarshipを用いる計画だとされています。
今回の延期はまずArtemis II単体の安全確認に焦点が当たっていますが、月探査は複数要素が連動するため、今後は修理・再検証に要する期間と、打ち上げ準備の再設定がどこまで工程に影響するかが注目点になりそうです。
いま読み解くポイント:延期そのものより「どこで止めたか」
今回の動きは、打ち上げ直前の工程で問題を把握し、無理に進めずに時期を改める判断が取られた、という見方もできます。月探査が再び“定常的なプロジェクト”として続くには、スケジュールだけでなく、燃料系のような地味だが重要な基盤を丁寧に固められるかが問われます。
Reference(s):
cgtn.com








