フィギュア採点にAI?ISUが透明性向上へ—ミラノ・コルティナ五輪で議論
2026年2月、ミラノ・コルティナ冬季五輪が進む中、フィギュアスケートの採点にAI(人工知能)とコンピュータビジョン(映像解析)を活用し、スコアの一貫性と透明性を高めようとする動きが注目されています。
ISUが描く「AIで採点を支える」ロードマップ
ロイターによると、国際スケート連盟(ISU)は、AIと映像解析で得たデータをまず審判の技術点判断の補助に使い、その先に採点システムへの統合も視野に入れています。ISUのコリン・スミス事務局長(Director General)が、段階的な導入方針を説明したとされています。
まずはシングル、次にペア・アイスダンスへ
導入はシングル競技から始め、将来的にペアやアイスダンスへ広げる計画です。技術要素の種類や判定の複雑さが増すほど、データ補助の価値が大きくなる、という発想が背景にあります。
なぜ今AIなのか——“数秒の判断”が生む揺らぎ
フィギュアでは、ジャンプの回転数が足りているか、踏み切りのエッジが正しいかなどを、審判がごく短時間で見極める必要があります。瞬時の判断は、認知負荷(頭の処理負担)が高く、誤差や判定のばらつきが起きやすい領域でもあります。
AIとコンピュータビジョンが得意とするのは、まさにこうした「目で追い切りにくい」要素の定量化です。具体的には、次のような情報を客観的に測ることで、判断の土台を厚くできます。
- 回転数(不足回転など)
- 踏み切りのエッジ(外・内など)
- 身体の位置や角度(姿勢・軸の乱れなど)
人間の審判はどう変わる?「芸術面に集中」の可能性
AIが技術要素の測定を支えることで、審判は瞬間的な技術判定に追われにくくなり、演技の表現や構成といった側面により注意を向けられる可能性があります。つまり、AIは人間の代替というより、判断を安定させるための“補助輪”として設計されつつあります。
データで「審判の一貫性」もチェックへ
ISUは、AI導入と並行してデータ分析も進めています。ロイターによれば、ISUは78の国際大会から、要素(element)の採点約75万件、構成点(component)の採点約27万件を分析し、審判の一貫性に課題がないかを探っているといいます。
採点は「結果」だけでなく、「どんな傾向でばらつくのか」を可視化してはじめて改善が可能になります。データ分析は、競技への信頼を支える裏方の取り組みとして存在感を増しそうです。
競技外ではすでに進む——トレーニングでのAI活用
AIの利用は採点だけに限りません。トレーニング現場では、映像とデータで動作を分解し、改善点を素早くフィードバックする使い方が広がっています。
記事に登場する例として、2022年の北京冬季五輪を前に、中国フィギュアスケート協会の申雪氏らが、中国本土の「フィギュアスケートAI補助採点システム1.0」を公開したとされています。コンピュータビジョンと深層学習(ディープラーニング)を用い、肩・足首・手首など8つの主要ポイントをリアルタイムで捉え、採点基準に沿って動きの実施や流れを評価し、審判団の補助や日常練習での活用につなげたという内容です。最初はペア競技での適用が中心だったとされています。
またフリースタイルスキーでも、北京2022の女子エアリアルで金メダルを獲得した徐夢桃選手が、AIコーチ「Guangjun(グアンジュン)」を用いて練習した事例が紹介されています。離陸・空中・着地の各局面を解析し、軌道、回転角、跳躍の高さなど複数指標で数値化し、コーチの判断を支える狙いがあるといいます。
それでも“決定権”は慎重に——AIは当面サポート役
現時点でISUは、AIを採点の決定権を持つ仕組みとしてではなく、データで支えるツールとして位置づけています。競技の公正さを高めたい一方で、判定の説明責任、異議申し立て時の扱い、システムの透明性など、AIが深く関わるほど整理すべき論点が増えるためです。
今大会をきっかけに、「人間の判断をどう守り、どう補うか」という設計が、スポーツの採点全体で静かに問われていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








