希少疾患診断AI「DeepRare」 “仮説検証型”で精度向上、Nature掲載
希少疾患の診断は「症状はあるのに病名がつかない」時間が長くなりやすい領域です。2026年2月18日(水)に学術誌Natureで発表された研究によると、新しい“エージェント型(agentic)”AIシステム「DeepRare」が、既存ツールと同等、条件によっては上回る精度を示しました。
何が課題だったのか:誤診と“診断までの年数”
研究は、希少疾患の患者が正しい診断にたどり着くまで長い時間を要しがちな現実を背景にしています。中国本土の中国希少疾病連盟が2万人超を対象に行った調査では、
- 42%が過去に誤診を経験
- 確定診断まで平均4.26年
という結果が示されたとされています。DeepRareは、この“診断の長い旅”を短くすることを狙ったシステムです。
DeepRareの成績:症状だけでも「最初の候補が当たる」割合が半数超
今回の評価では、まず患者の臨床フェノタイプ情報(症状や所見など)だけを入力し、医師が初期判断を行う状況に近い形でテストが行われました。その結果、DeepRareはRecall@1が57.18%でした。これは、提示された最初の診断候補が正解だった割合が半数を超えたことを意味します。
研究では、この性能が遺伝学的検査(遺伝子検査)へ日常的にアクセスしにくい病院でのスクリーニングを支える可能性があると示唆されています。
ゲノム情報を加えるとさらに上昇:複雑例でRecall@1が70.6%
次に、ゲノムシーケンシング(遺伝情報の解析)データを追加した条件では、複雑なケースにおいてDeepRareのRecall@1が70.6%に上がりました。
同条件で比較された国際的に広く使われる遺伝子解析ツール「Exomiser」は53.2%で、研究ではDeepRareが上回ったと報告されています。
“症状の照合”だけではない:医師に似せた「エージェント型」ワークフロー
研究チームによると、DeepRareの特徴は、単に症状と疾患カテゴリを機械的に対応づけるのではなく、
- 仮説を立てる
- 証拠と突き合わせて検証する
- 結論を必要に応じて修正しながら
- 可能性の高い疾患を順位づけする
という、人間の医師に近い思考手順(研究者の表現では“agentic”)を採用している点にあります。臨床の現場で重要になりがちな「途中で仮説を組み替える」動きに寄せた設計だと言えそうです。
運用はすでに開始:2025年7月からオンラインで展開
DeepRareは2025年7月からオンライン診断プラットフォーム上で運用が始まっており、研究時点で世界で600以上の医療機関が登録しているとされています。
また研究チームは、
- 世界的な希少疾患診断アライアンスの立ち上げ
- 実臨床の2万件を用いた追加検証
を、今後数カ月で進める計画だとしています(2026年2月現在)。
いま注目されるポイント(読みどころ)
- 症状情報だけでも初手の候補提示で一定の精度を示したこと
- 遺伝情報を加えると複雑例で精度がさらに上がったこと
- “仮説→検証→修正”という診断の手順そのものをモデル化した点
- 2025年から運用が始まり、次の段階として2万件規模の検証が予定されていること
希少疾患の診断は、医療の中でも「情報が少ない」「似た症状が多い」「検査へのアクセスに差がある」といった条件が重なりやすい分野です。DeepRareのようなシステムが、現場でどう使われ、どこまで診断の道筋を短くできるのか。2026年は、大規模な実データでの検証が次の焦点になりそうです。
Reference(s):
'Agentic' AI system delivers high accuracy in rare disease diagnosis
cgtn.com








