豪州研究、廃棄物から“ゼロカーボン尿素”へ 肥料の高排出を変える新手法
肥料の代表格「尿素」は世界の食料生産を支える一方、いまは化石燃料に強く依存する“高排出”の製造が主流です。オーストラリアの研究チームが、廃棄由来の二酸化炭素(CO2)と水中汚染物質になりやすい窒素化合物を組み合わせ、再生可能電力で尿素をつくる新プロセスを開発したと発表しました。
何が起きた?:CO2と窒素汚染物質から尿素を合成
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は2月下旬、再生可能電力を使って電気化学反応を起こし、CO2と硝酸塩・亜硝酸塩(農業や工業由来で水路の汚染物質になりやすい成分)を結び付けて尿素を生成する方法を示したと説明しました。研究成果は学術誌「Nature Communications」に掲載されたとしています。
なぜ重要?:尿素は“半分以上の人の作物”を支える一方で排出が大きい
UNSWのラーマン・ダイヤン准教授は、尿素が「世界人口の半分以上の作物を育てるために使われている」としつつ、現在の尿素製造は天然ガスや石炭に依存し、高温・高圧での生産が必要なため排出が大きいと述べました。今回の狙いは、アンモニアを中間体に置く従来の流れを迂回し、再生可能電力で“廃棄物CO2×窒素汚染”から直接尿素へつなぐ点にあります。
仕組みのポイント:原子スケールで設計した銅・コバルト触媒
研究では、銅とコバルトの触媒を原子スケールで設計し、炭素(C)と窒素(N)の結合を狙って制御しやすくしたとしています。発表によると、この触媒は相乗効果を示し、既存システムと比べて尿素生成の改善が確認されたとのことです。
“捨てにくい排出”と“水の汚れ”を同時に扱う発想
研究チームは、この技術がセメント工場などで避けがたいCO2排出や、農業廃棄物に関連する負荷の低減を視野に入れると説明しています。加えて、硝酸塩・亜硝酸塩のような窒素化合物は水系汚染の課題とも重なります。排出源と汚染源を“原料”として束ね直す発想は、脱炭素と環境対策の接点として注目されます。
オーストラリアの背景:2024年に尿素を380万トン輸入
発表に添えられた統計として、農業輸出国であるオーストラリアは国内生産が限られ、2024年に尿素を380万トン輸入したとされています。肥料の安定調達と、製造に伴う排出の削減をどう両立するかは、食料供給とエネルギー転換が交差する論点でもあります。
次に問われること:実装の壁はどこか
- 規模の拡大:実験室レベルの反応を、工業規模で安定運転できるか。
- 電力の条件:再生可能電力を十分に確保し、コストと供給の波をどう抑えるか。
- 原料のばらつき:排ガス中のCO2や廃水中の窒素化合物は不純物が多くなりがちで、触媒や装置への影響が焦点になる。
“高排出産業の排出を原料に変える”という方向性が、肥料のサプライチェーンや環境政策の議論をどう動かすのか。2026年の脱炭素投資の流れの中で、スケールアップの具体像が注目点になりそうです。
Reference(s):
Researchers turn high-emissions waste into zero-carbon fertilizer
cgtn.com








