カラスサイズの新種恐竜「アルナシェトリ」 ほぼ全身化石がアルゼンチンで発見
約9500万年前の南米パタゴニアは“巨竜の世界”だけではありませんでした。アルゼンチンで、カラスほどの大きさしかない小型恐竜の、保存状態が極めて良い“ほぼ全身骨格”が報告され、当時の生態系の見え方を静かに更新しています。
見つかったのは「世界最小級」の肉食恐竜
研究チームが報告したのは、新種の小型獣脚類(肉食恐竜のグループ)Alnashetri cerropoliciensis(アルナシェトリ・セロポリシエンシス)の化石です。個体はニックネームで「Alna(アルナ)」とも呼ばれています。
体重は約0.7kgで、ニワトリより小さいサイズ。体長は約70cmとされますが、その多くは尾が占めていたとみられます。平均的な大人の膝にも届かない高さだったという説明もあります。
「生きていた時の姿勢」に近いまま残った、ほぼ完全な骨格
今回の標本の注目点は、骨がばらばらになりにくい形で残り、生前の体勢に近い配置で保存されていたことです。産地はアルゼンチン北部パタゴニアのリオネグロ州にある「ラ・ブイトレラ(La Buitrera)」で、白亜紀の小〜中型動物の化石が多く出ていることで知られています。
研究では、骨の微細構造を顕微鏡で見る組織学的(ヒストロジー)な解析も行われ、共同著者は「組織学的ディテールが非常に精緻」と述べています。脆い小型骨格でここまで調べられるのは、保存状態の良さがあってこそです。
砂丘が“タイムカプセル”になった:砂漠で生き、4歳でほぼ成長
個体は雌で、砂漠環境で暮らしていたとされます。死亡時は4歳で、ほぼ成長しきった段階だったと推定されています。
死後まもなく砂丘に覆われたことが、今回の「壊れにくい保存」を生んだ要因と説明されています。地元先住民マプチェの言葉で「骨の砂漠」を意味する「ココルコム(Kokorkom)」という土地名も紹介されています。
何を食べていた? “虫食い専門”になる前の姿が見える
アルナシェトリは、アルバレッツァウルス類(alvarezsaurs)という少し変わった恐竜の仲間に属します。アルバレッツァウルス類は一般に小型で、前肢は短いものの力強く、後肢は細長い体つきが特徴とされます。ほかの近縁種の化石から、羽毛を持っていた可能性も示唆されています(ただし、鳥類とは遠縁とされます)。
アルナシェトリは、トカゲやヘビ、小型哺乳類、無脊椎動物などの小さな獲物を狙っていた可能性が挙げられています。歯は小型のヴェロキラプトルのように尖って数が多く、しっかりした作りだったとされます。
一方で、のちの時代のアルバレッツァウルス類には、歯が小さくなり、前肢が縮小しつつ大きな爪を発達させ、シロアリ塚を掘るような昆虫食の生活に適応したとみられるものもいます。今回の標本は、「極小化」や食性の変化が、この系統で一度きりではなく複数回起きた可能性を示す材料になっています。
“南の巨人の時代”は、同時に「小さな命の時代」でもあった
約9500万年前のパタゴニアには、ギガノトサウルス(肉食で約8トン)や、アルゼンチノサウルス(植物食で最大級、約70トンとも)といった巨大恐竜がいたとされます。だからこそ、小型恐竜のほぼ完全な骨格は、当時の景色を立体的にします。
研究者は、映画的な「遠くに巨大恐竜だけがいる風景」では、生態系の重要な要素である中小型動物が見落とされがちだと指摘します。アルナシェトリは、“巨竜の時代”が、同時に多様な生物が折り重なる時代でもあったことを、手触りのある形で示しています。
発見と研究のタイムライン
- 2004年:ラ・ブイトレラで、アルナシェトリのものとされる不完全な脚の化石が見つかる
- 2014年:今回の「ほぼ全身骨格」の標本が発見される
- 2014年〜:約12年にわたるクリーニングと研究
- 2026年2月25日:学術誌「Nature」に研究が掲載される
鳥類を除けば、アルナシェトリは南米で知られる恐竜の中でも最小級で、世界的に見ても最小クラスに並ぶとされています。巨大さが注目されやすい恐竜研究ですが、「小ささ」から見える生態系の輪郭も、今年あらためて鮮明になってきました。
Reference(s):
'Exquisite' fossil of one of the smallest dinosaurs found in Argentina
cgtn.com








