グローバリゼーションを巡る中国と米国:包摂的か排他的か video poster
2025年のいま、「グローバリゼーションに本当に開かれているのはどこか?」という問いは、国際ニュースを追う多くの人にとって身近なテーマになっています。中国と米国はいずれも多国間主義を掲げていますが、その中身は大きく異なると、政治学者の鄭永年(Zheng Yongnian)教授は指摘します。本稿では、「包摂的」と「排他的」という二つの多国間主義の違いと、これが今後の国際協力にもたらす影響を整理します。
「二つの多国間主義」とは何か
鄭永年教授は、「中国も米国も多国間主義を実践しているが、それは二つの異なるタイプだ」と述べています。ここでいう多国間主義とは、複数の国や地域がルールや制度を共有しながら協力する考え方です。
同時に、鄭教授は「グローバリゼーションはゼロサムゲームではない」とも強調します。誰かの利益が必ず誰かの損失になるわけではなく、協力の設計次第では、参加者がともに利益を得ることが可能だという視点です。
現在議論されているのが、次の二つの方向性です。
- 包摂的な多国間主義:できるだけ多くの国・地域を巻き込み、参加のハードルを低くする考え方
- 排他的な多国間主義:価値観や制度が近い国どうしで枠組みをつくり、参加条件を絞り込む考え方
包摂的な多国間主義:中国がめざす枠組み
包摂的な多国間主義は、グローバリゼーションを「より多くの国が参加できる開かれた場」として捉える発想です。鄭教授の議論を踏まえると、中国は自らのアプローチを、この包摂的な多国間主義に近いものとして位置づけています。
その特徴は、概ね次のように整理できます。
- 参加国や地域の政治体制や発展段階の違いを前提として認める
- 対立よりも「共通の利益」や「相互に得をする関係(ウィンウィン)」を強調する
- 経済協力やインフラ整備など、具体的なプロジェクトを通じて関係を深める
こうした枠組みは、特定の価値観や同盟関係に縛られないぶん、多様な国・地域が参加しやすくなるという利点があります。一方で、参加者が増えるほど利害調整は複雑になり、合意形成に時間がかかるという課題も抱えます。
排他的な多国間主義:米国がとりがちなアプローチ
排他的な多国間主義は、「信頼できるパートナー」で輪を固め、より小さなグループで深い協力を進めようとする発想です。鄭教授が対比させるもう一つのタイプとして、米国のアプローチはしばしばこの方向性で語られます。
その特徴としては、次のような点が挙げられます。
- 価値観や制度が近い国どうしでルールや規範を共有することを重視する
- 安全保障や経済安全保障など、戦略的な分野で結びつきを強める
- 枠組みの外にいる国・地域との距離が相対的に広がりやすい
少数のパートナーで協力を進めることで、意思決定を速くしやすいという強みがあります。その一方で、「内側」と「外側」を分ける線が強調されると、国際社会全体の分断を生みやすいという懸念も伴います。
グローバリゼーションはゼロサムではない
鄭永年教授が強調する「グローバリゼーションはゼロサムゲームではない」という指摘は、二つの多国間主義を考えるうえで重要です。
ゼロサムの発想にとらわれると、「相手が得をすることは、自分が損をすることだ」という見方に陥りやすくなります。しかし、現代の経済や技術、サプライチェーン(供給網)は、国境を超えて緊密に結びついています。そのため、協力の設計次第では、複数の国・地域が同時に利益を得る状況をつくることが可能です。
包摂的な多国間主義は、その発想を前提に「できるだけ多くの参加者がメリットを得られる場」を目指します。排他的な多国間主義は、「限られた参加者どうしで利益を最大化する場」を志向します。どちらの発想を強く採用するかによって、世界の協力の形は大きく変わります。
未来の国際協力はどう変わるのか
では、包摂的・排他的という二つの多国間主義は、今後の国際協力にどのような影響を与えるのでしょうか。いくつかのポイントに整理できます。
- 国際ルールづくりへの参加
包摂的な多国間主義が広がるほど、より多くの国・地域がルールづくりに関与しやすくなります。一方、排他的な枠組みが中心になると、ルールが一部の国によって先に決められ、他の国は「後から従う」立場になりがちです。 - 分断と橋渡し
排他的な多国間主義が強まると、国際社会は複数のグループに分かれやすくなります。そのとき、包摂的な枠組みは、異なるグループのあいだをつなぐ「橋」として機能する可能性があります。 - 小国や新興国への影響
包摂的な多国間主義は、小規模な国や新興国にとって、発言の場や選択肢を広げる効果があります。排他的な枠組みが前面に出ると、どのグループにどう距離をとるかという、難しい選択を迫られやすくなります。
「中国と米国のどちらがよりグローバリゼーションに開かれているのか」という問いは、多国間主義の中身を問う問いでもあります。ただし、鄭教授の議論から見えてくるのは、「どちらが正しいか」という単純な二択ではなく、「グローバリゼーションをどのような形でデザインするのか」という設計の違いだと言えます。
私たちにとっての意味:問い続けるための視点
こうした国際ニュースは、一見すると遠い世界の話に見えるかもしれません。しかし、サプライチェーンの変化やデジタル経済のルールづくりは、私たちの日常の価格、仕事、サービスにも直結します。
読者として意識できるポイントを、最後に三つだけ挙げておきます。
- 「誰が参加できていて、誰が参加できていない枠組みなのか」を意識してニュースを見る
- 国どうしの対立だけでなく、「協力の設計」がどう変わっているかにも注目する
- グローバリゼーションをゼロサムではなく、「どうすれば共に利益を得られるか」という視点から捉え直す
包摂的か、排他的か。中国と米国の異なる多国間主義を手がかりに、これからの国際協力のかたちを、自分なりの視点で考えてみることが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








