中国・シズイツァン地震 専門家「大規模地すべりの可能性は低い」 video poster
中国西南部のシズイツァン自治区(Xizang Autonomous Region)のディンリ県でマグニチュード6.8の地震が発生し、周辺の山岳地帯で地すべりなどの二次災害が懸念されています。この記事では、この国際ニュースについて、地質災害の専門家による最新の評価と今後のリスクを整理します。
シズイツァン自治区で起きた地震と地すべりリスク
地震が発生したのは、中国西南部のシガツェ市(Xigaze)のディンリ県に位置する山岳エリアです。大きな揺れがあった直後は、急峻な斜面が多い地域ということもあり、大規模な地すべりや土石流が連鎖的に起きるのではないかという懸念が高まりました。
山岳地帯での強い地震では、次のような地質災害が問題になります。
- 斜面の崩壊による地すべり
- 土砂が川をせき止める「土砂ダム」の形成
- 氷河湖の決壊や急激な水位変化
こうしたリスクを評価するため、地質災害の専門家チームが現地の状況を分析しました。
専門家「大規模地すべりの可能性は低い」
評価にあたったのは、成都理工大学にある地質災害防治と地環境保護国家重点実験室(State Key Laboratory of Geohazard Prevention and Geoenvironment Protection)のファン・シュアンメイ(Fan Xuanmei)所長とそのチームです。
ファン氏らは、地震後の地形や斜面の状態を踏まえて総合的に判断した結果、広い範囲で連鎖的な崩壊が起きるような大規模地すべりが発生する可能性は低いと見ています。住民やインフラに直ちに甚大な影響を与えるレベルの地すべりリスクは、現時点では抑えられているという見立てです。
一般的に、専門家は次のような点を見ながら地すべりリスクを評価します。
- 地震の規模や揺れ方
- 斜面の傾斜や岩盤・土質の特徴
- 過去の崩壊履歴や既存の亀裂
- 地表の亀裂や落石など、地震直後に確認できる変状
今回の専門家の判断は、こうした要素を踏まえたうえで、「広域での壊滅的な地すべりシナリオは考えにくい」というメッセージだと理解できます。
氷河湖に「今すぐの損傷」は見られず
地震発生直後、もう一つ注目されたのが、周辺にある氷河湖への影響です。山岳地域では、氷河が溶けてできた湖(氷河湖)が増えており、その堤防となるモレーン(堆積した土砂や岩)が崩れると、大量の水が一気に流れ出す危険があります。
ファン氏によると、現時点では氷河湖に目立った損傷は確認されておらず、すぐに決壊が起きるような兆候も見られていません。少なくとも、今回の地震の揺れだけで氷河湖が直ちに大規模崩壊を起こすリスクは高くないというのが、チームの評価です。
それでも油断できない「気温上昇」と「雪解け」の影響
一方でファン氏は、より長い時間軸で見たときのリスクに注意を促しています。同氏は、氷河湖に今のところ目立った損傷はないものの、気温の上昇と雪解けの進行によって、今後リスクが高まる可能性があると指摘しています。
地震そのものが堤防を壊さなくても、次のようなプロセスを通じてリスクがじわじわと高まることがあります。
- 気温が上がり、氷河や積雪が溶けて氷河湖の水量が増える
- 地震で生じた小さな亀裂や不安定な斜面に、水が染み込みやすくなる
- 一定の限界を超えたところで、堤防や斜面が一気に崩れる
このため、2025年現在のように気候変動の影響が世界各地で問題となるなかでは、「地震直後に目立った被害がなくても、数カ月から数年スパンでリスクが変化しうる」という視点が重要になっています。
今後求められるモニタリングと防災の視点
今回の専門家評価は、「今、大規模地すべりが起きる可能性は低い」という安心材料であると同時に、「中長期的な監視と備えは続けるべきだ」というメッセージでもあります。
山岳地域の地震後に有効とされる対策の例を挙げると、次のようなものがあります。
- 氷河湖の水位や堤防の変化を、衛星やドローン、現地観測で継続的に監視する
- 崩れやすい斜面を地図化し、集落や道路との位置関係を把握する
- 住民や観光客に対して、避難ルートや危険箇所を分かりやすく共有する
- 大雨や急激な雪解け時に、早期警戒情報を出す仕組みを整える
こうした仕組みづくりは、中国西南部に限らず、山岳地帯を抱える多くの国や地域に共通する課題でもあります。国際ニュースとして地震を追うときも、「被害の有無」だけでなく、「その後のリスク管理や学び」に目を向けることが、これからの防災には欠かせません。
日本の読者にとっての意味
日本もまた、地震が多く、山岳地帯やダム、火山湖など水と地形が複雑に絡み合う地域が少なくありません。中国・シズイツァン自治区での地震をめぐる議論は、日本の防災を考えるうえでも参考になります。
- 「地震直後」に見える被害だけでなく、「数カ月から数年後」に顕在化するリスクを意識する
- 専門家による科学的な評価と、住民への分かりやすい情報発信をどうつなぐかを考える
- 気候変動が、山岳地域の災害リスクをどう変えているのかに関心を向ける
今回の地震に対する専門家の冷静な分析は、感情的な不安に飲み込まれず、データと科学的知見に基づいて状況を判断することの大切さを、あらためて示しているといえるでしょう。
Reference(s):
Expert: Low chance of large-scale landslides after Xizang earthquake
cgtn.com








