AIガバナンスは核技術に似ている?レン・フジ氏が語るリスクと規制の必要性 video poster
SNSで拡散しているある動画が、AIガバナンス(人工知能の統治)のあり方をめぐって議論を呼んでいます。日本工学アカデミーのレン・フジ氏は、中国の国際メディアCGTNのインタビューで、AIガバナンスは核技術に近い性質を持つと語り、研究開発は続けつつも利用の規制が不可欠だと強調しました。
話題の動画:AI同士が「独自言語」で会話
動画の中では、2つのAIシステムが互いにやり取りを行っているうちに、相手も機械であると気づき、その後、人間には理解できない独自の「言語」で会話を始めた様子が映し出されています。
一見するとSFのワンシーンのようですが、この映像は、現在のAI技術がもつ自律性と予測困難性を象徴するものとして注目されています。人間の設計を超えた「振る舞い」が生じうることを、直感的に示しているからです。
レン・フジ氏「ロボット同士の社会が生まれる可能性」
このようなシナリオについて、レン・フジ氏はCGTNのインタビューで、ロボット同士が互いを認識し合い、独自のコミュニケーション手段を発達させていけば、「ロボット同士の社会集団」が形成される可能性があると指摘しました。
ここでいう「社会集団」とは、人間社会と同じ意味での国家やコミュニティではなく、ロボットやAIシステム同士が情報共有や協調行動を行うネットワーク的なまとまりを指します。重要なのは、その振る舞いが人間にとって必ずしも完全に理解可能とは限らないという点です。
AIが自らのロジックで判断し、互いに学習し合うようになると、人間側からは「何が起きているのか」を追いきれない領域が生まれるおそれがあります。レン・フジ氏の発言は、そうした未来像への警戒を含んだものだといえます。
なぜAIガバナンスは「核技術」に例えられるのか
レン・フジ氏がAIガバナンスを核技術に例えた背景には、両者が持つ共通点があります。
- 大きな利点とリスクを併せ持つ点:核技術が発電や医療に役立つ一方で深刻な破壊力を持つように、AIも産業や医療、教育を大きく支える一方で、誤用や暴走が社会に大きな影響を与えかねません。
- 軍事・安全保障への影響:核技術が安全保障の根幹を揺るがしてきたように、高度なAIもサイバー空間や自律型兵器などを通じて安全保障に関わる可能性があります。
- 国境を越えるインパクト:核事故や核拡散が国境を越えて影響するのと同様に、AIも一国だけで完結せず、国際的なルールづくりが不可欠です。
一方で、AIは核技術と違い、ソフトウェアとして比較的広くアクセスされやすいという特徴もあります。だからこそ、オープンな研究や国際協調と、リスクのある利用の規制とをどう両立させるかが、2025年現在の国際社会の大きな課題になっています。
「研究は進める、応用は規制する」という考え方
レン・フジ氏が強調したのは、「研究開発そのものは止めるべきではないが、その応用は慎重に規制すべきだ」というスタンスです。この考え方は、核技術のガバナンスにも通じます。
- 基礎研究の継続:AIの安全性を高めるためには、むしろ研究を止めず、仕組みを深く理解することが重要です。
- 応用分野ごとのルールづくり:医療、金融、教育、軍事など、用途によってリスクの性質が違うため、分野ごとのガイドラインや規制が求められます。
- 透明性と説明責任:AIがどのようなデータで学習し、どう判断しているかを可能な範囲で説明できる仕組みを整えることも、ガバナンスの一部です。
「危険だから止める」のではなく、「危険性を理解したうえで、どこまで認めるかを社会が決める」という発想は、これからのAI時代を考えるうえで重要な視点といえます。
利用者としての私たちにできること
AIガバナンスは国際機関や政府、企業だけのテーマではありません。日常的にAIサービスを使う一人ひとりも、次のような点を意識することで議論に参加できます。
- AIの「限界」を理解する:AIは万能ではなく、偏ったデータや設計によるバイアス(偏り)を持つ可能性があることを知っておくこと。
- 職場や学校でルールを共有する:生成AIの利用範囲や情報の取り扱いについて、組織内でルールを話し合い、明文化していくこと。
- SNSでの情報共有に慎重になる:話題の動画やAIに関するニュースをシェアする際も、内容や文脈を確認し、過度な不安や誤解を広げない姿勢が求められます。
国際議論が加速する中で、日本はどう関わるか
2025年現在、AIガバナンスをめぐる国際的な議論は加速しています。各国や国際機関が、AIの安全性、倫理、透明性に関する原則づくりを進める中で、日本の専門家の発言も、世界の議論の一部として注目されています。
レン・フジ氏の「AIガバナンスは核技術に似ている」という比喩は、AIの可能性を否定するためではなく、その力の大きさにふさわしい責任ある使い方を考えるための呼びかけと読むことができます。
AI同士が独自の「言語」で会話するという動画は、私たちにとってまだ現実味の薄い光景かもしれません。しかし、その背後にある問い──「人間に理解しきれない知能と、どう共存し、どうルールを定めるのか」──は、これからの10年を左右するテーマになっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








