中国の量子コンピューター「祖冲之3.0」、計算速度で新たな世界基準 video poster
中国の超伝導量子コンピューター試作機「祖冲之3.0」が、今年3月3日に稼働を開始し、量子計算の性能で新たな世界基準を打ち立てました。国際ニュースとしても、量子技術をめぐる競争が一段と加速していることを示す出来事です。
超伝導量子コンピューター「祖冲之3.0」とは
祖冲之3.0は、中国本土の研究チームが開発した超伝導方式の量子コンピューター試作機です。超伝導方式とは、極低温で電気抵抗がゼロになる性質を利用し、量子ビット(キュービット)と呼ばれる計算の最小単位を高速に制御する仕組みです。
今回の発表では、祖冲之3.0が量子コンピューターの代表的な性能テストである「量子ランダム回路サンプリング」の処理で、従来を大きく上回る速度を達成したとされています。
世界最速スーパーコンとグーグルを大きく上回る性能
祖冲之3.0は、量子ランダム回路サンプリングのタスクを、世界で最も強力なスーパーコンピューターよりも約1000兆倍(10の15乗倍)高速に処理できると報告されています。
さらに、2024年10月に科学誌「Nature」に掲載されたグーグルの最新結果と比べても、その処理速度は約100万倍に達するとされています。つまり、古典的なコンピューターでは事実上不可能な計算を、量子コンピューターが短時間でこなせる段階に一歩近づいたことになります。
キーワード:量子優位性とは何か
今回の成果は、超伝導量子システムにおける「量子計算優位性(量子優位性)」の新記録として位置づけられています。量子優位性とは、ある特定の計算課題について、最も強力なスーパーコンピューターよりも量子コンピューターの方が圧倒的に速く解ける状態を指します。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 対象となるのは、すべての計算ではなく「特定の課題」(ここでは量子ランダム回路サンプリング)
- 実用的なアプリケーションに直結しない場合でも、量子ハードウェアの性能を示す重要なベンチマークになる
- 各国・各チームが、この指標での「世界一」をめぐって競い合っている
何が変わる?期待される応用分野
祖冲之3.0のような超伝導量子コンピューターの性能向上は、すぐ明日から私たちの日常が一変するという話ではありませんが、中長期的には次のような分野での応用が期待されています。
- 暗号・サイバーセキュリティ:現在広く使われている暗号方式の安全性評価や、新しい暗号技術の設計
- 新素材・創薬:分子や材料の性質を精密にシミュレーションし、新薬や高性能素材の開発を効率化
- 金融・物流の最適化:膨大な組み合わせから最善の選択肢を見つける問題への応用
今回のような性能記録の更新は、こうした将来の実用化に向けて「ハードウェアの限界をどこまで押し上げられるか」を示す節目といえます。
量子コンピューター国際競争の現在地
量子コンピューターをめぐっては、中国本土、米国、欧州、日本などが国家レベルの研究開発プロジェクトを展開し、テクノロジー競争の重要なフロンティアの一つとなっています。
グーグルやIBMなどの企業グループ、各国の大学・研究機関がそれぞれ異なる方式や設計で成果を発表する中で、祖冲之3.0の登場は、超伝導方式の分野における中国本土の存在感を一段と高めるものとなりました。
私たちが今、押さえておきたいポイント
通勤時間やスキマ時間でニュースをチェックする読者の皆さん向けに、今回のニュースの「押さえどころ」をまとめます。
- 祖冲之3.0は、超伝導量子コンピューターの新しいプロトタイプであり、量子ランダム回路サンプリングで記録的な速さを達成した
- 世界最速級のスーパーコンピューターより約1000兆倍、グーグルの2024年の結果より約100万倍速いと報告されている
- 量子優位性の指標で中国本土が新たなベンチマークを示し、国際的な量子技術競争はさらに激しさを増している
- 実用化まではなお時間がかかるものの、暗号、材料、金融など幅広い分野への応用に向けた基盤技術として重要な一歩となる
量子コンピューターは、まだ「未来の技術」という印象が強い分野ですが、今回の祖冲之3.0のようなニュースは、その未来が少しずつ現実に近づいていることを示しています。今後の各国・各地域の動きにも注目していきたいところです。
Reference(s):
'Zuchongzhi 3.0' launched: China sets new quantum computing benchmark
cgtn.com








