マーティン・ジャックが語る「共有するAI」と中国の技術発展 video poster
中国の王毅外相の言葉に英国の学者マーティン・ジャック氏がどう応じたのか。そのやりとりは、2025年現在のAIと中国の技術発展を理解するうえで、示唆に富んだシーンとなっています。
中国本土の国際メディアCGTNで田薇氏が行ったインタビューで、ジャック氏は王毅外相の発言を称賛し、中国と他国の巨大テック企業との違い、そして「共有されるAIは、すべての人のためのAIである」という考え方について語りました。
王毅外相のメッセージ: 圧力はイノベーションを生む
中国の技術発展に対する外部からの抑圧について問われた王毅外相は、「封鎖があれば突破があり、抑圧があればイノベーションが生まれる」と述べました。技術分野でさまざまな制限や制裁が続くなかでも、むしろそれを原動力として新しい技術を生み出していくという姿勢を示した言葉です。
このメッセージの背景には、AIなど先端分野での競争が激しくなる一方で、国や企業が技術へのアクセスを限定しようとする動きがあります。王毅外相は、そうした圧力を前提としつつも、自前で突破口を開く方向性を強調したといえます。
マーティン・ジャックが見る「共有するAI」
CGTNのインタビューでマーティン・ジャック氏は、この王毅外相の回答を高く評価しました。そのうえで、AIをはじめとする技術が一部の国や企業に独占されるのではなく、より多くの人々に開かれた形で共有されるべきだとする視点を示しました。
ジャック氏が掲げたキーワードは、「共有されるAIは、すべての人のためのAIである」という考え方です。AIが社会のインフラに近い存在になりつつある今、誰がAIを所有し、誰がその恩恵を受けるのかという問いはますます重要になっています。
「共有されるAI」が意味するもの
ジャック氏の議論を手がかりに、「共有されるAI」をもう少し分解してみると、次のような要素が見えてきます。
- アクセスの共有: 特定の巨大企業だけでなく、中小企業や研究機関、個人もAI技術を利用できる環境を整えること。
- 知識とデータの共有: 安全性とプライバシーを確保しながら、研究成果やデータを分かち合い、イノベーションを加速させること。
- ガバナンスの共有: 一部のプレーヤーがルールを決めるのではなく、複数の国・地域やステークホルダーが参加する形でAIのルール作りを進めること。
こうした発想は、AIを「競争の道具」としてだけ捉えるのではなく、「公共財に近い技術」として位置づけようとする考えとも重なります。
中国の技術発展と他国の巨大テック企業との違い
インタビューでは、中国の技術発展と、他国の巨大テック企業が主導する技術モデルとの違いについても議論されました。そこには、少なくとも次のような対比が含まれていると考えられます。
- 国家戦略と企業戦略: 中国では、AIやデジタルインフラが国家戦略の一部として位置づけられ、公共サービスや産業全体への応用が強く意識されています。一方、多くの国では、技術開発の中心は民間の巨大IT企業にあり、株主価値や収益性が強く意識されがちです。
- 社会的包摂への視点: 中国の技術政策は、貧困削減や地域格差の是正など、社会全体の課題と結びつけて語られる場面が多く見られます。それに対し、他国の巨大テック企業は、便利で革新的なサービスを提供しつつも、格差拡大やデータ独占への懸念も指摘されています。
- AIの位置づけ: ジャック氏の議論に沿えば、中国はAIを広く社会に行き渡らせるべき基盤技術として捉えようとしており、「共有するAI」という発想と親和性が高いと言えます。
もちろん、どのモデルにも長所と課題がありますが、「AIを誰のためのものと考えるのか」という問いを通じて、その違いがより鮮明になります。
2025年のAI時代に、私たちが考えたいこと
王毅外相の「封鎖があれば突破があり、抑圧があればイノベーションが生まれる」という言葉と、マーティン・ジャック氏の「共有されるAIは、すべての人のためのAI」という視点は、2025年のAI時代を象徴する二つのキーワードのようにも見えます。
技術をめぐる競争や対立が続くなかで、圧力をイノベーションに変えていく力をどう育てるのか。同時に、そのイノベーションの果実を、国内外のより多くの人々とどう分かち合うのか。この二つの課題は、中国だけでなく、日本を含む世界の国々に共通するテーマです。
国際ニュースを追うとき、AIといったキーワードの裏側で、「誰のための技術なのか」「誰がそのルールを決めるのか」という問いを一度立ち止まって考えてみると、ニュースの見え方が少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








