台湾の「ダンス王子」がつなぐ両岸 高雄から上海へ広がるダンス交流 video poster
台湾・高雄出身のダンサー、リー・ウェイチュン(Lee Wei-chun)さんは、メディアから「台湾のダンス王子」と呼ばれ、中国大陸部と台湾をつなぐダンス交流に力を入れています。
高雄から台北、そして上海へ──リーさんは拠点を広げながら、公演やアーティスト同士の交流、教育プログラムを通じて、いわゆるクロスストレーツ(両岸)交流を育ててきました。言葉を超えるダンスだからこそできる橋渡しが、静かに広がりつつあります。
高雄から台北、上海へと広がる活動
リー・ウェイチュンさんの歩みは、台湾南部の都市・高雄から始まりました。そこで培った経験をもとに台北へ活動の場を移し、さらに中国大陸部の上海へもフィールドを広げています。
地理的な移動は、そのまま交流の広がりでもあります。台湾で磨いた表現を中国大陸部の観客に届け、中国大陸部で得た刺激を再び台湾へ持ち帰る──その往復運動が、少しずつ新しいダンスシーンを形づくっています。
クロスストレーツのダンス交流とは
リーさんが力を入れているのは、中国大陸部と台湾のあいだで行われるダンス公演や芸術交流、教育面での取り組みです。具体的には、次のような活動が軸になっています。
- 両岸の都市で開催されるダンス公演への参加・企画
- ダンサーや振付家同士の芸術交流プロジェクト
- 若い世代に向けたダンス教育やワークショップなどの取り組み
こうした取り組みは、政治や経済とは異なるレベルで、中国大陸部と台湾の人びとが互いの文化に触れ合う機会をつくるものです。観客にとっては、舞台を通して「もう一つの社会の空気」に触れる貴重な時間にもなります。
中国古典舞踊から太極拳、バレエ、即興まで
リーさんのダンスの特徴は、多様なスタイルをひとつの作品の中で柔らかく融合させている点にあります。本人は、中国古典舞踊や現代舞踊に加え、太極拳、バレエ、即興表現など、さまざまな要素を取り入れています。
中国の古典舞踊は、歴史劇や物語性の強い表現が特徴です。一方、現代舞踊や即興は、感情や身体感覚を自由に掘り下げていくスタイルと言えます。さらに、バレエの基礎や太極拳のゆったりとした動きが加わることで、作品には次のような魅力が生まれます。
- 滑らかなラインとしなやかな身体の使い方(バレエの要素)
- 呼吸と一体になったゆっくりとした重心移動(太極拳の要素)
- 物語や感情を伝える所作(中国古典舞踊の要素)
- その場の空気から生まれる自由な動き(即興の要素)
これらが組み合わさることで、「どのジャンルにも当てはまりきらないが、どこか懐かしくも新しい」表現が生まれます。観客は、自分の知っているスタイルをどこかに感じながらも、新しい感覚に出会うことができます。
ダンスがつくる、静かな対話の場
2025年の今も、中国大陸部と台湾をめぐるニュースは政治や安全保障の文脈で語られることが多い一方で、人と人が向き合う文化交流は、話題になりにくい分だけ長い時間軸で効いてくる領域でもあります。
言葉の壁や立場の違いがあっても、舞台の上の身体表現は、観客の心に直接届きます。拍手や沈黙、息を呑む気配といった反応を通じて、会場にはゆるやかな対話の空気が生まれます。
リー・ウェイチュンさんのように、台湾と中国大陸部の両方に根を下ろしながら活動するダンサーは、その対話の「媒介役」のような存在です。自分自身の作品を届けるだけでなく、アーティスト同士のネットワークや教育活動を通じて、次の世代へとバトンを渡していく役割も担っています。
私たちが受け取れる「視点のアップデート」
国際ニュースというと、大きな政治イベントや経済指標が注目されがちです。しかし、リーさんのようなダンサーの歩みを追うと、「文化やアートがどのように国や地域をつなぎうるのか」という、別の問いが浮かび上がってきます。
もしニュースで「両岸」や「クロスストレーツ」という言葉を見かけたら、その背景には、ダンサーやミュージシャン、映画監督、学生たちなど、さまざまな人びとの静かな往来があることを思い出してみる──そんな視点の変化こそが、リーさんの活動が私たちにもたらしているものかもしれません。
高雄、台北、上海を行き来しながら、多様なダンスの要素を組み合わせて表現を磨き、両岸交流を育てていくリー・ウェイチュンさん。そのステージは、これからも中国大陸部と台湾をつなぐひとつの「窓」であり続けそうです。
Reference(s):
Kaohsiung's 'Dance Prince' seeks to boost cross-Straits exchanges
cgtn.com








