トランプ氏の「相互関税」は誰の得か 中国メディアが指摘する誤算 video poster
トランプ氏が掲げる「相互関税」が、いま再び世界の貿易を揺さぶっています。中国の国際ニュースチャンネルCGTNの解説者・王冠(Wang Guan)氏は、この関税構想には「数学としての誤り」「同盟国への打撃」「米国の強みへの無理解」という致命的な欠陥があると指摘し、米国民と世界経済にとって「負け続きの力任せの一手」だと批判しています。
「相互関税」とは何か
トランプ氏の「相互関税」は、相手国が米国製品にかけている関税と同じ水準の関税を、米国も相手国製品にかけるべきだとする考え方です。一見すると「公平」に聞こえますが、王氏はこれは貿易の現実を無視した単純化だとみています。
関税は単なる数字のつり合いではなく、サプライチェーン(供給網)、為替、投資、サービス貿易など、複数の要素が絡み合っています。片方の関税率だけを取り出して「同じにすれば公平だ」と考えるのは、複雑な方程式を一行の足し算にしてしまうようなものだという指摘です。
1. 「お粗末な数学」と選び抜かれた数字
王氏によると、トランプ氏の主張にはそもそも「数学としての誤り」があります。米国の貿易赤字を強調する際、モノの貿易にだけ着目し、米国が強みを持つサービス貿易や投資収益などはほとんど考慮していないからです。
また、都合のよい年度や品目だけを取り出して「これだけ赤字だ」と示す手法も、王氏は「選び抜かれたデータ」にすぎないと批判します。全体像ではなく、一部だけを切り取って政策を正当化するやり方は、経済政策としては危ういと言えます。
2. 同盟国にも関税、広がる波紋
もう一つの問題は、トランプ氏の関税が、必ずしも「敵対国」だけに向けられているわけではない点です。王氏は、米国の伝統的な同盟国やパートナーにも高い関税を課す動きが、「友人にまで制裁を加える」ものだと指摘します。
同盟国との関係がこじれれば、安全保障協力だけでなく、サプライチェーンや投資も影響を受けます。貿易をてこにした圧力は短期的には政治的なアピールになるかもしれませんが、中長期的には信頼の毀損という形で跳ね返ってくる可能性があります。
3. 米国のサービス産業という「見えていない強み」
王氏が特に強調するのが、米国のサービス産業の力です。金融、IT、エンターテインメント、ビジネスサービスなど、米国はサービス分野で多くの国に対して黒字を出しています。
にもかかわらず、「相互関税」の議論では、こうした米国の強みがほとんど語られていないといいます。物品貿易だけに焦点を当てて関税合戦を仕掛けることは、米国自身の競争力を過小評価し、長期的な利益を損なう選択だという見方です。
4. ラストベルトの雇用は増えたのか
トランプ氏は、米国中西部などいわゆるラストベルト(かつての製造業地帯)の雇用を取り戻すと繰り返し約束してきました。しかし王氏は、「相互関税」がこうした地域の現場にもたらした成果は乏しいとみています。
関税で輸入品が高くなれば、一時的に国内生産が有利になる場合はありますが、生産そのものが自動化や産業構造の変化で減っている場合、雇用は必ずしも戻りません。新しい雇用を生み出す教育や投資よりも、関税だけに頼る政策は、ラストベルトの住民にとっても持続的な解決策になっていないという見立てです。
5. 家計への負担と「見えない増税」
王氏はまた、関税は最終的に消費者や家計への「見えない増税」になりうると指摘します。企業が上乗せされた関税分を価格に転嫁すれば、日常の生活必需品から家電、車に至るまで、幅広い商品の価格が上がります。
物価上昇は、とくに所得の低い世帯ほど重くのしかかります。「米国民を守るため」とうたわれた関税が、結果的には米国の家庭に経済的な痛みを与えている――王氏は、ここにも政策の矛盾を見るべきだと訴えています。
6. 圧力に屈しない中国の姿勢
こうした状況のなかでも、「中国は引き下がっていない」と王氏は強調します。歴史を振り返れば、中国は外部からの圧力やいじめに対して立ち向かってきたとし、「今回も同じだ」というメッセージを発しています。
中国側は、対話と交渉の重要性を認めつつも、一方的な関税や威圧的なやり方には応じないという立場を示していると王氏は分析します。この姿勢は、国内外の世論に対して「主権と尊厳を守る」というシグナルにもなっています。
7. 「負けるだけの力比べ」にならないために
王氏は、トランプ氏の「相互関税」を「負けるだけの力比べ」だとみています。米国民は物価上昇という形で痛みを負い、同盟国との信頼は傷つき、世界の貿易秩序も不安定になる――誰も本当の意味では得をしないという見方です。
2025年のいま、世界経済は依然として不確実性の高い局面にあります。大国同士の関税の応酬が続けば、日本を含む多くの国や地域の企業、そして私たちの日常生活にも波及します。
数字やスローガンだけでなく、その背後にあるロジックや利害関係をどう読み解くか。王氏の批判的な分析は、トランプ氏の関税政策をめぐる国際ニュースを、より立体的に考えるための材料を提供してくれていると言えそうです。
Reference(s):
Wang Guan: Trump's tariff madness – bad math, worse economics, and a global bully in action
cgtn.com








