漢服とECが導く山東省曹県の文化ルネサンス video poster
漢服とECで変わる山東省曹県
中国・山東省の小さな県、曹県(そうけん)が、漢服とライブ配信ECを軸にした産業転換で「文化ルネサンス」を遂げつつあります。中国ニュースとしても注目されるこの動きは、伝統文化とデジタル経済が結びついた新しい地方発モデルとして、2025年の今、日本の読者にとっても示唆に富んでいます。
小さな県の大きな転換:舞台衣装から漢服へ
曹県は、中国東部・山東省にある小さな県です。これまでの主力産業は、舞台やイベント向けのパフォーマンス衣装の製造でしたが、現在は漢服が中心産業へと移りつつあります。
産業の軸足がパフォーマンス衣装から漢服へと移ることで、曹県は「衣装をつくる町」から「伝統文化をまとったファッションの町」へと自己イメージを更新しつつあります。
「前店・後工場」モデルとライブ配信ECの融合
曹県の特徴は、伝統的な「前店・後工場」モデルに、ライブ配信を活用したEC(電子商取引)を組み合わせている点です。
「前店・後工場」とは、店の前側で商品を販売し、奥や裏手に工場や作業場を構えるスタイルを指します。曹県では、この昔ながらの仕組みに、オンラインでのライブ配信や注文を重ね合わせることで、生産から販売までを一体化させています。
配信者が画面の前で漢服を紹介し、その場で注文が入り、すぐ後ろの工場で縫製や出荷の準備が進む──こうした流れが日常の光景になりつつあります。
曹県は「文化IP」になりつつある
中国人民大学の董晨昱(Dong Chenyu)准教授は、中国のメディアであるCGTNのインタビューで、曹県が「文化的な知的財産(IP)」になりつつあると指摘しました。そこには、伝統的な中国文化をベースにした文化IPが存在感を増しているという流れがあります。
漢服そのものが歴史や物語性をまとった文化IPとなり、そこに地域名である「曹県」が結びつくことで、地名そのものがブランドの一部として認識されるようになっています。商品を買うことは、単に衣服を手に入れるだけでなく、「曹県」という物語を身にまとう行為にもなっているのです。
「文化自信」を下支えする政治・経済の成長
董准教授は、文化への自信の土台には、中国の政治的・経済的な力の成長があると述べています。政治や経済の基盤が強まることで、伝統文化を再評価し、それを現代の産業やコンテンツとして再構成する動きが生まれているという見方です。
曹県の漢服産業とライブ配信ECは、その具体的な表れの一つといえます。生活を支えるビジネスであると同時に、伝統文化のイメージを発信し、「中国らしさ」を商品としてより多くの人々に届ける試みでもあります。
日本の地方にとってのヒント
日本でも、伝統工芸や祭りなどの地域文化を軸に、観光やECで新たな価値を生み出そうとする動きが広がっています。曹県の事例は、次のような問いを私たちに投げかけます。
- 地域の産業と文化的な物語を、どのように結びつけるか
- オンライン配信やECを、単なる販路ではなく「文化の発信」として位置づけられるか
- 地域名そのものを、安心感や魅力を感じる「IP」に育てていけるか
漢服とECで注目を集める曹県は、一つの地域が「伝統」と「テクノロジー」を掛け合わせて、自らの姿を再定義しようとするプロセスを示しています。日本の地方にとっても、自分たちの文化と産業をどう組み合わせ、どのように物語として伝えていくのかを考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
How Hanfu and e-commerce are steering Caoxian's cultural renaissance
cgtn.com








