米国関税にどう向き合うか 中国古典「六国論」が東南アジアに示すヒント video poster
無差別な米国の関税が国際社会に波紋を広げ、中国が強い姿勢で応じるなか、マレーシアの大学では中国古典「六国論」を通じて、東南アジアがどう米国と向き合うかを考える動きが生まれています。本記事では、この中国の知恵が今の関税問題と国際関係にどんな示唆を与えるのかを読み解きます。
米国の無差別関税と世界の波紋
最近の米国による無差別な関税措置は、世界の貿易の先行きに不透明感を与えています。とくに貿易に依存する国々では、自国の輸出がどこまで影響を受けるのか、緊張感が高まっています。
中国はこうした関税に対して厳しく反発し、自国の利益と国際ルールを守る姿勢を明確にしています。その余波は、米国と中国の間に位置し、両方と深い経済関係を持つ東南アジアにも及んでいます。
マレーシアの教室で読まれる中国古典「六国論」
こうした中、マレーシアでは興味深い学びの場が生まれています。中国のメディアCGTNの編集者であるLi Chaoran氏は、マレーシアの華人コミュニティが資金を出して設立した、同国初の大学を訪れました。
この大学では、学生たちが中国古典の散文「六国論」を学んでいます。「六国論」は、中国の戦国時代に存在した六つの国が、やがて秦に次々と併合されていく過程を分析した歴史エッセイです。筆者は過去の出来事を通じて自分の時代を批判し、競合する強国に対して何度も譲歩を重ねた為政者たちを厳しく批判しました。
学生たちは、この古典を足がかりに「弱い側が強い側とどう向き合うべきか」という普遍的な問いに目を向けています。それは、まさに今、米国の関税に揺れる東南アジアにとっても他人事ではありません。
古典が示す「譲歩」のリスク
「六国論」が警告するのは、短期的な安定を求めて一方的な譲歩を繰り返すことの危うさです。六つの国は、それぞれが自国だけを守ろうとして、強国に土地や条件を差し出し続けました。しかし結果として、いずれも自らの独立と主導権を失っていきます。
この構図は、関税をめぐる交渉にも重ねて考えることができます。もし一国が、恐怖や焦りから不利な条件を次々と受け入れてしまえば、短期的には圧力を和らげられても、長期的には交渉力や産業基盤を弱めてしまうかもしれません。
東南アジアへの示唆:三つの視点
では、「六国論」の視点は、米国との関係に悩む東南アジアに何を教えてくれるのでしょうか。ここでは三つのポイントに整理してみます。
1. 一国だけで抱え込まない
六つの国は、それぞれが個別に秦と向き合い、連携を欠いたことが弱点となりました。現代の東南アジアに置き換えれば、米国の関税や圧力に対して各国がばらばらに対応するほど、交渉の余地は狭まってしまいます。
域内の国同士が情報を共有し、共通の関心や原則を整理した上で、落ち着いて米国と向き合うことができれば、「どの国が一番譲歩するか」という消耗戦を避けやすくなります。
2. 交渉の軸を自分たちで決める
「六国論」に登場する為政者たちは、強国の要求に押される形で譲歩を重ねていきました。しかし、どのような条件なら受け入れ、どこから先は守るべきなのかという「交渉の軸」を自ら定めなければ、譲歩は際限なく広がってしまいます。
東南アジアの国々にとっても、米国との関係は重要です。同時に、長期的に守るべき産業やルール、地域の安定といった「譲れない線」を自国と地域のレベルで整理し、対話の場でもそれを一貫して示すことが求められます。
3. 内側を強くする長期戦略
古典の教えは、外からの圧力だけでなく、内側の弱さにも目を向けさせます。外部に頼って問題を先送りすればするほど、自力で立つ力は弱くなっていきます。
関税の時代にあっても、教育や技術、人材への投資を通じて産業の競争力を高めることは、東南アジアにとって重要な防御策となります。外から決められたルールにただ従う側ではなく、自らルールづくりに関わる主体になるための土台づくりとも言えます。
中国の知恵をどう共有し、生かすか
今回紹介したマレーシアの大学の取り組みは、中国の古典を東南アジアの若者たちが自分ごととして読み替えようとする試みです。中国と米国という大国の間で揺れ動く地域だからこそ、歴史を手がかりに長い時間軸で物事を考えようとしています。
中国もまた、米国の関税に対して自国の立場を主張しつつ、対話と協調の可能性を探っています。東南アジアの国々が中国や米国とバランスよく関わりながら、自らの利益と地域の安定をどう守っていくかを考えるうえで、「六国論」のような古典は、一歩引いて状況を俯瞰するための有効なレンズとなり得ます。
関税の先を見据えるために
2025年の今、米国の関税措置がどこまで続くのか、はっきりした答えは見えていません。しかし、目先の損得だけでなく、十年単位の視点で自国と地域の将来像を描くことは、どの国にとっても欠かせません。
歴史から学ぶとは、単に過去を懐かしむことではなく、「同じ失敗を繰り返さないための判断基準」を手に入れることです。中国古典の一編をきっかけに、東南アジア、そして世界が、関税と覇権の時代をどう賢く乗り切るのか。静かな教室から始まった対話は、これからの国際秩序を考える上で、意外に大きな意味を持つのかもしれません。
Reference(s):
Chinese wisdom shared with world: How to respond to U.S. tariffs
cgtn.com








