カナダ人監督が語る中国映画ファン 若くて賢い観客の力 video poster
カナダの映画監督ソフィー・デラップが新作ドラマ『Shepherds(Bergers)』を携えて初めて中国を訪れ、第15回北京国際映画祭のコンペティション部門「天壇賞」に参加しました。彼女は中国の映画観客を「若くて賢い」と評し、作品に込めたメッセージを語っています。
本記事では、この国際ニュースとして注目される北京国際映画祭での動きを、日本語ニュースとして分かりやすく整理しながら、デジタル世代の読者が共感しやすい視点で追いかけます。
第15回北京国際映画祭で注目の『Shepherds』
デラップ監督の『Shepherds(Bergers)』は、存在とは何か、人間は自然とどう向き合うのか、現代の都市生活は私たちをどこへ連れていくのかといったテーマを静かに問いかけるドラマ作品です。今年開催された第15回北京国際映画祭のメインコンペティション「天壇賞」に選出され、国際的な注目を集めています。
作品の軸となるテーマは、おおまかに次の三つに整理できます。
- 生きる意味や居場所をめぐる「実存的な問い」
- 人間と自然との関係性、距離の取り方
- 現代の都市生活がもたらす疎外感や空虚さ
タイトルの『Shepherds(羊飼いたち)』という言葉には、自然のそばで生きる人々の姿と、それに対照的な都市の生活リズムが重ね合わされています。観客は、どの場面で自分自身の生活と重ねるかによって、見え方が変わるタイプの作品と言えます。
「若くて賢い」中国の映画観客
今回、中国本土を初めて訪れたデラップ監督は、CGTN Digitalの記者である李一美(Li Yimei)氏のインタビューに応じ、中国の映画観客について「若くて賢い」と印象を語りました。
彼女が特に強く感じたのは、観客の反応の「解像度の高さ」です。物語の細部や映像表現、登場人物の心情の変化にまで踏み込んだ問いかけが多く、単に楽しむだけでなく、自分の生活や社会の状況と結びつけながら作品を読み解こうとする姿勢が目立ったといいます。
また、中国の映画ファンの多くが若い世代でありながら、国際的な作品にも抵抗なく向き合っている点も印象的でした。ストリーミングサービスやSNSを通じて世界中の映画に触れている世代ならではの、柔軟でオープンな受け止め方が感じられます。
自然と都市、そして観客自身へと向かう問い
『Shepherds』は、自然の世界と都市の世界を対比させながら、「私たちはどこで、どのように生きたいのか」という普遍的な問いを投げかけます。これは特定の国や地域に限られたテーマではなく、急速に変化する世界の多くの都市が共有している感覚でもあります。
観客は、次のような視点から作品を受け止めることができます。
- 忙しい都市生活のなかで、何を手放し、何を守りたいのか
- 自然との距離が広がることで、心のどこかが置き去りになっていないか
- 効率や成長を優先する社会で、人間らしさをどう保つのか
デラップ監督は、正解を一つに絞り込むのではなく、観客一人ひとりが自分の答えを探していくための「余白」を作品のなかに残しています。その余白にこそ、国や文化の違いを超えて対話が生まれる余地があります。
中国の観客へのメッセージ
インタビューのなかでデラップ監督は、中国の観客に向けて、作品をきっかけに自分自身と環境との関係を見つめ直してほしいという思いを語っています。自然との距離、家族やコミュニティとのつながり、都市での働き方や生き方など、それぞれの生活の中で問いを持ち続けることの大切さを強調しました。
『Shepherds』は、派手なアクションや分かりやすい答えを提示する作品ではありません。しかし、その静かなテンポや余白のある構成は、忙しい日常から一歩離れて、自分の時間と感情を取り戻すための「小さな避難場所」のように機能します。
監督が「若くて賢い」と表現した中国の映画ファンにとって、この作品は単に消費して終わるコンテンツではなく、観賞後も頭の片隅に残り続ける「長い問い」になるかもしれません。
国際映画祭がひらく静かな対話
北京国際映画祭のような場では、作品そのものだけでなく、監督と観客、そして異なる国や地域の映画人同士の対話が生まれます。今回の『Shepherds』とデラップ監督の来訪は、カナダと中国、さらには世界各地の観客をつなぐ一つの小さな橋となっています。
国際ニュースとして報じられる映画祭の出来事は、遠い世界の話に見えるかもしれません。しかし、そこで交わされる問いやまなざしは、スマートフォン越しにニュースを読む私たちの日常とも静かにつながっています。若い世代の観客が、国境を超えた作品を通じて自分の生き方を考え始めるとき、映画祭は単なるイベントではなく、「未来の見方」を育てる場としての意味を帯びてきます。
中国の若くて賢い観客と向き合ったデラップ監督の経験は、映画が今もなお、人と人、地域と地域をつなぐ強いメディアであることをあらためて示しています。
Reference(s):
Canadian director: Chinese film audiences are young and clever
cgtn.com








