米国関税は「全員損」に 上海モーターショーで独自動車業界トップが警鐘 video poster
米国の関税政策は、結局だれの利益にもならない——。中国本土・上海で開かれた第21回上海モーターショーで、ドイツ自動車工業会(German Association of the Automotive Industry)のヒルデガルト・ミュラー会長は、米国による自動車関連の関税が「関係するすべての当事者に損失をもたらす」と警鐘を鳴らし、交渉を通じた解決を呼びかけました。
上海モーターショーで語られた「関税リスク」
2025年に開催された第21回上海モーターショーには、世界の自動車メーカーやサプライヤーが集まりました。中国の国際メディアCGTNの単独インタビューに応じたミュラー会長は、自動車産業が国境を越えて深く結びついているからこそ、一国の関税措置が広範囲に波及すると指摘しています。
米国関税が自動車産業にもたらす影響
ミュラー会長は、米国の関税が自動車産業にもたらす影響について説明し、産業全体が受ける負担の大きさを強調しました。代表的な影響としては、次のような点が挙げられます。
- 完成車や部品にかかる追加コストが増え、最終的に消費者価格や需要に影響すること
- 国や地域ごとに異なる関税が導入されることで、生産拠点や物流の再編を迫られること
- 将来の貿易ルールが読みづらくなり、企業の投資や研究開発の判断が難しくなること
こうした変化は、米国や欧州だけでなく、世界中の自動車関連企業や労働者に波及していきます。
なぜ「全員が損」なのか
関税は一見すると国内産業を守る手段に見えますが、輸入品だけでなく輸出産業にも跳ね返ります。ミュラー会長は、部品調達や販売市場が複数の国や地域にまたがる現代の自動車ビジネスでは、一方的な関税引き上げは最終的にメーカー、サプライヤー、消費者のいずれにも負担を強いる構図になると強調しています。
交渉と対話による解決を提案
そのうえでミュラー会長は、貿易摩擦をエスカレートさせるのではなく、関係国が交渉の場に戻り、合意可能な解決策を探るべきだと訴えました。関税をめぐる不透明感が長引けば、企業は長期戦略を描きにくくなり、雇用や投資にも悪影響が出かねません。安定したルールと予見可能な環境こそが、企業にとっても労働者にとっても重要だというメッセージです。
日本の読者にとっての論点
自動車産業は、日本経済にとっても重要な柱の一つです。今回の発言は日本企業に直接向けられたものではありませんが、世界市場で活動する企業に共通する課題を映し出しています。日本の読者が押さえておきたいポイントとしては、次の3点が挙げられます。
- 一国の関税政策が、サプライチェーンを通じて世界の企業と雇用に波及しうること
- 国際的な展示会や見本市は、企業や業界団体が懸念を共有し、対話を呼びかける重要な場となっていること
- 短期的な保護措置よりも、長期的なルールづくりと交渉の枠組みが、産業の安定に不可欠であること
これから注視したい動き
今後、自動車や関連製品をめぐる関税や通商政策について、各国の動きがどのように変化していくのかが注目されます。同時に、自動車メーカーやサプライヤーがサプライチェーンや投資計画をどう見直し、持続可能なビジネスモデルを築いていくのかも重要な論点です。上海モーターショーの会場から発せられたミュラー会長のメッセージは、貿易をめぐる緊張が続くなかで、対話と協力の必要性を改めて問いかけるものだと言えるでしょう。
Reference(s):
Müller: U.S. tariffs to lead to losses with all parties involved
cgtn.com








