関税が上がっても…? アメリカ製に「上乗せ」しない消費者たち video poster
関税が上がっても…? アメリカ製に「上乗せ」しない消費者たち
最近の関税引き上げが続くなか、アメリカでは「国内回帰」や「Made in USA」を掲げた政策や議論が高まっています。しかし、実際の消費者はどこまで「アメリカ製」にお金を払うつもりがあるのでしょうか。
シャワーヘッドブランド「Afina」を運営する創業者で CEO のラモン・ヴァン・メア氏が行った小さな調査は、そのギャップを象徴する結果になりました。彼が販売する 129 ドルの浄水シャワーヘッドは現在、中国本土で製造されていますが、関税の高騰を受けてアメリカ国内への生産移管を検討しました。
そこで同氏は、消費者に「アメリカ製なら、いくらまでなら余分に払うか」を尋ねる市場調査を実施しました。その結果は意外なものでした。追加料金を払ってでもアメリカ製を選ぶと答えた人は、ひとりもいなかったのです。
ケースのポイント:Afina の市場調査で何がわかったか
129ドルのシャワーヘッドと生産拠点のジレンマ
Afina の浄水シャワーヘッドは、1 個 129 ドルという決して安くはない価格帯の製品です。現在は中国本土で製造されており、コスト面では国際的なサプライチェーンのメリットを享受しています。
一方で、関税の上昇はコスト構造を圧迫し、アメリカ国内での生産に切り替える選択肢も現実味を帯びてきました。国内生産にすれば、物流や政治リスクの一部を減らせる可能性があるからです。
「アメリカ製なら高くても買う」は本当か
そこでヴァン・メア氏は、実際の顧客に対して「アメリカ製バージョンに、いくら上乗せして払うか」を調べました。いわば、「愛国的消費」と「財布の紐」のどちらが強いかを確かめるテストでした。
結果は明快です。誰ひとりとして、追加料金を払うことを選ばなかったのです。口頭では「アメリカ製を応援したい」と語る人がいても、具体的な価格差を前にすると、多くの人はやはり価格を優先するという現実が浮かび上がります。
消費者心理:ブランドよりも「分かりやすい価値」
今回のケースから見えるのは、次のような消費者心理です。
- 価格への敏感さ:129 ドルという水準からさらに値上げとなると、「機能が同じなら少しでも安い方を選びたい」という考えが働きやすくなります。
- 「アメリカ製」のメリットが見えにくい:安全性や品質が同じだと感じている場合、「原産国がアメリカ」という理由だけでは、追加料金の根拠が弱くなります。
- 中国本土製造への慣れ:多くの日用品や家電が中国本土で作られている現在、消費者にとってそれはごく普通の選択肢となっており、特別な不安を感じない人も少なくありません。
「どこで作られたか」よりも、「いくらで、どれだけ役に立つか」。消費者が判断するときの優先順位が、あらためて確認されたと言えるでしょう。
関税時代のサプライチェーン戦略に投げかける問い
関税の引き上げは、企業に生産拠点の見直しを迫ります。しかし、そのコストを最終的に負担するのは誰かという問いは、常につきまといます。今回の Afina の調査は、「消費者が価格上昇を受け入れないのであれば、企業がその分を吸収できるのか」という厳しい現実を示しています。
企業にとっては、次のような戦略的な選択が求められます。
- 関税によるコスト増を前提に、既存のサプライチェーンを維持する
- 一部だけでも生産を国内や第三国に移し、リスク分散を図る
- 機能やデザインを高付加価値化し、「高くても欲しい」ブランドを目指す
ただ、「Made in USA」というラベルだけで価格を大きく引き上げるのは、消費者の現実的な選好を考えると、簡単ではないことが今回の結果からわかります。
日本企業への示唆:ラベルより「納得感」の設計を
このニュースは、日本のメーカーやスタートアップにとっても他人事ではありません。日本国内か海外か、どこで作るかという議論は、為替や人件費、政治リスクの変化とともに常に付きまといます。
日本からアメリカ市場を狙う企業にとっても、「アメリカ製だから売れる」「日本製だから高くても買ってもらえる」といった単純な図式は通用しにくくなっている可能性があります。必要なのは、次のような工夫です。
- 価格差の理由を、素材・耐久性・アフターサービスなど具体的に説明する
- ストーリーや社会的価値(環境配慮、地域雇用など)をセットで伝える
- SNS やレビューを通じて、「高いけれど納得できる」という評価を積み上げる
消費者は「高くてもいいものを買いたい」と思いながらも、その「いい理由」が具体的に見えなければ、最終的には価格で判断します。原産国のラベルだけに頼らない価値設計が、これから一層重要になりそうです。
あなたなら、どちらを選ぶ?
同じ機能の 129 ドルのシャワーヘッドがあり、
- 中国本土製:129 ドル
- アメリカ製:より高い価格
という選択肢があったとしたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか。
関税や国際政治がニュースになる一方で、最終的に市場を動かすのは、日々のこうした小さな選択の積み重ねです。今回の Afina の調査結果は、私たち自身の消費行動を振り返るきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








