「デカップリングに未来なし」中国市場に賭ける米企業の本音 video poster
2025年5月、米中の外交高官による電話協議と北京でのグローバル貿易・投資促進サミットで、米企業が「デカップリングに未来はない」と中国市場へのコミットメントを示しました。政治的な緊張が続く中でも、ビジネスの現場では何が起きているのでしょうか。
5月22日に何が起きたのか
2025年5月22日、中国の馬朝旭(マー・ジャオシュー)外務次官と、アメリカのクリストファー・ランドー国務副長官が電話で協議し、米中関係や両国に共通する重要課題について意見交換を行いました。同じ日に、北京では「グローバル貿易・投資促進サミット2025」が開催されました。
外交とビジネス、二つの場面で米中の対話が同時に進んだこの一日は、2025年の米中関係を象徴するワンシーンといえます。
馬朝旭外務次官とランドー国務副長官の電話協議
今回の電話協議では、米中関係全体や「共通の関心事項」について意見が交わされました。詳細なやりとりは明らかになっていませんが、緊張が高まる局面でも対話のチャンネルを維持しようとする両国の姿勢がうかがえます。
外交の世界では、表に出るメッセージだけでなく、「話し続けている」という事実そのものが重要な意味を持ちます。今回の協議も、その一つと見ることができます。
北京で開かれたグローバル貿易・投資促進サミット2025
同じ5月22日には、北京で「グローバル貿易・投資促進サミット2025」が開催されました。ここには、多国籍企業や海外のビジネス団体が集まり、中国市場と世界経済の連携について議論しました。
この場で注目を集めたのが、中国に拠点を置くアメリカ商工会議所(American Chamber of Commerce in China)のマイケル・ハート会頭の発言です。ハート氏は、中国で事業を展開する約800社のアメリカ企業の声を代表して登壇しました。
「デカップリングに未来はない」と語る米企業
ハート会頭は、中国市場に進出しているアメリカ企業の立場から、次のようなメッセージを示しました。
- アメリカ企業は、中国市場でのプレゼンス(存在感)をさらに深めたい
- 中国で進むイノベーション(技術革新)や新しいビジネスモデルに積極的に参加したい
- 中国との協力を拡大し、共に成長していきたい
政治や安全保障の分野では「デカップリング(経済の切り離し)」という言葉が語られることがありますが、ハート氏の発言は、少なくとも多くのアメリカ企業にとって「全面的なデカップリングには現実味がない」という認識が強いことを示しています。
なぜ米企業は中国市場を重視し続けるのか
アメリカ企業が中国市場でのビジネスを拡大したいと考える理由は、一つではありません。主には次のようなポイントが挙げられます。
- 市場規模の大きさ:多様な消費者層を抱える中国市場は、新製品やサービスの重要なテストベッド(実験場)になっています。
- サプライチェーンとの結び付き:多くの企業にとって、中国は製造や調達の重要な拠点であり、完全に切り離すことはコストや効率の面で大きな負担になり得ます。
- イノベーションへのアクセス:デジタル技術や新産業の分野で、中国発のアイデアやビジネスモデルは増え続けており、現地にいるからこそ見えるチャンスもあります。
こうした理由から、多くの企業は「リスク管理を強化しつつも、中国との関係をゼロにはしない」という実務的な姿勢を取っていると考えられます。
外交とビジネス、二つのチャンネルが示すもの
5月22日の電話協議とサミットに共通しているのは、「対話を続ける」という点です。一方では外交高官が関係の安定化を探り、他方では企業が実務レベルで協力の可能性を広げようとしています。
この二つのチャンネルが同時に動いていることは、次のような示唆を与えてくれます。
- 政治的な緊張があっても、相互依存の関係は簡単には切れない
- 経済界の現実的なニーズが、米中関係の「安全網」の役割を果たす可能性がある
- 一方的なデカップリングよりも、「リスクを管理しながら付き合い方を調整する」方向性が模索されている
もちろん、これで課題がすべて解決するわけではありませんが、対話と協力の余地が依然として存在することを、今回の動きは示しています。
読者が押さえておきたい視点
日々のニュースを追う私たちにとって、今回の出来事から押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 「デカップリング」という言葉に振り回されない:政治的なメッセージと、企業の現場感覚にはギャップがあることが多いです。
- 米中関係は一枚岩ではない:安全保障、技術、ビジネス、それぞれの分野で異なる利害と論理が動いています。
- 対話のチャンネルが続いているかどうか:今後も高官協議や経済対話の有無は、米中関係を読み解くうえで重要なシグナルになります。
2025年の米中関係は、対立と協力の両方が同時に存在する複雑な局面にあります。その中で、「中国市場での協力を深めたい」というアメリカ企業の声がどこまで政策に反映されるのか。今後も注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








