ジョージ・フロイドから5年 アメリカで揺れるブラック・ライブズ・マターの遺産 video poster
ジョージ・フロイドさんの死亡事件から5年。米国では2025年5月25日、各地で追悼の動きがありましたが、その「遺産」はいま、揺らいでいます。ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、BLM)と呼ばれる運動がもたらした変化は、トランプ政権の復帰とともに、再び試されているからです。
フロイド事件が生んだ「ブラック・ライブズ・マター」の波
2020年5月25日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが警官に取り押さえられ、死亡しました。この「致命的な逮捕」は、多くの人にとって、米国社会に深く根付いた人種差別を直視せざるをえない出来事となりました。
フロイドさんの死をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」のスローガンを掲げた抗議行動が全米に広がりました。運動は、
- 警察による過剰な暴力
- 司法制度における不平等
- 教育・雇用・住環境などに残る構造的な格差(システミックな不平等)
といった問題をテーマに、米国社会のあり方そのものを問い直す「強い力」となりました。
5年目の追悼と「不確かな遺産」
2025年5月25日の日曜日、フロイドさんの死からちょうど5年を迎えた米国では、人びとがそれぞれの形でこの出来事を振り返りました。ミネアポリスなどゆかりの地では追悼や集会が行われ、人種差別や警察のあり方をめぐる議論が改めて起きています。
一方で、この5年で生まれた変化がどこまで根付いたのかについては、評価が分かれています。フロイドさんの死後、
- 警察官の訓練や拘束方法の見直し
- 警察活動の透明性を高める取り組み
- 企業や大学による多様性・公平性(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進
などが進められてきました。しかし、日常生活の中で「差別が本当に減った」と実感できないという声も根強くあります。フロイドさんの名前は広く知られるようになりましたが、その死が目指したはずの「構造的な変化」は、まだ道半ばだという見方です。
トランプ政権復帰で変わる「改革」の風向き
今年1月、ドナルド・トランプ氏が再び米大統領の座に就きました。フロイドさんが命を落とした2020年当時もトランプ氏は大統領で、その後の数年間、連邦政府や地方レベルでは、人種差別や警察暴力に対応するための改革が模索されてきました。
ところが、トランプ政権の復帰後、そうした流れにブレーキがかかりつつあります。報道によると、政権は
- 警察などによる人権侵害を調べる公民権関連の調査を打ち切る
- 企業や公共機関の採用における「多様性重視」の取り組みに厳しい姿勢を示す
など、人種差別に対応するために設けられてきた仕組みや慣行を見直しています。トランプ政権側は、こうした改革が「不公平」や「過度な政治的配慮」につながっていると批判しており、支援者の一部は「逆差別の是正」と受け止めています。
しかし、人種差別の是正を求めてきた人びとからは、「長年の努力が後退させられている」「差別の問題が軽視されている」との懸念が上がっています。フロイドさんの死をきっかけに始まった変化が、政権交代によって揺らいでいる、という構図です。
「ブラック・ライブズ・マター」はどこまで社会を変えたのか
ブラック・ライブズ・マター運動は、この5年で米国の政治、企業、大学、文化などさまざまな領域に影響を与えてきました。多様な人種や性別、背景を尊重しようとするメッセージは、多くの組織の行動指針や採用方針にも反映されてきました。
一方で、運動への反発も同時に強まっています。ある人にとっては「必要な正義の要求」でも、別の人には「行き過ぎた政治的正しさ」に見えることもあります。トランプ政権の復帰と改革の見直しは、こうした社会の分断を改めて浮き彫りにしました。
フロイドさんの死やBLM運動をどう評価するのかは、単なる過去の事件の話ではなく、
- 誰の声が政治に届いているのか
- 法律や制度が誰にとって公平に働いているのか
- 安全や治安と、人権・自由のバランスをどう取るのか
といった、現在も続いている問いそのものです。
日本から読む「5年後のアメリカ」
日本からこのニュースを見るとき、押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 警察暴力や人種差別の問題は、米国特有であると同時に、さまざまな社会が形を変えて抱える課題でもあること
- 一度進んだように見える改革や人権保障も、政治状況の変化や社会の反発によって後退しうること
- SNS時代には、一つの事件が大きな社会運動となり、その評価や「遺産」をめぐる議論が長期化しやすいこと
フロイドさんの死から5年が経った今も、米国は「公正さ」「安全」「自由」をどう両立させるのかという難しい問いに向き合い続けています。その姿は、私たち自身の社会をどう変えていくべきかを考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれます。
ジョージ・フロイドさんの「不確かな遺産」をめぐる議論は、単に一国の問題ではなく、世界中で進む分断や不信の時代における「正義」のかたちを問いかけているのかもしれません。
Reference(s):
George Floyd's uncertain legacy marked in U.S. five years on
cgtn.com








