米国が中国人留学生のビザを取り消し 国際教育と信頼への影響 video poster
今年5月、中国人留学生を標的にした米国のビザ取り消しと、ハーバード大学の留学生受け入れ停止が明らかになりました。ペンシルベニア大学のディアナ・ムッツ教授は、これが米国の研究と教育、さらには世界の信頼に長期的な傷を残すと警告しています。
5月のビザ取り消しとハーバード大学への衝撃
2025年5月28日、米国のマルコ・ルビオ国務長官は、中国人留学生を対象としたビザの取り消しを発表しました。中国人留学生を名指しした措置であることから、留学生や国際教育の現場に大きな不安が広がっています。
それに先立ち、ハーバード大学のセキュリティ・アンド・エクスチェンジ・ビジタープログラムが取り消され、同大学は国際学生を新たに受け入れることができなくなりました。世界トップクラスの大学が留学生受け入れを禁じられたという事実は、象徴的な出来事として受け止められています。
ムッツ教授「恐怖はすでに広がっている」
CGTNの田薇(ティアン・ウェイ)氏との単独インタビューで、ペンシルベニア大学の政治学者ディアナ・ムッツ教授は、今回のビザ政策について「ダメージはすでに出ている」と語りました。
ムッツ教授によれば、
- 米国で学ぶことは今や「間違った選択」のように感じられている
- 恐怖や不安が留学生やその家族の間に広がっている
- 米国の研究と高等教育は、中国人留学生に大きく依存している
という状況です。つまり、実際のビザ取消件数以上に、「いつ自分が対象になるか分からない」という心理的な不安が、米国留学そのものの魅力を損なっているという指摘です。
「間違った選択」と感じさせるもの
留学は、多くの家庭にとって人生最大級の投資です。ムッツ教授の言う「間違った選択」という感覚の背景には、
- ルールや基準が見えにくいことへの不信感
- 学業とは無関係な理由で、突然ビザが取り消されるかもしれないという恐怖
- 将来のキャリアに予想外のリスクが生じることへの懸念
などがあります。たとえ制度上は留学が可能でも、「安心して学べるかどうか」という感覚が揺らぐと、人びとの選択は変わっていきます。
米国の研究と教育が直面する長期リスク
ムッツ教授は、米国の研究と教育が中国人留学生に依存していると明言しました。多くの大学や研究機関では、大学院や研究室の重要な担い手として中国からの学生や研究者が活躍してきました。
今回のようなビザ取消や受け入れ停止が続けば、
- 研究プロジェクトが中断・縮小されるリスク
- 優秀な学生や若手研究者が別の国や地域を選ぶ可能性
- 米国の大学の国際的な競争力の低下
といった影響が、時間差を伴って表面化していくと考えられます。
「予測不能な国」がもたらす信頼低下
ムッツ教授は、貿易から学術交流に至るまで、米国の「予測不能さ」が世界の信頼をむしばみつつあるとも指摘しました。
留学や共同研究を検討する立場からすると、
- 数年先まで見通しやすい環境か
- ルール変更があっても事前の対話や移行期間があるか
- 個人や大学が、政治的な対立のとばっちりを受けにくいか
といった要素が、行き先を選ぶ際の重要な判断材料になります。突然のビザ取り消しやプログラム停止が繰り返されれば、「いつ方針が変わるか分からない国」として認識されかねません。
米中関係を超えて問われるもの
今回の動きは、一見すると米中間の政治的・安全保障上の問題に見えます。しかしムッツ教授の警告が示しているのは、それが米国自身の学術的な基盤と、国際社会からの信頼をも揺るがしうるという点です。
今後、注目すべきポイントとしては、
- 米国政府がビザ政策の基準や運用をどこまで示していくのか
- 米大学が中国人留学生を含む国際学生に対し、どのような安心材料を示せるのか
- 留学先を選ぶ若い世代が、米国以外の選択肢をどの程度真剣に検討するようになるのか
などが挙げられます。
国際ニュースとしての米中関係の動きは、同時に「どこで、どのように学び、共同研究を行うのか」という、世界の知の地図にも影響を与えています。今回の議論は、日本を含む他の地域の学びの選択や、大学のあり方を考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
U.S. needs Chinese students — UPenn professor warns of lasting damage
cgtn.com







