南シナ海を守るTanmen漁師たち 祖先の海と歩む12年の変化 video poster
南シナ海のニュースは、とかく「大国同士の駆け引き」として語られがちです。しかし、その海で日々を生きてきた漁師たちの視点から見ると、風景は少し違って見えてきます。中国南部・海南省のTanmen(タンメン)では、祖父母の代から続く漁の暮らしが、2013年のある出来事をきっかけに、大きな意味を帯びるようになりました。
祖先の海を守るTanmen漁師たち
Tanmenの漁師たちは、世代を超えて南シナ海とともに生きてきました。家族の物語は「陸」ではなく、「海」から始まると言ってもいいほどです。漁に出ることは、単なる生業ではなく、祖先から受け継いだ海との関係を守る行為でもあります。
彼らは魚を獲るだけでなく、日々の航海を通じて、この海が自分たちの暮らしと切り離せない存在であることを体で知っています。その積み重ねが、南シナ海における中国の主権を守るうえでも重要な役割を果たしてきました。漁船の航跡一つ一つが、海との長い歴史の延長線上にあると言えるでしょう。
2013年、船上で交わされた象徴的な瞬間
2013年、習近平国家主席がTanmenの漁船に乗り込み、無事に帰港した漁師たちを出迎えた場面は、地域にとって忘れがたい出来事となりました。国家のトップが、海から戻る一隻の漁船に足を運んだという事実は、漁師という存在が持つ重みを改めて示す象徴的な瞬間だったと言えます。
それは、海で働く人々が単に「生産者」としてではなく、南シナ海を守る重要な担い手として位置づけられていることを示した出来事でもありました。漁師たちにとっては、日々の厳しい仕事が見えないところで評価されているという実感につながったはずです。
12年後のTanmen:変わる暮らし、変わらない使命
あれから12年が経った2025年、Tanmenの海と漁師たちを取り巻く環境は少しずつ姿を変えています。気象の変化や資源管理への意識の高まりなど、漁業を続けるうえで向き合う課題は増えましたが、「祖先の海を守る」という根底の思いは変わっていません。
若い世代が受け継ぐ「海の記憶」
今のTanmenでは、かつて子どもとして船に乗っていた世代が、舵を握る立場になりつつあります。彼らは、年長の漁師から、潮の流れの読み方や危険を察知する感覚だけでなく、「なぜ自分たちはこの海に出るのか」という意味も教えられてきました。
その背景には、南シナ海が国境を越えて注目される存在となる中で、自分たちの日常が国際ニュースの舞台とつながっているという意識があります。若い漁師にとって、Tanmenで船を出すことは、家族の伝統を守ることでもあり、海をめぐる物語の当事者として生きる選択でもあります。
「守る」と「獲る」を両立させる視点
漁師にとって、海は資源の宝庫であると同時に、守るべき生活の場でもあります。南シナ海で漁を続けるためには、資源を獲り尽くさず、次の世代につなぐ視点が欠かせません。Tanmenの漁師たちは、長年の経験から、天候や魚群の変化に敏感に反応しながら、海との距離感を探ってきました。
それは、国際社会で語られる「海洋安全保障」や「持続可能な海洋利用」といった大きなテーマとも静かにつながっています。海を守るという抽象的な議論の裏側には、毎日、夜明け前に港を出る一人ひとりの漁師の判断と行動があるということを、Tanmenの事例は思い出させてくれます。
南シナ海を見る「もう一つのレンズ」として
日本を含む多くの国々にとって、南シナ海は安全保障や経済といった観点から注目される海域です。その一方で、そこで生きる人々のまなざしから海を見ると、ニュースの印象は少し柔らかく、立体的になります。
Tanmenの漁師たちの物語は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 地図上の境界線ではなく、海で暮らす人々の日常から見たとき、南シナ海はどのように見えるのか。
- 「主権」や「安全保障」といった言葉の裏側で、どんな生活の選択が行われているのか。
- 遠く離れた海の話を、自分の暮らしとどう結びつけて考えられるのか。
2013年の船上での出会いから12年が経った今も、Tanmenの漁師たちは、祖先から受け継いだ海に船を出し続けています。その静かな航跡は、南シナ海をめぐる国際ニュースを読み解くための、もう一つのレンズとなり得るのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








