中国・貴州の春ラップ 農業を歌う民俗儀礼「石阡説春」 video poster
春をラップで呼び込むユニークな民俗行事が、中国南西部・貴州省石阡県で受け継がれています。「石阡説春(シーチエン・シュオチュン)」と呼ばれるこの儀礼は、農業の知恵と24節気をリズムに乗せて歌い上げ、新しい一年に活力と幸運をもたらすとされています。
春を告げる民俗儀礼「石阡説春」とは
国際ニュースでも紹介されつつある中国・貴州省の「石阡説春」は、春の訪れを祝う民俗儀礼です。地元の人びとは年の初めに集まり、「農業101」とも言える基礎的な農作業の知恵や、伝統的な暦である24節気について歌いながら、豊作を願います。
24節気とは、立春や夏至、秋分など、一年を24の節目に分けて季節の移り変わりを示す考え方です。石阡説春では、この節目ごとにどのような作業をするか、どんな天候に気をつけるかといった内容が、親しみやすい言葉で歌われます。
台本なし、フリースタイルの「春ラップ」
この行事の特徴は、決まった台本がないことです。歌い手たちはその場の空気や思いつきを大切にしながら、即興のフリースタイルで歌詞を紡ぎます。テンポのよい言葉のやりとりは、まるでラップのサイファー(即興セッション)のようでもあります。
「種まきのタイミング」「田んぼの手入れ」「天気の読み方」など、農作業の基本がリズムに乗って次々と語られていきます。難しい専門用語ではなく、日常の言葉で歌うことで、子どもから大人まで自然と覚えられるのもポイントです。
一年の幸運を願う地域の時間
石阡説春は、単なるパフォーマンスではなく、地域の一年を占う大事な時間でもあります。歌を通じて、新しい年の豊作や家族の健康、コミュニティの安寧を祈るとされています。歌い手と聞き手が輪になって時間を共有することで、世代を超えたつながりも生まれます。
取材では、記者のYushanさんが地元の人びととともにこの行事を体験し、「一年じゅう幸運をもたらしてくれる」と語られる背景を伝えています。映像のなかでは「今は夏かもしれないけれど、この伝統を知るのに遅すぎることはない」というメッセージも添えられ、季節を超えて受け継がれる文化の力が強調されています。
なぜいま、春の歌が心に響くのか
2025年の今、私たちは季節の移ろいを頭では理解していても、毎日の生活のなかで実感しにくくなっています。スマートフォンで時間を確認し、カレンダーアプリで予定を管理する一方で、「いつ雨が多く、いつ土がやわらぐのか」といった感覚は薄れがちです。
石阡説春のように、季節と暮らしのリズムを歌にして共有する文化は、デジタル世代にとっても新鮮に映ります。リズムと即興性のある「春ラップ」は、ショート動画やSNSとも相性がよく、地域の人びとの表情や雰囲気まで含めて伝えることができます。
私たちの暮らしに引き寄せて考える
日本にも、田植え歌や盆踊り、季節のわらべ歌など、自然のリズムを声に出して確かめる文化があります。遠く離れた貴州省の石阡説春を知ることは、自分たちの足元にある季節の歌を思い出すきっかけにもなるかもしれません。
国際ニュースを通じて、他地域の行事を単なる「珍しい風習」として眺めるのか、それとも自分の暮らしを見直すヒントとして受け取るのか。そこに、ニュースとの向き合い方の違いが表れます。春を呼ぶラップのリズムに耳を傾けながら、自分のまわりの季節の声にも、あらためて目と耳を向けてみたくなる行事です。
Reference(s):
cgtn.com








