『Ne Zha 2』世界興行22億ドル突破 伝統音楽とデジタルが生む新しい神話 video poster
アニメ映画『Ne Zha 2』が、世界興行収入22億ドルを突破しました。中国本土以外での収入も1億ドルを超え、伝統文化と最新デジタル表現を組み合わせた作品が、2025年現在、世界の観客にどのように届いているのかが注目されています。
世界興行22億ドル、海外でも1億ドル超え
アニメーション作品『Ne Zha 2』の世界興行収入は、現在22億ドルに達しています。そのうち、中国本土以外の市場での収入が1億ドルを超えており、東アジア発のアニメ映画として、グローバルな支持を獲得していることがうかがえます。
言語や文化の壁がありながらも、アニメ映画がここまで世界的な成績を収める背景には、「映像」と「音楽」による物語の伝え方が大きな役割を果たしていると考えられます。『Ne Zha 2』は、その象徴的な例として位置づけられつつあります。
監督が語る「文化的DNAの再起動」
作品を手がけた監督・脚本家のJiaozi氏は、『Ne Zha 2』の制作方針について「文化的DNAをデジタル時代向けに再起動した」と語っています。この短い一言に、作品づくりのコンセプトが凝縮されています。
ここで言う「文化的DNA」とは、長い時間をかけて受け継がれてきた物語や価値観、音楽や美術のスタイルなどを指していると考えられます。それをデジタル時代に合わせて「再起動」するという発想は、単なる懐古ではなく、伝統を素材にしながら新しい表現形式へと組み替える試みです。
『Ne Zha 2』は、東洋の伝説をベースにしつつ、キャラクター表現やアクション、音楽などを通じて、現代のデジタルネイティブ世代にも届く物語として再構築していることがうかがえます。
2500年前の合唱がバトル曲に変わる
この「文化的DNAの再起動」を象徴する存在が、音楽を担当した作曲家・Yang Rui氏です。Yang氏は、約2500年の歴史を持ち、ユネスコに登録されているトン族(Dong)の合唱を大胆に取り入れました。
もともと儀礼や共同体の絆を支える歌として受け継がれてきたこの合唱を、Yang氏は『Ne Zha 2』のために「エレクトリックなバトルソング」へと変貌させました。伝統的なコーラスの厚みと、戦闘シーンの高揚感を支えるリズムが融合し、スクリーン上のアクションと強く結びつくサウンドに仕上げられています。
古代の旋律×シンセウェーブが生む「新しい言語」
『Ne Zha 2』の音楽は、古い旋律とシンセウェーブ(シンセサイザーを中心とした電子音楽)の組み合わせが大きな特徴です。トン族の合唱という、声だけで重層的なハーモニーを描く伝統音楽に、現代的な電子サウンドが重ねられることで、これまでにないサウンドスケープが生まれています。
その結果として生み出されたのは、「東洋の伝説を語るための新しい音楽言語」です。太鼓や笛といった「いかにも伝統的」な音だけに頼るのではなく、シンセサイザーやデジタルエフェクトを組み込むことで、古代と現代、地域性と普遍性が同時に響くような音楽になっています。
こうしたサウンドデザインは、伝統文化を知らない海外の観客にとっても、「かっこいい音楽」としてまず感覚的に受け入れやすい点が特徴です。そのうえで、興味を持った人が背景にある物語や文化を知っていく、という流れも期待できます。
なぜ世界の観客の心をつかんだのか
『Ne Zha 2』が、世界各地で観客の支持を集めている理由として、次のようなポイントが考えられます。
- 物語はローカル、感情はグローバル:東洋の伝説というローカルな題材でありながら、家族、成長、葛藤といった普遍的なテーマを扱っていること。
- 音楽が「翻訳者」になる:言葉がわからなくても伝わる迫力ある音楽が、物語の感情を世界の観客に翻訳していること。
- デジタル表現との相性:ゲームや動画に慣れた世代にも親和性の高いビジュアルとサウンドが、デジタルネイティブ層の好みに合致していること。
興行収入という数字の裏側には、こうした「ローカルな文化を、デジタル技術を通じてグローバルに開く」試みがあると見ることができます。
「文化的DNA」をどう受け継ぐかという問い
『Ne Zha 2』が示しているのは、単に一つのアニメ映画の成功ではなく、「文化的DNAをどう次世代につなぐか」という問いでもあります。2500年前から歌い継がれてきた合唱が、2025年の映画館でシンセサウンドとともに鳴り響き、世界中の観客に届く。そのプロセス自体が、一つの文化実験でもあります。
伝統と最新技術を対立させるのではなく、「再起動」させるという発想は、アジア各地の物語や音楽にも応用できる視点です。ローカルな文化資源を、どのような形でデジタル時代の物語に組み込むのか。『Ne Zha 2』は、その問いに対する一つの答えを、興行収入22億ドルという結果とともに提示していると言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








