イスラエル・イラン停戦で見えた世界経済「不確実性の時代」 video poster
イスラエルとイランが2025年6月24日に停戦で合意し、12日間にわたる軍事衝突はひとまず収束しました。しかし、世界経済には別の波紋が残っています。国際ニュースとしての緊張緩和の裏で、エネルギー価格や貿易ルートをめぐる「不確実性の時代」が静かに始まっているからです。
日本語で世界の動きを追う私たちは、この停戦と世界経済の変化をどう捉えればよいのでしょうか。サマーダボス2025で語られたメッセージを手がかりに整理します。
イスラエル・イラン停戦がもたらした安堵と不安
イスラエルとイランの停戦合意は、原油市場のさらなる混乱や中東発の大規模な衝突への懸念を和らげました。市場や国際社会にとっては、最悪の事態は避けられたという安堵感があります。
一方で、12日間の緊張の高まりは、エネルギーや物流がいかに地政学リスクに左右されやすいかを改めて示しました。停戦後であっても、投資家や企業は「次はいつ、どこで」不測の事態が起きるかを意識せざるをえません。
サマーダボス2025で鳴らされた警鐘
2025年に開かれたサマーダボス会合(夏季ダボス)では、タイ開発研究機構(Thailand Development Research Institute)のフューチャー・エコノミー・アドバイザー、サンティターン・サティラタイ氏が、世界経済の新たなリスクについて警鐘を鳴らしました。
サティラタイ氏は、エネルギー価格の上昇や貿易ルート寸断の可能性が高まるなかで、もっとも脆弱なのは小さなエネルギー輸入国だと指摘します。燃料や電力をほぼ輸入に頼る国ほど、価格高騰や供給不安の打撃を真正面から受けるからです。
小さなエネルギー輸入国が抱える3つの弱点
- 輸入エネルギーの比率が高く、価格上昇がそのまま物価や電気料金に跳ね返る
- 市場規模が小さく、調達交渉で有利な条件を引き出しにくい
- 通貨の信認が弱い場合、通貨安とエネルギー高が同時に進みやすい
アジアにもこうした条件に当てはまる国や地域は少なくなく、日本を含むエネルギー輸入国はこの警告を対岸の火事とは見なせません。世界経済ニュースとしての停戦は、同時に自国のエネルギー安全保障を考え直すきっかけにもなっています。
世界ビジネスは効率よりレジリエンスへ
サティラタイ氏が強調したもう一つのポイントは、企業の優先順位の変化です。これまでのグローバル経済では、「どれだけ安く、どれだけ早く」生産・調達できるかというコスト効率が最重要視されてきました。
しかし、イスラエル・イラン関係の緊張を含む一連の地政学リスクを受けて、企業は次のような方向へ舵を切りつつあります。
- 調達先や生産拠点を複数地域に分散する
- 在庫を最小限ではなく、一定の余裕を持って確保する
- 輸送ルートを一つに依存せず、代替経路を常に用意する
こうしたレジリエンス(しなやかな強さ)と多様化の重視は、不測の中断を防ぐ保険として機能する一方で、どうしてもコスト増につながります。結果として、世界中で「ビジネスを続けること自体のコスト」がじわじわと上がっていきます。
「不確実性の時代」がコストを押し上げる仕組み
リスクが高まると、企業は保険料や資金調達コストの上昇にも直面します。さらに、投資判断も慎重になり、設備投資や雇用拡大が遅れやすくなります。
サティラタイ氏は、このように不確実性そのものが世界中でビジネスのコストを押し上げる新しい時代に入ったと語りました。単にエネルギー価格が高いだけでなく、「先が読めないこと自体」が企業にとっての負担になっているという見方です。
日本とアジアの私たちはどう備えるか
国際ニュースとしての停戦の一報に安堵しつつ、日本やアジアのエネルギー輸入国が直面する課題はむしろ長期戦です。私たちにできる備えとして、次のような視点が挙げられます。
- 家庭や企業レベルでの省エネ投資や再生可能エネルギーの活用を進める
- 取引先や投資先を特定の地域に偏らせないよう、分散を意識する
- 地政学リスクやエネルギー市場の動きを継続的にウォッチし、意思決定に反映する
イスラエルとイランの停戦は、危機の一段落であると同時に、世界経済が不確実性の時代に入ったことを象徴する出来事でもあります。短期的な安心にとどまらず、構造的な変化を前提にした発想が、これからの企業戦略や個人の資産防衛にとって重要になりそうです。
Reference(s):
Israel-Iran ceasefire brings relief, but global economy enters age of uncertainty
cgtn.com








