米国は「債務発のインフレ危機」に向かうのか ロゴフ氏の警告を読む video poster
米国経済の「次のリスク」として、インフレと政府債務の関係が改めて注目されています。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、ケネス・ロゴフ氏は、米国が今後10年以内に「債務発のインフレ危機」に陥る可能性があると警告しており、世界の金融市場にとって無視できないテーマになりつつあります。
IMF元チーフエコノミスト・ロゴフ氏の警告とは
ロゴフ氏は、米国ではすでに高水準の政府債務に加え、政治的な対立や行き詰まりが続いていることから、「危機の舞台が整いつつある」と指摘しています。現在のまま抜本的な改革が進まなければ、今後10年ほどの間に、債務が引き金となるインフレ危機に陥るリスクがあると見ています。
米国は当面、さまざまな手段で負担を和らげることはできるものの、根本的な問題を解決しないまま歳出を膨らませ続ければ、「財政的な苦境」が何度も繰り返される可能性があるとロゴフ氏は警戒しています。そのような状況が重なると、市場の米国に対する信頼が薄れ、金利の上昇と債務の急増という悪循環に陥りかねないという見立てです。
債務とインフレはどうつながるのか
では、なぜ政府債務の膨張がインフレ危機につながりうるのでしょうか。ロゴフ氏の見方の背景には、次のようなメカニズムがあります。
- 政府が大きな財政赤字を続けると、国債発行が増え、債務残高が膨らみます。
- 市場が「この国は本当に返済し続けられるのか」と疑い始めると、国債を買う投資家は、より高い金利を求めるようになります。
- 金利負担が増えれば、政府の利払い費が膨らみ、さらに赤字や債務が増える可能性が高まります。
- 最終的に、中央銀行が国債を大量に買い支えるなどして財政を下支えすると、それが通貨価値の低下やインフレ圧力につながることがあります。
ロゴフ氏が懸念しているのは、こうしたプロセスが米国で段階的に進行し、インフレと金利上昇、債務増加が同時に進む「危機モード」に入る可能性です。
市場の信認が揺らぐときの悪循環シナリオ
ロゴフ氏は、特に「市場の信頼」が一度揺らいだ場合の連鎖反応を重く見ています。彼の描くシナリオを整理すると、次のような流れになります。
- 政治的な行き詰まりによって、歳出と歳入の見直しなど財政改革が進まない。
- その結果、財政赤字と政府債務が長期にわたり積み上がる。
- 「今回もなんとかなる」という期待が崩れれば、市場は米国を「信頼しにくい相手」と見なし、より高い金利を要求する。
- 金利が急上昇すると、政府の利払い負担が速いペースで増え、債務はさらに膨らむ。
- 債務拡大と金利上昇が続くなかで、インフレ懸念も強まり、通貨や資産市場が不安定になる。
ロゴフ氏は、こうした悪循環が一度本格化すると、単に一時的な景気後退にとどまらず、「繰り返し起きる財政的な苦境」が常態化しかねないと指摘しています。
なぜ日本からも米国のインフレリスクを気にする必要があるのか
米国のインフレ危機は、日本を含む世界経済にとっても重要なニュースです。ドルは依然として国際的な基軸通貨であり、米国債は世界の代表的な安全資産とみなされています。もし米国への信認が揺らげば、為替相場や株式市場、債券市場などを通じて、日本の家計や企業にも影響が波及する可能性があります。
日本の個人投資家や企業は、ドル建て資産や米国株、米国債への投資を通じて米国経済とつながっています。そのため、米国の財政やインフレの行方は、「遠い国の話」ではなく、自分の資産や仕事にも影響しうるテーマとして捉える必要があります。
ロゴフ氏のメッセージが投げかける問い
ロゴフ氏の警告は、「今すぐ米国で危機が起きる」と断定するものではありません。しかし、今後10年のどこかで、債務とインフレをめぐる構図が一気に表面化しうるという問題提起でもあります。
ここから浮かび上がる問いはシンプルです。
- 政府の債務はどこまで増やしても大丈夫なのか。
- 歳出を単に拡大するだけでなく、その「質」をどう高めていくのか。
- 政治的な対立が続くなかで、どのように長期的な財政運営の合意を形成するのか。
米国のインフレ危機は、あくまで一つのシナリオにすぎません。ただ、世界最大級の経済が「債務発のインフレ」に直面する可能性を、IMFで中心的役割を担ってきた経済学者が指摘していることは、国際ニュースとして重みがあります。
日本に暮らす私たちにとっても、米国の財政とインフレの行方を追うことは、自国の経済や個人の暮らしを考えるうえでの重要なヒントになりそうです。
Reference(s):
Economist warns U.S. may face inflation crisis triggered by debt
cgtn.com








