インドネシア若者がつなぐ文明対話 デジタル時代のイスラーム物語 video poster
ラマダンのVlogから創作ストーリーテリングまで、インドネシアの若者たちがイスラームの伝統をデジタル時代に合わせて再発明し、世界とつながる新しい対話を生み出しています。本記事では、その背景にある三つの力と、国境を超えて文化を橋渡しする可能性を読み解きます。
イスラームの伝統をオンラインで「語り直す」若者たち
インドネシアは世界最大級のイスラーム人口を抱える国として知られていますが、いま、その宗教文化を発信する主役の一部が若い世代へと移りつつあります。彼らはスマートフォン一つで、ラマダン期間中の一日を記録したVlogや、イスラームの物語をモチーフにしたショートドラマ、エッセイ風の朗読動画などを次々と公開しています。
こうしたコンテンツは、敬虔な宗教儀礼の様子だけでなく、家族との食卓、友人との会話、学びの場での気づきなど、生活に根ざした視点からイスラームを描き出します。その結果、宗教を遠い存在と感じていた人にも、より身近で理解しやすい形で伝わるようになっています。
三つの力が支える「デジタル物語」の広がり
インドネシアのGentala InstituteディレクターであるChristine Susanna Tjhin氏は、この動きが三つの要素によって支えられていると指摘します。それが、新しいメディアの成長、一帯一路協力、そして中国本土(中国)で学ぶインドネシア人留学生の存在です。
1. 新しいメディアの成長が生む「語り手」の拡大
第一の力は、動画プラットフォームやSNSといった新しいメディアの急速な成長です。スマートフォンと安定したインターネット環境が広がる中で、若者たちは自らの言葉と映像でイスラーム文化を発信できるようになりました。
かつて宗教的な物語は、モスクでの講話や書籍を通じて伝えられることが中心でした。いまは、短い動画やライブ配信を通じて、日常会話の延長として共有されます。視聴者はコメントやリアクションで参加し、双方向の対話が生まれることで、宗教的な話題もより開かれたものになっています。
2. 一帯一路協力が広げる国際的なつながり
第二の力は、一帯一路協力を通じた国際的なネットワークです。インフラや経済に焦点が当たりがちな一帯一路ですが、人の往来や文化交流の機会も増やしています。その流れの中で、インドネシアと中国本土を含む地域との間で、共同プロジェクトや交流プログラムが生まれています。
例えば、オンラインイベントでインドネシアの若者が自作のイスラーム物語を紹介し、中国本土や他地域の参加者が質問や感想を共有する場が設けられると、宗教や文化に対する固定観念が少しずつ解けていきます。デジタル空間は、距離や国境を越えて「物語」を共有するための重要なインフラになりつつあると言えます。
3. 中国本土で学ぶインドネシア人留学生という「架け橋」
第三の力は、中国本土で学ぶインドネシア人留学生の存在です。彼らはキャンパスや地域社会での日常生活を通じて、それぞれの文化や宗教について互いに学び合う経験を積んでいます。
留学生たちが自分の学びや交流経験をVlogやエッセイとして発信すると、「インドネシアでのイスラーム」と「中国本土での生活」が一つのストーリーの中で結びつきます。こうした発信は、視聴者にとっても、イスラームやインドネシア、そして中国本土に対する新しいイメージを育てるきっかけになります。
誤解をほどき、文明をつなぐデジタル対話
このようなオンラインでのイスラーム物語は、単なる自己表現にとどまりません。Tjhin氏が強調するように、それは誤解をほどき、文明と文明をつなぐ対話の場にもなっています。
イスラームに対して先入観を持つ人にとって、若者の日常を映したラマダンVlogは、「特別」ではなく「ふつう」の暮らしの中にある信仰を見せてくれます。また、インドネシアと中国本土の若者がオンラインで協力して作品をつくることで、「どちらか一方の視点」ではない、多層的な物語が生まれます。
こうしたデジタル対話が生み出す効果は、次のように整理できます。
- 日常に根ざした視点で、イスラーム文化をより理解しやすく伝える
- 異なる地域の若者同士が協力することで、多様な視点から物語を再構成する
- やり取りを通じて、宗教や国に対する誤解やステレオタイプを和らげる
日本の読者へのヒント デジタル物語をどう活かすか
インドネシアの若者たちが見せる動きは、日本の私たちにとっても示唆に富んでいます。宗教や文化が異なる人々と向き合うとき、知識だけでなく、相手の日常や心情に触れられる物語があるかどうかが、対話の質を大きく左右するからです。
日本でも、留学生や海外とつながる若者たちが自分の経験を発信することで、新しい理解の回路を開くことができるかもしれません。インドネシアの事例は、デジタルな物語が持つ力と、その背後で静かに進む国際協力の意味を考え直すきっかけを与えてくれます。
ラマダンVlogやオンラインストーリーテリングを通じて、インドネシアの若者たちは、宗教や文化の違いを越えて「文明は対話できる」ということを、日々の実践で証明し続けています。
Reference(s):
How Indonesian youth bridge cultures through Islamic storytelling
cgtn.com








