「貿易は水のように」ジョージ・ヨーが語る関税時代の国際貿易 video poster
米国のドナルド・トランプ大統領が関税をてこに各国へ圧力を強めるなか、元シンガポール外相のジョージ・ヨー氏は、中国の国際ニュースチャンネルCGTNのキャスター、シュウ・チンドゥオ(Xu Qinduo)氏との対談で「貿易は水のようなものだ。それは必ず道を見つける」と語り、揺れる世界経済の行方について独自の見方を示しました。
「相互関税」凍結は来年8月1日まで延長
現在、米国が導入を検討しているとされる「相互関税(reciprocal tariffs)」の発動は、一時停止措置が取られており、その猶予期間は来年8月1日まで延長されています。この仕組みは、米国が貿易相手国の関税水準に合わせて自国の関税を引き上げる考え方と説明されています。
こうした猶予の裏側で、トランプ大統領は複数の国に対し書簡を送り、貿易協定で合意できなければ、より高い関税を課す可能性があると警告しました。関税を交渉カードとして使うやり方は、各国の政府や企業にとって、先行きの見えにくさをいっそう高めています。
トランプ大統領の関税戦略はどこへ向かうのか
今回の動きがエスカレートすれば、世界のサプライチェーン(供給網)に新たな混乱をもたらす可能性があります。関税の応酬が続けば、企業は調達先や生産拠点の見直しを迫られ、消費者にとっては物価上昇という形で跳ね返ってくることも考えられます。
一方で、交渉の圧力を高めるための「ブラフ(駆け引き)」にとどまる可能性もあり、各国は慎重に様子を見ながら、自国経済への影響を最小限に抑える戦略を模索しています。
ジョージ・ヨー氏「米国の自信喪失が背景に」
シンガポールの元外相であるジョージ・ヨー氏は、CGTNの番組で、トランプ大統領の関税戦略の背景には、米国社会の「自信の喪失」と「不安の高まり」があると分析しました。かつて自由貿易の旗振り役だった米国が、その理想から距離を置きつつあるのは、国内の不満や格差をめぐる政治的圧力の反映だと見ているのです。
ヨー氏によれば、米国が従来の自由貿易の理念を部分的に手放しつつあるのは、世界経済での競争が激しくなり、自国の優位性が揺らいでいるとの危機感が強まっているからだといいます。
それでも「貿易は水のように」
とはいえ、ヨー氏は世界貿易の先行きについて、決して悲観していません。同氏は「貿易は水のようなものだ。それは必ず道を見つける」と強調し、たとえ一時的に関税の壁が高くなっても、企業や市場は新しい経路やパートナーを模索し、最終的にはモノとサービスの流れが再び形を変えて動き出すと指摘しました。
実際、これまでも貿易摩擦が起きるたびに、企業は生産拠点を分散したり、代替市場を開拓したりしてリスクを抑えてきました。今回も、同じように新たな投資や連携が生まれる可能性があります。
アジアと日本への含意
アジアの中で貿易に大きく依存する日本やシンガポールにとって、米国の関税政策は自国の成長戦略と直結するテーマです。関税の動き一つで為替や株価、企業の投資計画が揺さぶられるため、中長期的な視点での備えが重要になります。
とくに日本企業は、すでに生産や販売の拠点を世界各地に広げています。関税リスクが高まる局面では、
- 調達先や生産拠点のさらなる分散
- 地域ごとの需要に合わせたサービスや製品の開発
- デジタル技術を活用したサプライチェーンの可視化
といった取り組みを強化することで、外部ショックへの耐性を高めることが求められます。
私たちが押さえておきたい3つの視点
今回のジョージ・ヨー氏のコメントから、私たちが日々のニュースを読むうえで意識しておきたいポイントを3つに整理します。
- 関税は政治と経済が交差する「交渉ツール」
単なる経済政策ではなく、国内世論や選挙、地政学的な力学とも結びついていることを念頭に置く必要があります。 - 自由貿易の理念は揺らいでも、貿易自体は続く
制度やルールが変わっても、企業や人々は新しい道を探します。「貿易は水のように道を見つける」という視点は、長期的な変化を見るうえでのヒントになります。 - 個人レベルでも「分散」と「柔軟性」を意識する
投資やキャリア、ビジネスの選択でも、一つの国や市場に依存しすぎない発想が、これからの不確実な時代を生き抜く鍵となりそうです。
関税をめぐるニュースは、一見すると数字や専門用語が多く、距離を感じやすいテーマです。しかし、その背後には各国の不安と自信、そして新しい経済の流れが静かに動き始めています。ジョージ・ヨー氏の「貿易は水のように」という比喩は、そうした長い視野で世界を見てみようというメッセージでもあるのかもしれません。
Reference(s):
George Yeo: Despite disruption, trade will always find its way
cgtn.com







