スティーブン・チュー氏:中国本土と米国の科学協力に必要なのは「信頼」 video poster
地政学的な緊張が高まるなか、ノーベル賞受賞者で元米エネルギー長官のスティーブン・チュー氏が、CGTNのティアン・ウェイ氏との独占インタビューで「科学は国境を超える」と訴え、中国本土と米国の電池技術協力を政治対立から守るべきだと強調しました。
地政学的な対立が電池技術協力を揺るがすおそれ
チュー氏は、苛烈な地政学的な争いが、中国本土と米国の電池技術分野での協力を妨げる可能性があると警告しました。それは「残念なことだ」と表現し、技術協力が政治の犠牲になることへの懸念を示しました。
電池技術は、電気自動車や再生可能エネルギーの普及を支える基盤技術です。こうした分野での協力が途絶えれば、環境対策やエネルギー安全保障など、両社会にとって重要な課題への対応が遅れるおそれがあります。
- 電池技術における中国本土と米国の協力が、地政学的対立で中断されるリスク
- その結果、技術の進歩や社会の利益が双方で損なわれる可能性
- 科学協力は、長期的な信頼関係を築くための重要な土台になりうるという視点
「科学は国境を超える」 科学外交という考え方
インタビューの中でチュー氏は、「科学は国境を超える」と繰り返し強調しました。そして、国と国の関係を安定させるうえで、「信頼を築くことが鍵だ」と語り、科学者同士の協力や対話を軸にした「科学外交」の重要性を指摘しました。
ここでいう科学外交とは、おおまかに言えば次のような取り組みです。
- 共同研究や共同プロジェクトを通じて、異なる国の研究者が協力する
- 国際会議やシンポジウムで、知見をオープンに共有する
- 若手研究者や学生の交流を促し、長期的な人的ネットワークを築く
政治的な対立があっても、データや実験結果といった「事実」に基づいて議論する科学の場は、比較的感情的になりにくく、相互理解の窓口として機能しやすいとも言えます。チュー氏の主張は、そうした科学の特性を、国際関係に生かそうという提案だと受け止められます。
あらゆる「戦争」に反対 「両社会を傷つける」
チュー氏は、政治的な対立だけでなく、「冷戦」や「熱戦(軍事衝突)」を含むあらゆる形の衝突に反対する立場を明確にしています。こうした緊張は「両方の社会を傷つける」と強調し、一方だけが損をするのではなく、双方にダメージを与えると指摘しました。
この見方に立つと、対立を激化させるか、対話を重ねて緊張を和らげるかは、どの国にとっても自らの社会の将来を左右する選択になります。特に、経済やサプライチェーンが相互に結びついた現在の国際社会では、断絶よりも、リスクを管理しながら協力の糸口を探るアプローチが重要になってきます。
科学者が主導する「対話」が果たせる役割
では、科学者は何ができるのでしょうか。チュー氏は、科学者が主導する対話が、地政学的な緊張を和らげるうえで役立つと考えています。専門知とデータに基づいた議論は、短期的な政治の日程や世論の変化に左右されにくいからです。
例えば、次のような形が考えられます。
- 電池技術など共通の関心分野で、中国本土と米国の研究機関が共同研究を続ける
- 研究成果を国際的に公開し、透明性を高めることで「隠しごとがない」という安心感を生む
- 長期的な研究プロジェクトを通じて、個々の研究者同士の信頼関係を育てる
こうした「静かな対話」は派手ではありませんが、時間をかけて蓄積される信頼は、緊張が高まったときに「最後に残る連絡窓口」として機能する可能性があります。チュー氏のメッセージは、その重要性を改めて思い出させるものと言えます。
2025年の私たちへの問いかけ
今回のインタビューで示されたのは、「科学協力」と「信頼」が、国際政治の不確実性の中でどれほど大きな意味を持ちうるかという視点でした。特に、電池技術のように社会基盤となる分野では、その影響は私たちの日常生活にも直結します。
チュー氏の発言から、私たちが考えてみたいポイントを整理すると、次のようになります。
- どの分野の国際協力は、政治的な対立から切り離して守るべきなのか
- 「相手に勝つ」発想ではなく、「双方に利益をもたらす」協力をどう設計できるのか
- 専門家や市民のレベルで、国を超えた信頼を少しずつ積み上げるには何が必要か
科学は国境を超えるというチュー氏の言葉は、単なる美しい理想ではなく、緊張が続く時代における現実的な選択肢でもあります。中国本土と米国の関係に限らず、国際ニュースを追う私たち一人ひとりに、「対立」と「協力」をどうバランスさせるのかという静かな問いを投げかけているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








