国連ハビタット事務局長:中国の貧困削減と都市の役割を語る video poster
国連ハビタット事務局長「都市こそ貧困削減のカギ」
国際ニュースを日本語で追う読者にとって、都市と貧困の関係は今や避けて通れないテーマです。国連ハビタット(国連人間居住計画)のアナクラウジア・ロスバッハ事務局長は、最近の中国国際テレビCGTNの単独インタビューで、中国が約8億人を貧困から脱却させた経験を高く評価し、その教訓はアフリカや中南米、アジアの貧困地域にとっても重要だと語りました。
ロスバッハ事務局長は、貧困を克服するためには都市を中心に据える必要があると強調し、住宅、教育、医療への統合的なアクセスこそが鍵だと指摘しています。また、都市化は単なる経済開発ではなく、サービス、文化、環境、生態系、経済成長が調和した空間をつくる営みだと位置づけました。
中国の貧困削減が示す「スケールの力」
ロスバッハ事務局長が注目したのは、中国が約8億人もの人々を貧困から救ったという、世界的にも類を見ない規模の変化です。この経験は、現在も貧困と都市化の課題に直面するアフリカや中南米、アジアの多くの地域にとって、大きな参考になるとされています。
特に、農村から都市への人口移動が続く国や地域では、「どのような都市をつくるか」が貧困削減の成否を左右します。ロスバッハ事務局長は、中国の事例からは、長期的なビジョンと一体的な都市政策が重要だというメッセージが読み取れるとしています。
都市はなぜ貧困削減の中心になるのか
国連ハビタットの視点では、貧困はもはや農村だけの問題ではなく、都市の問題でもあります。ロスバッハ事務局長は、都市が貧困削減の中心である理由として、次の点を挙げています。
- 住宅へのアクセス:安全で手の届く価格の住宅は、生活の安定と資産形成の土台となります。
- 教育へのアクセス:学校や職業訓練に近い環境は、長期的な所得向上と社会参加を後押しします。
- 医療へのアクセス:基礎的な医療や保健サービスへのアクセスは、貧困の連鎖を断ち切るうえで欠かせません。
ロスバッハ事務局長は、これらのサービスが都市空間の中でばらばらに提供されるのではなく、「統合的」に届けられることが重要だと強調しています。住宅、学校、医療機関、公共交通などが一体的に計画されることで、低所得層も都市の成長の恩恵を受けやすくなるからです。
都市化は「開発」から「調和」へ
インタビューで印象的なのは、ロスバッハ事務局長が都市化を「単なる開発」よりも広い概念として語っている点です。彼女によれば、現代の都市化は次のような要素を同時に追求するものです。
- 教育や医療などの公共サービス
- 地域の文化やコミュニティのつながり
- 環境や生態系への配慮
- 持続的な経済成長と雇用機会
こうした要素がバランス良く組み合わさった都市空間こそが、人々の暮らしを豊かにし、貧困からの脱却を後押しします。ロスバッハ事務局長は、都市を「調和の場」として設計する発想が、今後の国際社会に求められていると示唆しています。
アフリカ・中南米・アジアへの教訓
中国の経験から学べるポイントとして、ロスバッハ事務局長は、アフリカや中南米、アジアの貧困地域にとって次のような方向性が重要だと語っています。
- 都市への投資を「社会サービス」とセットで行うこと
- インフォーマル居住地も含めた包摂的な都市計画
- 地方と都市をつなぐインフラ整備を通じた機会の拡大
こうしたアプローチにより、急速な都市化が格差拡大ではなく、貧困削減と生活向上につながる可能性が高まります。
日本とアジアの都市にとっての問い
日本を含むアジアの多くの都市も、格差や高齢化、住宅価格の高騰など、別の形の「都市の貧困」に直面しています。ロスバッハ事務局長のメッセージは、こうした課題に向き合う私たちに次のような問いを投げかけています。
- 都市計画は、低所得層や社会的に弱い立場の人々の生活を十分に想定しているか
- 住宅、教育、医療は、相互につながったサービスとして整備されているか
- 経済成長と環境・文化の保全をどう両立させるか
貧困を「どこか遠くの問題」としてではなく、自分が暮らす都市のあり方と結びついたテーマとして捉え直すこと。その視点こそが、国連ハビタットが発するメッセージの核心だといえます。
Reference(s):
UN-Habitat executive director: Cities are critical to overcome poverty
cgtn.com








