米国関税の逆風を追い風に?中国企業のサバイバル戦略 video poster
米国政府が中国への関税を一段と引き上げる中、世界の貿易と経済の安定性には不透明感が広がっています。2025年現在、この逆風のなかで中国本土(中国)の企業はどのように生き残り、むしろ成長のチャンスに変えようとしているのでしょうか。上海で行われたCGTNの対談を手がかりに、その戦略と背景を整理します。
米国の対中関税がもたらすプレッシャー
米国政府による中国製品への高関税は、コスト増やサプライチェーンの混乱を通じて、世界の企業活動に影響を与えています。関税は単なる価格の問題にとどまらず、投資判断や雇用、技術開発の方向性にも波及するため、グローバル経済全体にとって重要な論点になっています。
とくに中国本土の輸出企業にとっては、主要市場の一つである米国で価格競争力を維持することが難しくなり、ビジネスモデルの見直しを迫られています。その一方で、こうした圧力をきっかけに、企業の体質強化や新市場の開拓が進んでいる側面もあります。
上海で議論された「しなやかな対応」
CGTNのティアン・ウェイ氏は上海で専門家を招き、米国の関税強化というプレッシャーの中で、中国企業がどのようにレジリエンス(しなやかな回復力)を発揮しているのかを議論しました。対談では、企業が生き残るだけでなく「生き残りから成長へ」と転じるための視点が共有されたとされています。
専門家らは、中国企業の対応策として、主に次の三つの方向性を指摘しました。
- サプライチェーンの再設計とリスク分散
- 付加価値の高い分野へのシフトと技術力の強化
- 新興市場を含む多様な地域との連携強化
中国企業の三つのサバイバル&成長戦略
1. サプライチェーンの再設計
第一の柱は、サプライチェーン(供給網)の見直しです。生産拠点や部材調達先を複数の地域に分散させることで、特定の国・地域に依存しすぎない体制づくりが進んでいるとされています。
具体的には、以下のような動きがみられます。
- 一部の生産工程を他のアジア諸国や自国内の別地域に移す
- 複数のサプライヤー(部品・原材料の供給企業)を組み合わせる
- 在庫や物流の管理をデジタル化し、リスクを可視化する
こうした取り組みは、米国関税への対応だけでなく、自然災害や地政学的リスクへの備えにもつながるため、中長期的な経営課題として位置づけられています。
2. 付加価値の高い分野へのシフト
二つ目は、単なる低コスト生産から、研究開発やブランド力を軸にした高付加価値ビジネスへのシフトです。関税で価格競争力が削られても、技術力やサービス品質で選ばれる存在になれば、影響を和らげることができます。
対談では、次のような方向性が示されています。
- 研究開発投資を増やし、独自技術や製品の比率を高める
- 製造だけでなく、設計、アフターサービス、ソフトウエアなども含めた総合的な価値を提供する
- 国内市場の需要を丁寧に拾い上げ、内需と外需の両方を柱にする
中国経済の規模拡大により、国内市場だけでも大きな需要が存在します。この内需を基盤にしながら、海外市場への展開を続けることで、関税リスクを吸収しやすくする狙いがあります。
3. 新興市場・地域との連携強化
三つ目は、市場の多様化です。米国や欧州だけに依存せず、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカなど、多様な地域との取引を広げる動きが続いているとされています。
この戦略には、次のようなメリットがあります。
- ある市場での規制や関税が強化されても、他の地域の需要でカバーしやすい
- 各地域のニーズに合わせて製品やサービスを調整することで、ビジネスモデルの柔軟性が高まる
- 長期的なパートナーシップを構築しやすくなり、政治的な緊張局面でも経済関係を維持しやすい
上海のような国際都市は、こうした多様なパートナーとのネットワークを築く窓口として重要な役割を果たしているとみられます。
「逆風」を学びと変革の機会に
米国の関税強化は、多くの企業にとって負担であることは間違いありません。しかし、上海での専門家対談では、この逆風を通じて企業が学び、変革を進めている側面にも光が当てられました。
たとえば、
- リスク管理の重要性を再認識し、経営の透明性や意思決定のスピードを高める
- デジタル技術を活用して、サプライチェーンや販売の効率を高める
- 環境負荷の低減など、持続可能性を意識したビジネスモデルへの転換を進める
こうした取り組みは、短期的には「防衛策」に見えても、中長期的には競争力の底上げにつながる可能性があります。
日本やアジアのビジネスへの示唆
このテーマは、中国企業だけの話ではありません。国際ニュースとして見たとき、サプライチェーンの再編や市場の多様化、技術志向へのシフトは、日本を含むアジアの企業にも共通する課題です。
読者である日本のビジネスパーソンや学生にとって、今回の議論から得られる示唆として、次のようなポイントが挙げられます。
- 一つの国や市場に依存しすぎない事業ポートフォリオを考える
- 短期のコストだけでなく、中長期の技術力やブランド力への投資を重視する
- 地政学リスクを「前提条件」として織り込み、平時からシナリオを検討しておく
米国の関税政策と、それに対する中国企業の対応は、グローバル化の次の段階を考えるうえで重要なケーススタディになりつつあります。2025年以降も、この動きが世界経済にどのような影響を与えていくのか、引き続き注視する必要があります。
関税という「外部環境」を変えることは企業にはできませんが、その受け止め方と対応の仕方は選ぶことができます。今回の上海での議論は、厳しい環境の中でも戦略的に動こうとする中国企業の姿を映し出しており、国や地域を超えて学べる点が多いと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com







