米国の関税政策は「攻撃的なレバレッジ」? エコノミスト幹部が警鐘 video poster
米国の関税政策が、同盟国から「攻撃的なレバレッジ」あるいは「予測不能な政策運営」と見られつつある──英誌エコノミストの幹部編集者、シャーロット・ハワード氏は、新たなインフレ報告書を手がかりに、そんな懸念を示しました。
同盟国から見た「米国の関税政策」
ハワード氏は、エコノミスト誌のエグゼクティブ・エディター兼ニューヨーク支局長として、米国の新しいインフレ報告書の内容を解説しました。この報告書は、米国の関税政策が今後どのような経済的影響をもたらし得るかを分析したものです。
同氏によれば、米国の同盟国の間では、現在の関税アプローチは次のように受け止められつつあります。
- 関税を経済的・戦略的な譲歩を引き出すための道具として使う「攻撃的なレバレッジ」
- 政策の一貫性を欠く、気まぐれで予測しにくい意思決定の表れ
つまり、関税が従来のような産業保護や交渉カードにとどまらず、外交や安全保障を含む幅広い分野で圧力の手段として使われている、と見られているのです。
EUへの30%関税案と報復リスク
ハワード氏が特に警戒するのは、欧州連合(EU)からの輸入品に対し、最大30%の関税を課す案です。EUは米国にとって最大の貿易相手であり、この案が8月1日までに導入され、さらにEU側が報復関税に踏み切った場合、米経済に大きな打撃となり得ると指摘しました。
関税の応酬は、輸出入企業のコストを押し上げるだけでなく、投資計画や雇用判断をためらわせ、経済全体の先行き不透明感を強めます。ハワード氏は、その連鎖が本格的な景気悪化につながる「引き金」になりかねないと警鐘を鳴らしています。
インフレはまだ穏やかでも「バッファー」は一時的
一方で、足元のインフレは比較的落ち着いていると、ハワード氏は指摘します。その背景として、企業がサプライチェーン(供給網)を工夫し、あらかじめ在庫を積み増すなどして、コスト上昇を吸収していることが挙げられました。
ただし、こうした在庫の積み増しや供給体制の調整は、永続的な安全網ではありません。投資意欲が冷え込み、企業が将来の見通しに不安を感じ始めれば、価格転嫁の抑制にも限界が訪れます。ハワード氏は、企業心理の悪化と投資の減速が進めば、より深刻な経済的な副作用が視野に入ってくる可能性があると述べました。
日本や世界にとっての意味
米国とEUの間で関税が引き上げられれば、両地域の企業だけでなく、そこに部品やサービスを供給する世界中の企業が影響を受けます。サプライチェーンが複雑に絡み合う中で、日本企業も例外ではありません。
為替市場の変動、投資マネーの動き、サプライチェーンの再編などを通じて、日本の輸出企業や消費者物価にも波及する可能性があります。米国の「関税という政策ツール」の使い方をどう評価するかは、日本にとっても対岸の火事ではなく、自国の経済安全保障を考えるうえでの重要な論点と言えます。
考えるための3つの視点
ハワード氏の指摘から、私たちは次のような問いを持つことができます。
- 関税はどこまで外交・安全保障の「レバレッジ」として許容されるべきなのか。
- 短期的なインフレ抑制と引き換えに、企業心理の悪化や投資減少という長期的リスクをどこまで受け入れるのか。
- 日本は、米国の関税政策の変化に備えて、自らのサプライチェーンと通商戦略をどう見直すべきなのか。
米国の関税政策とインフレの行方は、数字や統計以上に、国際秩序と経済のルールづくりをめぐる価値観の問題でもあります。距離のある話に見えますが、日本にとっても「明日のビジネス」と「暮らしの物価」に直結し得るテーマとして、注視しておく必要がありそうです。
Reference(s):
Economist's executive editor: U.S. tariff policy seen as aggressive
cgtn.com








