米国7月雇用統計は「穴ぼこ景気」 WSJエコノミストが警鐘 video poster
米国の2025年7月の雇用統計について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のチーフエコノミクス・コメンテーター、グレッグ・イップ氏が、米経済は"pothole economy"(穴ぼこ景気)の状態にあると指摘しています。
イップ氏によると、関税、政府の歳出削減、不法移民への取り締まり強化が重なり、雇用の伸びは2020年以来で最も弱い水準となっているといいます。一方で、株式市場は最高値を更新しており、景気の先行きへの見方は分かれています。
「穴ぼこ景気」とはどんな状態か
イップ氏が使った"pothole economy"(穴ぼこ景気)という表現は、道路に突然現れる穴ぼこのように、全体としては前へ進んでいるものの、ところどころで急な減速や揺れが起きる経済状況をイメージさせます。
今回の米国の雇用統計は、完全な景気後退(リセッション)には至っていないものの、足元の雇用の勢いが大きくそがれていることを示していると受け止められています。イップ氏は、これが一時的な穴ぼこなのか、それとも「この先しばらく続く荒れた道」を示しているのかが鍵だと問いかけています。
雇用を押し下げるとされる3つの要因
イップ氏は、米国の雇用の伸びが鈍化している背景として、次の3点を挙げています。
- 関税の影響:貿易摩擦に伴う関税は、輸出入企業のコストを押し上げ、投資や採用を慎重にさせる要因になります。企業が先行き不透明感を感じるほど、新たな雇用に踏み切りにくくなります。
- 政府の歳出削減:財政赤字の抑制などを目的とした歳出削減は、公共事業や政府関連サービスの縮小につながりやすく、直接・間接に雇用を抑える方向に働きます。
- 不法移民への取り締まり強化:移民政策の厳格化は、特に農業や建設、サービス業など、移民労働者への依存度が高い分野で人手不足やコスト上昇を招き、雇用の調整を迫る可能性があります。
これらの政策要因が重なった結果、雇用全体の伸びが押し下げられ、「2020年以来で最も弱い」状態になっているとイップ氏は見ています。
雇用を支える「逆循環」分野:教育と社会サービス
一方で、現在の米国の雇用は、教育や社会サービスといった「逆循環的」な分野に大きく支えられているとされています。
逆循環的な分野とは、景気が悪化しても、あるいはだからこそ需要が増えやすい分野のことです。例えば、景気が弱いときでも、子どもの教育や高齢者向けの介護サービス、低所得層向けの支援は必要性が高まります。そのため、民間の景気に左右されやすい製造業や投資関連の仕事が伸び悩む一方で、教育・福祉系の仕事が全体の雇用を下支えしている構図が見えてきます。
ただし、こうした分野の雇用が伸びているからといって、経済全体の活力が十分に回復しているとは限りません。イップ氏の「穴ぼこ景気」という表現には、そのもろさへの警戒感がにじみます。
株高は「安心」か、それとも警戒を緩めすぎか
米国の株式市場が最高値を更新していることは、投資家の一部が貿易をめぐる不確実性は和らぎつつあると受け止めていることを示しているとされます。金融市場だけを見ると、米経済への信頼は依然として強いようにも見えます。
しかし、雇用の勢いが弱まっているという事実は変わりません。実体経済と金融市場のあいだにギャップがあるとき、そのどちらがより正確に先行きを映しているのかは、時間がたたないと分かりません。
イップ氏は、今回の雇用減速が本当に一時的な「穴ぼこ」にすぎないのか、それとも米経済が長期にわたって「荒れた道」を走る前触れなのか、慎重な見極めが必要だと示唆しています。
日本と世界にとっての意味合い
米国の雇用情勢は、日本を含む世界経済にとっても重要な指標です。米国の個人消費が鈍れば、日本企業の輸出や海外事業の収益にも影響が及ぶ可能性があります。また、雇用の弱さが長引けば、金融政策や金利の方向性にも波及し、為替や株式市場を通じて日本の家計や投資にも間接的な影響が出てきます。
今回の「穴ぼこ景気」という視点は、好調に見える株価だけでなく、雇用や所得といった足元の実態にも目を向ける必要があることをあらためて示しています。今後、米国から発表される雇用や物価、消費関連の指標が、穴ぼこの先に続く道をどのように描き出すのか、引き続き注目していくことが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








