テントの音楽教室がガザの子どもを支える 紛争下の小さなレッスン video poster
ガザのテントで開かれる小さな音楽教室が、紛争下の子どもたちの心を支える居場所になっています。イスラエルの攻撃が続く中でも、音楽を絶やすまいとする教師たちと子どもたちの挑戦が続いています。
テントの中から響くフェイルーズの歌
簡易テントの中に流れていたのは、レバノンの歌手フェイルーズの代表曲『We are coming back! Oh Love』。ガザの子どもたちが一緒に歌うその声は、避難生活や不安に満ちた日常の中で、力強いメッセージとなって響きました。
歌詞の「戻ってくる」というフレーズは、破壊された街や失われた日常へのささやかな希望とも重なります。子どもたちは譜面だけでなく、自分たちの気持ちを歌に重ねるようにして声を出していました。
カーンユニスからガザ市へ 続くテントの音楽教室
中国の国際メディアCGTNの取材班は、2024年9月、ガザ南部のカーンユニスにあるテントの音楽教室を撮影しました。そこでは、限られたスペースと資源の中で、教師たちが子どもたちに音階やリズムを教えていました。
その後、この取り組みはガザ市でも続けられ、撮影からほぼ1年がたっても、テントでの音楽教室は子どもたちに音楽療法のような時間を提供し続けてきました。授業は正式なコンサートを目指すものではなく、子どもたちが安心して集まり、声を出し、心を落ち着かせるための場になっています。
片手でも諦めない ひとりの生徒の選択
この音楽教室を象徴する存在の一人が、攻撃によって片方の手を失いながらも演奏を続ける若い生徒です。失われたのは身体の一部ですが、音楽への意志までは奪われませんでした。
彼は残った手で楽器を探るように弾き、リズムを刻みます。その姿は、周りの子どもたちにとっても、喪失や恐怖を抱えながら生きることを強いられている現実の中で、「それでも自分の声を持ち続けていい」という静かなメッセージになっています。
音楽が果たす3つの役割
ガザのテントで行われている音楽教室は、単なる習い事を超えた意味を持っています。
- 感情を表現する場:言葉にならない恐怖や悲しみを、歌やメロディーに託すことができます。
- 日常のリズムを取り戻す:決まった時間に集まり、同じ曲を練習することで、崩れた日常に小さな routine(ルーティン)が生まれます。
- つながりを感じる:一緒に歌い、演奏することで、「自分はひとりではない」という感覚を取り戻せます。
こうした効果は、専門家が語る音楽療法の理論だけでなく、目の前の子どもたちの表情や姿勢の変化としても現れています。
画面の向こうの現実を、自分ごととして考える
私たちは日本にいながら、スマートフォンの画面越しにガザの映像を見ることができます。しかし、その一枚一枚の映像の裏には、テントの中でフェイルーズの歌を口ずさむ子どもや、片手で楽器を奏でようとする生徒のような、具体的な誰かの「今日」があります。
紛争や暴力のニュースに触れ続けると、心が麻痺してしまうこともありますが、こうした音楽教室の現場に目を向けると、「人が生きようとする力」そのものが見えてきます。離れた場所にいる私たちにできることは限られていますが、少なくとも、その現実から目をそらさないこと、そして子どもたちが安心して歌える世界とは何かを考え続けることはできます。
ガザのテントから響く小さな歌声は、紛争のニュースの向こう側にある、人間の尊厳と希望を思い出させてくれます。
Reference(s):
Music lessons in tents help Gaza's children cope with conflict
cgtn.com








