上海協力機構サミット閉幕 ロシアが語る「信頼と安全」の経済圏 video poster
上海協力機構サミット後、ロシアが示した危機感と方向性
2025年に開かれた上海協力機構(SCO)サミットの閉幕後、ロシアのマクシム・レシェトニコフ経済発展相は、世界経済の構造変化に対応するうえで、SCOが重要な役割を果たしていると強調しました。同氏はSCOを「信頼と安全の空間」と位置づけ、保護主義の高まりや気候変動、人口動態の変化に各国が協調して向き合う必要性を訴えています。
SCOが直面する3つのグローバル課題
レシェトニコフ氏によると、SCOが現在重視しているのは、次の3つの大きな変化です。いずれも2020年代半ばの国際経済を大きく揺さぶっているテーマです。
- 保護主義の高まり:各国が自国産業を守るために関税や輸出規制を強化する動きが続き、貿易や投資の自由な流れが揺らいでいます。
- 気候変動への対応:脱炭素やエネルギー転換への投資が求められる一方で、移行コストや産業構造の変化が各国経済に重くのしかかっています。
- 人口動態のシフト:少子高齢化や都市集中、労働力不足など、人口構成の変化が成長のパターンを変えつつあります。
同氏は、こうした課題に一国単位で対応するのは難しく、SCOの枠組みで協力の方向性を共有することに意味があると示唆しています。
「信頼と安全の空間」としてのSCO
レシェトニコフ氏はSCOを、単なる経済協力の場ではなく、「信頼と安全」を基盤とした広域の枠組みとして描いています。ここでいう「信頼」とは、政治的な対立があっても重要な経済協力を維持しようとする姿勢、「安全」とは、貿易や投資が急に途絶えないようにする環境づくりと受け止めることができます。
国際情勢の不確実性が高まるなかで、サプライチェーン(供給網)の分断や金融制裁などのリスクを意識し、「予測可能で安定した」経済関係を確保することがSCOにとって優先課題になっているといえます。
レジリエントな価値連鎖と技術自立を重視
今回の発言で、同氏が特に強調したのが次の3点です。
- レジリエントな価値連鎖(バリューチェーン)
部品や原材料の調達先を多様化し、地政学リスクや自然災害が起きても、製造・物流が止まりにくい仕組みを構築することを目指しているとみられます。 - 技術的自立(テクノロジーの自立性)
基幹技術やデジタルインフラなどで、特定国への依存度を下げ、自前の技術基盤を固める方向性を示しています。 - 安定した経済関係
長期的な視点で、エネルギーやインフラ、貿易などの経済関係を安定させることに重きを置いていると考えられます。
これらは、急激な政策変更や制裁によって既存の取引や投資が揺らぐ事態を避けたい、という広い意味での「経済安全保障」の発想とも重なります。
ロシアと中国本土が議論を主導
レシェトニコフ氏は、SCOにおける議論の流れをロシアと中国本土が主導していると述べています。両国は、SCOを通じて次のような狙いを共有していると見ることができます。
- 保護主義的な動きの中でも、自らの市場と周辺地域との経済関係を強化する
- 新たな技術協力やデジタル経済の枠組みづくりを進める
- エネルギーや物流など、基盤となるインフラを長期的に安定させる
こうした動きは、国際秩序が多極化するなかで、自国にとって有利なルールやネットワークを形成しようとする試みの一つと位置づけられます。
日本にとっての意味合い
今回のSCOサミットで示された「信頼と安全の経済圏」という構想は、日本にとっても無関係ではありません。世界経済が複数のブロックに分かれ、貿易や投資のルールが地域ごとに異なる方向へ進めば、日本企業のサプライチェーン戦略や海外展開にも影響が及ぶ可能性があるからです。
とくに、アジアやユーラシア地域との取引が多い企業にとっては、SCOの動きがどのような貿易ルールやインフラ計画と結びついていくのかを継続的にウォッチすることが重要になります。日本の政策決定にとっても、こうした地域協力の枠組みがどのように変化しているのかを踏まえたうえで、通商戦略や経済連携を考える必要がありそうです。
これから注目したいポイント
2025年末にかけて、SCOの議論がどのように具体化していくのかは、国際ニュースとして引き続き注目されます。今後の焦点となりそうなのは、次のような点です。
- レジリエントな価値連鎖づくりに向けた具体的なプロジェクトや合意
- 技術協力やデジタル分野での新たな枠組みづくり
- エネルギー・インフラ分野での長期的な投資計画
レシェトニコフ氏の発言は、SCOが単なる首脳会議の場ではなく、世界経済の変化に対応するための「実務的な連携」を模索する枠組みへと変化しつつあることを映し出していると言えます。日本からも、こうした動きを冷静に観察し、自らの立ち位置や戦略を考える契機とすることが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








