マレーシア、中国との経済協力を強化へ 半導体・自動車・グリーン転換に期待 video poster
マレーシアのテンンク・ザフル・アジズ投資貿易産業相が、中国との経済協力を半導体、自動車、グリーン転換の分野で一段と深めたい考えを示しました。2025年に中国の天津で開かれた上海協力機構(SCO)の首脳会議に合わせて行われた訪問とインタビューから、その狙いを整理します。
天津SCOサミットで示された「新しい時代」
今年、天津で開催されたSCO首脳会議には、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相が出席し、テンンク・ザフル氏も代表団の一員として同行しました。ザフル氏は中国の国際メディアであるCGTNのインタビューに応じ、天津で得た学びと、マレーシアと中国の経済協力が「新しい時代」に入ろうとしているとの見方を示しました。
ザフル氏の発言の背景には、アジア地域での経済連携がこれまで以上に重みを増しているという現実があります。特に、製造業とグリーン転換の分野で、中国とASEAN諸国の結びつきは今後さらに重要になるとみられています。
3つの重点分野:半導体・自動車・グリーン転換
ザフル氏はインタビューで、中国との協力を強化したい分野として、次の3つを挙げました。
1. 半導体:高度製造と人材育成
半導体は、スマートフォンから自動車、インフラまで、あらゆる産業の基盤となる戦略分野です。マレーシアはこれまでも電子部品や組み立てで存在感を持ってきましたが、ザフル氏は、中国との協力を通じて、より高度な設計や製造、研究開発に踏み込むことを視野に入れているとみられます。
サプライチェーンを中国と補完し合う形で構築できれば、マレーシアにとっては投資と雇用の拡大、中国にとっては安定した供給網の確保という相互利益が期待できます。
2. 自動車:電動化の波に乗る
自動車産業では、電気自動車(EV)を中心とした電動化とソフトウェア化が急速に進んでいます。中国企業はEVや関連部品で存在感を高めており、マレーシアにとっては、こうした企業との協力を通じて、自国の自動車生産や関連産業の高度化を図るチャンスがあります。
部品供給、完成車の組み立て、充電インフラなど、連携の余地は広く、マレーシア市場だけでなく、ASEAN全体を見据えたハブづくりも視野に入りそうです。
3. グリーン転換:再エネと省エネでの連携
ザフル氏が強調したもう一つの軸が、グリーン転換です。再生可能エネルギーの導入、省エネ技術の普及、低炭素インフラの整備など、環境と成長を両立させる取り組みはマレーシアにとっても重要な課題です。
中国は再生可能エネルギー設備や電動モビリティなどの分野で大きな生産能力を持っており、それを活用した協力が進めば、マレーシアのエネルギー構造転換と新産業育成の後押しになる可能性があります。
CAFTAバージョン3.0がもたらす追い風
ザフル氏は、中国とASEANが進める自由貿易の枠組みである中国・ASEAN自由貿易圏(CAFTA)のバージョン3.0についても言及し、この枠組みが2025年10月に署名される予定だと説明しました。
CAFTAバージョン3.0が実現すれば、マレーシアと中国の間で、次のような動きが一層進むことが期待されます。
- モノの貿易の自由化が進み、関税や手続きの負担が軽減される
- 投資やサービス分野でのルールが整備され、企業の事業展開がしやすくなる
- デジタル経済やグリーン経済といった新しい分野での協力が促される
こうした枠組みは、大企業だけでなく、中小企業にとっても新しい市場機会を生み出す可能性があります。
アジア経済の中でマレーシアが描くポジション
今回の発言からは、マレーシアが中国との関係を通じて、アジアの成長エンジンの一角としての存在感を高めようとしている姿が浮かび上がります。
- 半導体や自動車などの製造業で、付加価値の高い工程に踏み込む
- グリーン転換を梃子に、新たな投資と雇用を呼び込む
- 地域の自由貿易枠組みを活用して、ASEAN全体を見据えたハブとなる
こうした方向性は、単なる二国間協力にとどまらず、アジア全体の産業地図やサプライチェーンの再編にもつながる可能性があります。
日本の読者にとっての意味
日本にとっても、マレーシアと中国の経済協力の動きは無関係ではありません。半導体、自動車、グリーン転換はいずれも、日本企業が強みや関心を持つ分野です。
- サプライチェーンをどこまでアジア全体で補完し合えるか
- グリーン転換で、どのように協調と競争のバランスを取るか
- 地域の自由貿易ルールが変化する中で、企業や投資戦略をどう見直すか
マレーシアが中国との関係を深めようとしている今、日本の企業や読者にとっても、アジアの経済連携を自分ごととして捉え直すタイミングと言えそうです。
まとめ:静かに進む「新時代」の準備
天津でのSCO首脳会議、CGTNでのインタビュー、そしてCAFTAバージョン3.0というキーワードから見えてくるのは、マレーシアと中国が、半導体、自動車、グリーン転換を軸にした新しい経済関係を静かに準備している姿です。
アジアの経済地図は、一気に変わるのではなく、こうした一つ一つの選択と協力の積み重ねで形づくられていきます。読者のみなさんも、自分の仕事や生活にどのような影響が及びうるのか、日々のニュースと重ね合わせて考えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Malaysian official: Malaysia eyes deeper economic ties with China
cgtn.com







