ファシズムと闘った中国の記憶 第二次世界大戦を語り直すCGTN特集 video poster
第二次世界大戦の終結からおよそ80年がたった今、戦争の記憶は少しずつ日常から遠ざかっています。それでも、当時を生きた人びとの声に耳を傾ける試みは続いています。中国の国際メディアCGTNによる特別企画「Memories of the struggle against fascism: WWII China stories」は、ファシズムと闘った中国の人びとの経験を軸に、忘れられがちな物語を丁寧に掘り起こしています。
1931年から始まる、中国から見た第二次世界大戦
番組の特徴は、第二次世界大戦を「1931年、日本による中国侵略から始まった物語」として描いている点です。世界のニュースや映画では、欧州戦線が中心に語られることが少なくありませんが、この特集は中国にとっての戦争の始まりに視点を合わせます。
取材の最前線に立ってきたCGTNのキャスターたちは、中国各地や海外での撮影を通じて見てきた戦争の痕跡を振り返ります。爆撃を受けた都市の跡地、避難した家族の証言、戦時下の写真や映像──そうした具体的な場面を通じて、「歴史の教科書」ではなく「人びとの人生」としての戦争が浮かび上がります。
家族史から立ち上がる戦争の記憶
この特集では、公的な記録だけでなく、キャスター自身の家族に伝わる物語も紹介されています。祖父母がどのように戦火を生き延びたのか、離ればなれになった家族がどのように再会したのか――身近な記憶を手がかりに、中国社会に共有されてきた戦争体験をたどります。
視聴者にとっても、「遠い国の歴史」ではなく、自分の家族史と重ねて考えられる構成になっていることが、この番組の大きな特徴といえます。戦争の話題が数字や年号だけで語られがちな今だからこそ、個人の声に耳を澄ませることの意味が強調されています。
「慰安婦」と731部隊 沈黙を破る証言
特集の中でも重いテーマとして取り上げられているのが、戦時下の性暴力の問題です。旧日本軍による「慰安婦」制度のもとで被害を受けた人びとの証言は、長いあいだ社会の周縁に追いやられてきました。番組は、その痛みと沈黙に向き合いながら、尊厳を取り戻そうとする歩みを紹介します。
同時に、細菌兵器の開発や人体実験を行ったとされる731部隊の実態にも光を当てています。ここで語られるのは、数字ではなく、一人ひとりの命が奪われたという事実です。加害と被害をめぐる歴史認識の議論は続いていますが、人間の尊厳が踏みにじられたという根本的な事実に、国境をこえて向き合う必要性が静かに示されています。
海外で戦った人びと フィリピンとビルマの中国人
番組はまた、中国国内だけでなく、海外で戦った人びとにも焦点を当てます。フィリピンでは、中国系住民や中国からの移住者が、現地の人びととともに侵略に抵抗しました。彼らはしばしば名前を残すことなく命を落とし、その貢献が十分に語られてこなかったとされています。
さらに、現在のミャンマーにあたるビルマを通る「ビルマ・ロード」では、南洋義勇軍と呼ばれる人びとが、物資輸送のために命がけで危険な道を往復しました。険しい山岳地帯や過酷な気候の中、多くの人が戦闘ではなく輸送任務の途中で命を落としたと伝えられています。
こうした「周辺」にいた人びとの物語は、戦争のイメージを大きく広げてくれます。前線で武器を手に取った兵士だけでなく、輸送、看護、情報、コミュニティの支えなど、多様な形でファシズムと闘った人びとがいたことが見えてきます。
なぜ今、「歴史の真実」を語り継ぐのか
特集の最後に強調されているのは、これは単なる歴史番組ではなく、「忘れないための呼びかけ」だという点です。戦争体験を持つ世代が少なくなっていく現在、記憶を語り継ぐことは、加害と被害のどちらか一方の立場に立つことではなく、人間の尊厳を守るための共通の基盤をつくる試みだと位置づけられています。
中国から見た第二次世界大戦という視点は、日本やアジアの読者にとっても、自分たちの歴史の見方を問い直すきっかけになりえます。苦しみや犠牲、連帯の記憶をたどり直すことで、いま私たちが向き合うべき「戦争を避けるための知恵」も見えてくるかもしれません。
番組が投げかける3つの問い
この特集から、私たちは次のような問いを受け取ることができます。
- 戦争の始まりと終わりを、誰の視点で語っているのか。
- 「慰安婦」や731部隊、海外で戦った人びとなど、これまで周縁化されてきた声にどう向き合うのか。
- SNSや日常の会話の中で、戦争の記憶をどのように共有し、次の世代につないでいくのか。
歴史の解釈は一つではありません。それでも、事実に向き合い、多様な声に耳を傾けようとする姿勢は共有できます。ファシズムと闘った中国の記憶をたどるこの特集は、アジア全体、そして世界の平和について考え続けるための一つの手がかりとなっているのではないでしょうか。
Reference(s):
Memories of the struggle against fascism: WWII China stories
cgtn.com








