砂漠に挑む「緑の壁」:新疆マキト県とタクラマカン防砂林 video poster
中国北西部の新疆ウイグル自治区にあるマキト県で、「砂に挑む緑の壁」が静かに広がっています。中国で唯一、四方を砂漠に囲まれたこの県は、タクラマカン砂漠の縁で砂との闘いを続けてきましたが、いま風景が変わりつつあります。
中国でただ一つ、砂漠に囲まれたマキト県
マキト県は、新疆ウイグル自治区の南西部に位置し、世界第2の規模を持つ流動砂漠タクラマカン砂漠の南西縁にあります。中国の県級行政区の中で、唯一「全域が砂漠に囲まれている」という特殊な地理条件を持つ地域です。
長いあいだ、この地での暮らしは、砂嵐や砂丘の移動と向き合う日々でした。農地や集落が砂に飲み込まれる危険と常に隣り合わせで、生活基盤を守ることそのものが大きな課題だったとされています。
過去13年間で3万ヘクタール超を植林
その状況を変えつつあるのが、地域住民による植林の取り組みです。過去13年間で、マキト県の人びとは乾燥に強い樹木を3万ヘクタール以上植えてきました。砂丘の上に苗木を1本ずつ植え、世代を超えて手入れをしていく地道な作業の積み重ねです。
こうして育てられた防砂林によって、かつては風に流される砂丘だった土地が、少しずつ耕作地や果樹園へと姿を変えています。木々の根が砂をつなぎとめ、風を弱めることで、農業や畜産に適した環境が生まれ始めているのです。
森林は同時に、地域の新しい「なりわい」も生み出しています。苗木の育成や管理に関わる雇用が生まれたほか、緑に囲まれた農園や果樹園での体験型観光など、砂漠の縁ならではのビジネスの芽も育ちつつあります。
タクラマカンを取り囲む3,046kmの「緑の帯」
マキト県の取り組みは、地域だけの努力にとどまりません。これは、タクラマカン砂漠をぐるりと取り囲むように整備されている全長3,046キロメートルの防砂林帯の一部でもあります。この「砂漠の周囲に築かれた緑の帯」は、同種のプロジェクトとして世界でも最長規模とされています。
防砂林帯とは、砂漠の縁や風の通り道に樹木を連続して植え、砂嵐の勢いを弱めたり、砂丘の拡大を抑えたりするための「生きた防波堤」のようなものです。タクラマカン周辺で進むこの国家的プロジェクトの中で、マキト県は重要な一角を担っています。
砂嵐を防ぐだけでない、暮らしと経済への効果
この3,046キロメートルの緑の帯は、単に砂嵐を減らすだけではありません。タクラマカン砂漠の縁に沿って形成される防砂林は、地域社会のあり方そのものを変えつつあります。
- 砂嵐の被害軽減:木々が風速を弱め、砂の移動を抑えることで、住居や農地、インフラへの被害を減らすことが期待されています。
- 道路・交通の安定:防砂林によって道路が砂に埋もれにくくなり、通行止めや物流の遅れが起きにくい環境づくりに役立っています。砂漠を縁どる道路は、人や物資の移動だけでなく、観光の大動脈にもなり得ます。
- 観光・体験型ビジネスの拡大:「砂漠と緑」が隣り合う独特の風景は、多くの人の関心を引きつけています。オアシスのように広がる防砂林や果樹園を訪ねるツアーなど、観光を通じた収入源が生まれています。
- 地域社会の意識変化:かつては「砂と闘う」ことが中心だった暮らしが、「砂と共存し、活かす」発想へと少しずつ変わりつつあります。植林を通じて、土地や水をどう守り、次世代につなぐかという議論も深まりやすくなります。
砂漠の縁から考える、これからの環境と開発
マキト県で進む「緑の壁」づくりは、環境保全と地域開発をどのように両立させるかを考える上で、示唆に富んだケースだといえます。砂漠の拡大を食い止めることと、人びとの生活の質を高めることを同時にめざす試みでもあるからです。
世界各地で、砂漠化や土地の劣化が課題となる中、タクラマカン砂漠の縁で進む3,046キロメートルの緑の帯と、マキト県の3万ヘクタールを超える植林は、砂に囲まれた地域でも未来を変える選択肢があり得ることを示しています。
砂に飲み込まれる危機にさらされてきた土地で、いま、逆に砂をとどめ、暮らしと経済を育む「緑のインフラ」が静かに広がっています。その変化をどう持続させ、次の世代につないでいくのか。砂漠の縁から始まった挑戦は、これからも続いていきます。
Reference(s):
cgtn.com








