国連80年と持続可能な開発 COP30へ向けた地球ガバナンスを考える video poster
国連創設80年となる2025年、気候変動と持続可能な開発はこれまで以上に国際ニュースの中心テーマになっています。香港科技大学(広州)(HKUST Guangzhou)のQi Ye 氏は、国連が果たしてきた役割を振り返りながら、ブラジルでのCOP30を前に、これからの地球ガバナンスをどう改革すべきかを問いかけています。
国連80年が育てた「持続可能な開発」という考え方
現在、世界の政策やビジネスのキーワードとなっている「持続可能な開発」は、1987年の国連報告書『Our Common Future』で本格的に定義されたとされています。この報告書は、「将来世代のニーズを損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」というシンプルな言葉で、今日まで続く方向性を示しました。
そこから国連は、環境・経済・社会を一体として考える枠組みづくりを進め、気候変動や貧困、格差といった課題を「持続可能な開発」という一つの大きなテーマの下で捉え直してきました。
IPCCと気候行動:科学がつくる共通言語
気候変動の分野では、国連のもとで設立されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、世界の議論を支える科学的土台となってきました。IPCCは、世界中の研究成果を整理し、政策決定者にも伝わる形で評価することで、各国が共通の認識に立って交渉できるようにしてきました。
この「科学に基づく共通言語」があったからこそ、各国が温室効果ガス削減の目標を持ち寄り、長期的な脱炭素のロードマップを描くことが可能になっています。国連は、科学と外交、そして持続可能な開発の議論をつなぐハブとして機能してきたと言えます。
激動とチャンスが同居する2025年
一方で、2025年の世界は、地政学的な緊張やエネルギー安全保障、急速なデジタル化など、リスクとチャンスが入り混じる状況にあります。持続可能な開発をめぐる国際協力も、かつてないほど政治や安全保障の影響を受けやすくなっています。
それでも、再生可能エネルギーやグリーンファイナンス(環境配慮型の投資)、デジタル技術を活用した環境監視など、新しい産業とイノベーションの芽も次々と生まれています。Qi Ye 氏が指摘するのは、こうした「激動」と「機会」を同時に抱える時代だからこそ、国連を中心とした地球ガバナンスの再設計が必要だという点です。
Qi Ye 氏が示すガバナンス改革の視点
香港科技大学(広州)のQi Ye 氏は、国連80年の経験をふまえ、持続可能な開発のためのガバナンスには少なくとも次のような視点が重要だと強調します。
- 短期的な危機対応と、数十年単位の長期的な持続可能性をどう両立させるか
- 地球規模のルールと、各国・各地域の現実をどう結びつけるか
- 国だけでなく、都市・企業・大学・市民社会をどう巻き込むか
こうした問いは、日本を含むアジアの国々にとっても、決して他人事ではありません。むしろ経済成長と脱炭素、格差是正を同時に進めなければならない地域だからこそ、持続可能な開発の新しいモデルづくりに関与する余地があります。
持続可能な未来のための3つの改革方向
1. より包摂的なルールづくり
持続可能な開発の議論では、最も影響を受ける国や人々の声が、まだ十分には届いていません。小さな島しょ国や脆弱な地域、若い世代の声を、国際交渉や資金の配分にきちんと反映させることが求められます。
国連の場で、より多様なアクターが参加しやすいプロセスを整えることは、ルールへの信頼を高める基盤になります。
2. 科学と政策の橋渡しを強化する
IPCCのような科学的評価は重要ですが、それを具体的な政策や投資判断に落とし込むには、各国・各都市の現場との橋渡しが欠かせません。大学や研究機関、シンクタンクが、国連と地域の間をつなぐ翻訳者としてさらに大きな役割を果たすことが期待されています。
HKUST(広州)のような研究拠点は、アジアの経験やデータを世界に発信し、同時に世界の知見を地域に持ち帰るハブとして機能し得ます。
3. 資金と技術の流れを持続可能な方向へ
持続可能な開発や気候行動には、巨額の投資が必要です。その資金が化石燃料の拡大ではなく、再生可能エネルギー、省エネ、レジリエンス(災害に強い社会づくり)といった分野に向かうよう、国連を中心にした国際的なルールづくりが進んでいます。
同時に、技術協力や人材育成を通じて、各国が自立的に持続可能な開発を進められるようにすることも、地球ガバナンスの重要な課題です。
ブラジルでのCOP30に向けて何が問われるか
ブラジルで開催が予定されているCOP30は、気候変動対策と持続可能な開発をどのように統合して進めるかが重要なテーマとなりそうです。特に、森林や生物多様性の保全と、地域の雇用・産業を両立させる道筋が注目されます。
国連創設80年という節目の中で開かれるCOP30では、次のような点が焦点になると考えられます。
- 気候変動と貧困削減、格差是正を一体で進める政策パッケージ
- 途上国や脆弱な地域への資金支援・技術協力の具体化
- 2030年以降を見据えた、より長期的な脱炭素と持続可能な開発のビジョン
日本の私たちにとっての意味
国連80年やCOP30と聞くと、遠い国際会議の話に思えるかもしれません。しかし、エネルギー価格、食料安全保障、災害リスク、働き方の変化など、持続可能な開発をめぐる議論は、すでに日本の日常生活と深く結びついています。
ニュースを追う私たち一人ひとりにできることとして、次のような行動が考えられます。
- 国連や各国の気候・開発政策を、日本語で分かりやすく解説した情報に日常的にアクセスする
- 職場や学校、オンラインコミュニティで、気になったトピックを共有し、対話のきっかけをつくる
- エネルギーの使い方や消費行動など、自分の生活の中でできる小さな変化を試してみる
国連の80年は、「世界は協力すれば変えられる」という一つの実験の歴史でもあります。ブラジルでのCOP30を前に、地球規模の課題を「遠い世界の話」ではなく、自分たちの未来の選択として捉え直すことが求められています。
Reference(s):
80 Years of UN: How has it led global sustainable development
cgtn.com








