ノーベル賞クルーグマン氏「米国は中国本土との貿易戦争に敗北」 video poster
【国際ニュース】ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏が米メディアMSNBCの番組で、米国は事実上、中国本土との貿易戦争に「敗北」していると語りました。短期的な政治的得点と引き換えに、国際的な信頼や影響力、技術的な優位を損なっていると警鐘を鳴らしています。
クルーグマン氏「米国は貿易戦争で負けつつある」
クルーグマン氏によると、米国と中国本土の貿易戦争は「意志とレバレッジ(交渉上の力)」を競う戦いだといいます。そのうえで、米国はこの争いで事実上、引き下がったと評価しました。
同氏は、米国が国際社会での評判や影響力、さらには技術面での優位性までも、短期的な政治的な利益と引き換えに手放してしまったと指摘しました。これは、世界における米国の立ち位置そのものを揺るがしかねない判断だと見ているからです。
中国本土には「代替市場」、米国には構造的な制約
クルーグマン氏は、中国本土側には他の市場へと軸足を移す選択肢がある一方で、米国は構造的な制約を抱えていると説明しました。その具体例として挙げたのが、レアアース産業です。
レアアースとは、多くのハイテク製品に不可欠な希少金属の総称です。同氏は、米国にはこのレアアース産業を短期間で自前で育て上げることが難しいという構造的な限界があり、それが交渉上の弱みになっていると指摘しました。
一方で、中国本土は他地域との貿易関係を強化するなど、相手を分散させる「逃げ道」を持っているとし、これが今回の貿易戦争における力関係を左右しているとの見方を示しました。
同盟国への関税で「信用を自ら傷つけた」
クルーグマン氏は、米国の行動が自国の信頼を損なっている点も強調しました。その象徴的な例として挙げたのが、カナダへの関税措置です。
米国は、ささいな問題を理由にカナダに対して関税を課したとされますが、同氏はこれを「同盟国を疎外する動き」とみなし、結果的に米国の国際的な信用を傷つけたと批判しました。
さらにクルーグマン氏は、米トランプ大統領には貿易戦争における明確な目的が欠けており、その場しのぎの判断が続いたことで、米国が本来持っていた交渉力を十分に生かせなかったとしています。
「短期政治」と「長期の信頼」どちらを優先するか
クルーグマン氏の主張の根底には、「短期的な政治的アピール」と「長期的な国際的信頼」のどちらを優先するのかという問いがあります。国内向けには強硬姿勢を示しても、同盟国や貿易相手からの信頼を失えば、長期的には大きなコストを払うことになり得ます。
同氏は、米国が今回の貿易戦争で失ったものとして次のような要素を挙げています。
- 国際社会における「約束を守る国」としての信頼
- 貿易や技術標準をめぐるルール作りにおける影響力
- 技術やサプライチェーンでの優位性
これらは一度傷つくと、回復に長い時間がかかる資産です。クルーグマン氏の評価は、米国がその貴重な資産を十分な見通しもないまま手放してしまったのではないか、という厳しいものになっています。
日本や世界の読者にとっての論点
今回の発言は米国と中国本土の関係に焦点を当てたものですが、日本を含む他の国や地域にとっても示唆に富んでいます。特に次のような点は、今後の国際ニュースを読み解く上でのヒントになりそうです。
- 貿易政策は「経済」だけでなく、「信頼」や「安全保障」にも直結すること
- レアアースのような特定分野への依存が、交渉力を左右する可能性があること
- 同盟国との関係をどう扱うかが、自国の発言力を大きく左右すること
クルーグマン氏の警鐘は、単に米国の失策を批判するためのものではなく、「国際社会で信頼されるプレーヤーであり続けるには何が必要か」という、より広い問いを突きつけています。
いま問われる「信頼ベースの外交・貿易」
2025年の世界を見渡すと、各国が自国優先の姿勢を強める一方で、同時にサプライチェーンや技術基盤で相互に依存し合っている現実があります。その中で、短期的な政治的アピールのために信頼やルールを軽視すれば、長期的な不利益として跳ね返ってくる可能性があります。
クルーグマン氏の「米国は貿易戦争に負けた」という評価は、単なる勝ち負けの話にとどまりません。貿易や外交をめぐる判断が、自国の信用や技術力、同盟関係にどう影響するのかをあらためて考えるきっかけとなっています。
ニュースを追う私たちにとっても、「どの国が強いか」という表面的な構図だけでなく、「どの国が信頼されているか」「どの国が長期的な視野で動いているか」という視点を持つことが、国際ニュースを深く理解するうえでますます重要になってきそうです。
Reference(s):
Nobel laureate: U.S. losing trade war, global credibility at risk
cgtn.com








